《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 23

プライベートでは親しい田中先生に、病院外の個人的な場所で――的な店などは分からないものの――局する人間のことを話しているのだろうな……とは思った。

執務室の中では、普段のほぼ無表な教授が笑みを浮かべているのも田中先生効果のようなじだったし。あの醫局騒を早期に収束へと導いた立役者なのだから、教授が田中先生を信頼しているのもある意味當然だろう。

「あの質問の意図は、患者さんと言葉のキャッチボールが出來るかを試しただけなのです。

……実のところ、私自がそういう會話能力に欠けているという自覚がありまして、醫局の皆様に負うしかないのです。

正直なところ専門外の知識ですよね。日経平均株価などは。知っているに越したことは有りませんが、患者さんも我々にそんな知識を求めてはいないでしょう。

それよりも、好きな野球チームとかの話で盛り上がれるならそれに越したことはなくて久米先生の回答は、ほぼ満點の答えでした。正解も正直ないのですが」

ストンと腑に落ちたというか、言われてみれば納得はするものの、その前の段階では誰も気付かないコロンブスエッグのような気がした。

「お言葉を返すようですが、あの面接の後にニュースで聞き流していた日経平均株価を注意していました。日によって変わるとはいえ、その日の正確な數字は有りますよね。

そちらが正解ではないのですか?」

素樸な疑問をつい口に出してしまった。あの質問で落ちたと思ったオレは親の仇でも見るような勢いで日経平均株価を引きニート狀態ながら見ていたので。

教授の薄いがより一層の笑みを浮かべている。元々が端整な顔立ちなだけにとても綺麗だった。確かに饒舌なじはしないものの、患者さんにこういう笑みを見せるだけでける印象が全く異なるのにな……と生意気なことを考えてしまう。

そして、オレの言葉を興味深そうに聞きながらお箸と口を忙しそうにかしている田中先生の食べる速度の早さを見習わなければならないのだろう、きっと。

スタッフに選ばれるかどうかは分からないものの、もしそういう僥倖に恵まれたら今日よりもっと時間に追われる日がやってくるので。

「もちろん、それも正解です。ただ、個人的に――そういう運用はプロに一任しているとはいえ――そういう數字も気になっているので、割と良く見ます。正解者でも會話を重ねていると、知識の底の淺さが呈するので。

私のような素人でもそう思うのですから、投資のプロともなると更に正確かつ的確な意見をお持ちです。ですから、そういう相手の専門分野にらないで、個人的に詳しい話しをするのが最も良いのです」

的な數字は知らないものの、教授がアメリカ時代に巨額の富を築いたという話は病院で知らない人が居ないだろう。その個人資産を運用のプロに任せていたとしても、個人的には気になるのも人だと思ってしまう。

オレはそういう資産的なモノは全く持っていないが、趣味で集めた限定のグッツとかフィギアがネットの中で高値で売買されているのをニマニマと眺めていた。売る気は全くなかったものの。

金額のケタとかは異なるだろうけど、きっとそういうことなのだろうな……と思ってしまった。

隣の田中先生が、コホンと咳払いをした。

多分。

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