《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 29

溫かくての手が力強く握ってきた。所々特にい箇所が有るのはメスなどを長時間握っているからだろう。そのプロフェッショナルなを與える手にしてしまう。

「これからコバンザメのように田中先生に引っ付いて勉強させて頂きますね。

以前は學生として手室から見る教授を始めとするスタッフの方に學ばせて頂きましたが、これからは皆の長所は學んで短所は『人のふり見て我がふり直せ』の神で頑張りたいと思います」

乾いた大きな手を――しかも無駄なとかは一切ない――ぶんぶんと振りながら決意の意を表明した。

その様子を心底可笑しそうな笑みで見下ろしている田中先生と、それを微笑ましそうに眺める香川教授だったが。田中先生の黒目がちの大きな瞳に何だか悪戯っ子が格好のおもちゃを見つけたようなが宿っているのは、きっと気のせいだろう。

「ああ、教授、午前の式のことですが、アメリカの學會で面白そうな論文を見つけました」

握手を解いた田中先生が早足で――外科醫は早足が基本だそうだが、田中先生の場合は腳が長いのでより俊敏さを際立たせる――白を翻しながら香川教授の執務用の機へと近付いている。

「もしかして、ジョーゼフ・オリバースミス博士の?」

教授が能の所作を――ちなみに母親に連行されて無理やり見た――彷彿とさせる優雅さで椅子に座っている。

「確かそのような名前だったと思いますが。ウエブ版なので、検索を掛けて頂ければ直ぐに……」

田中先生は――醫局騒の時に真っ先にいた人だし、その後も親しくしているとウワサでは聞いていた通りといえばそうなのだが――ヒラの醫局員にしては馴れ馴れしいじだったが、教授は憐悧で端整な顔に笑みを浮かべて田中先生を見上げているので問題はないのだろう。

そして一臺のPCの畫面に向かって真剣な眼差しを注ぎながら「ここはどう訳すのですか?」などとディスプレイ指している田中先生とそれに熱心に答える教授の姿を見ると、手室で切した「輝きの中にりたい」というのが正確ではなくて、この二人が揃っている場所全てが輝きを放っていて、オレは何だかおまけのような気がした。

醫師の神様というか、聖なる人達がオレの目の前で話し合っている。

その二人が醸し出す清浄な輝きに見ってしまう。

ただ、その他大勢でも良いのでこの栄の香川外科の一員になれたことを満腹を訴えている胃でも確認してこの上もなく幸福な気持ちにはなったが。

「この式で後のQOLが格段に向上しそうな患者さんがいれば、至急ピックアップをしておいてしい」

教授がこの上もなく真摯な瞳で田中先生を見ている。

「承りました。至急リストアップして午後の手が終わる頃にはお手許に屆くように致します」

何だか最前線で働いている――オレは見ているだけだが――二人といったじで先程よりもキラキラ合が増しているような気がした。

すると。

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