《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 8

敏捷さも外科醫必須の條件で、この狀態はかなりヤバい。

「君、張しているのは分かるが、腕と腳を同じきをしては不自由だろう?」

會場の扉に居た先生らしき人が笑いながら教えてくれた。なるほど、そういう理由かと思って、歩行が困難なほど張しているのが我ながらけない。

これで失點2かもな……と思うと目の前が真っ白になる。

面接室を我ながら完璧な作で開けた。目の前の大きなテーブルの中央に白姿の香川教授、その橫に黒木準教授が座っていらっしゃった。その他の人はモニタールームで見ていただけで名前は知らない。

質問は主に黒木準教授が行って、俺はそれに答えてはいたものの何を答えたのかまでは覚えていられなかった。背中に冷や汗が滴っていたことだけは鮮明だったが。

「久米先生」

香川教授が外科醫らしくない穏やかな口調と笑みを浮かべてこちらを見ていた。

「はい」

背筋が自然とびた。というのも、香川教授の姿勢の良さとか靜謐な佇まいが凄くカッコ良かったからだ。

「本日の日経平均株価はご存知ですか?」

ニッケイヘイキンカブカ?ああ、何かニュースで毎日放映している數値だ。ただ、そんなものに全く興味がなかったので、全然知らない。知らないが、何かしら答えなければならないと真っ白と真っ黒が互に點滅する頭の中で必死に考えた。

「日経平均株価はあいにく不得意分野なので存じませんが、イチ○―の打率なら言えます。あと、阪神が何連敗しているかとかなら何とか正確な數字は毎日把握しています……」

何故そんなことを口走ってしまったのか自分でも分からないが、とにかく數字に強いというアピールをしたかったのではないかと後から思った。

會場に笑いが広がって、卻って絶がヒシヒシと募る。

第二志の醫局は特になかった。

この人たちの「輝き」の中にって行きたい。

それしか考えていなかったので。

「分かりました。質問は以上です。有難うございました」

香川教授の凜とした聲が遠くで聞こえた。

やはり、海外からも患者さんが教授を慕って來院するとか、政財界のVIPが患者さんになることも多い「特別な」醫局なだけに、そういう広範な知識を持っていなければならないのかと絶に打ちひしがれながらも二晩徹夜で何度も繰り返した「正しい面接のけ方」の畫が役に立って気がついたら外だった。

実家のクリニックにでも帰って大人しく父の跡を継ぐべく――ちなみに診療科目は外科と科だ――科の勉強でもしようと上を向いて歩いた。下を向くと泣いてしまいそうだったから。

しかし。

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