《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 14

結び慣れたハズの――俺の中學・高校は「將來困らないように」とかで、大人と同じ形態のタイが制服だった。聞くところによると、既に結んであってパチンとホックで留めるだけの高校も多いらしい――ネクタイの形が妙に気になっている。社會人らしい!という基準でお母さんがお祝いにと數セット揃えてくれた中の一著だったし、出がけにお母さんの厳しいチャックまで済ませてはいたものの、やはり大學の生活ではスーツなんて著る機會は學式とかそういう式だけというブランクのせいかも知れないが。

いや、「あの」香川教授の醫局にるというプレッシャーからだろう。メンタルは強いと自己分析していた――あの「しどろもどろ」の局面接以降激しく落ち込んで引きニート狀態だったけれども、誰だって「ここ一番!」という試験が慘憺たる結果に終わればそうなるだろうし気にしていない――というのに。

學生の時も、手室のモニタールームだけではなくて、憧れの醫局にも見舞客のフリをして紛れ込んだことは有ったけれども、憧れ続けた醫局の一員として今日から加わるのかと思うと、やたらと咽が乾いてしまう。コーラが飲みたいなと思いながら見慣れているハズなのに新鮮なじのする醫局のドアをまず開けた。

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局の前に黒木準教授が々な書類を渡してくれていたり親なアドバイスを下さったりしていたが、準教授は多忙な教授に変わって大學の講義をけ持って下さっていたので正直、新鮮味はない。

それが、モニタールームから羨の眼差しで見下ろし続けた人達と――流石に教授はいらっしゃらないだろうが――「同じ」位置に立つことが出來るのだと思うと、が引き締まる思いだった。

ただ、コーラを飲みたい気持ちは醫局に近付くにつれ高まっていったのは我ながら不思議だった、大好だけど。

一瞬立ち止まって大きく息を吸ってから醫局のドアをスライドさせたら、凄い勢いと音でリターンしてしまった……。

醫局の中に居た先生たちが驚いたじで自分を見ているのも居た堪れない。

余りの出來事に固まっていた俺の後ろから長くて用そうな指と理想的なカーブを描く手首がドアの取っ手を摑んでくれた。その指には――主に手用の手袋をつけていたが――見覚えがあった。

「あ、あの、田中先生。有難う座います」

田中先生は「どう致しまして」と呟いた後に音も立てずにスライドさせた。

「あの節は、本當に有難うございました。第三者の久米先生の証言が有ったせいで説得力が増しました。今の、こういうじの醫局が有るのも……久米先生のご協力が有ってのことだと思います」

田中先生は口角を上げた笑みのまま頭を下げてくれた。と言ってもこの先生は背が高いので、その狀態でも俺の頭の上に頭部が有ったけれども。

ああ、あの時のワザとタイミングを外して教授の清流の流れよりもしい手技の流れを妨害して失敗させようとした事件のことを言われていることくらいは分かった。そして、そういう卑劣な企みを実行した人間達は醫局を去ったということだけは風のウワサで知っていた。

「いえ、醫師を目指す者として當然のことをしただけです。禮を仰るようなことはしていません……」

黒目がちな瞳が面白そうなを放っている。あの時も思ったことだったけれどもこの先生の目力は凄い。しかも男らしく整った顔をしているので効果は倍増だ。

「それはそうとお先にどうぞ。ちなみに、このドアはしの力で開閉が出來るようになっているので、先程のような渾の力では逆効果です」

あの當時はもっと厳しい顔をしていたような気がしたけれども、ああいう患者さんまで巻き込んだ卑怯極まりない追い落としの謀を暴く立場にいたのだからだろう。今の田中先生は何だか「とても頼れるお兄さん」というじだった。俺は一人っ子なので當然兄は居ないけれど、こういうお兄さんが居たら々教えてくれるのだろうな……と思った。

それに。

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