《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 6

「え?これ……マノ〇ブラニクですよね……?」

お母さんがファッション雑誌を見ながら羨と諦めの吐息をらしていたブランドだ。

華奢さとお値段の高さで。何でも「決して電車には乗らない選ばれたのために」だったと思うけれど、そんなキャッチコピーが誌面を踴っていた記憶がある。お母さんのファッションに特に興味はないオレが、そのブランドを覚えていたのは(こんな可くて華奢な靴をフミオちゃんが履いたらとても可いだろうな!)と思ったからだった。ちなみにフミオちゃんはハマっているゲームで一番人気のキャラだった。

「これを履くんですか?凄くお高いですよ……。ヒールだけでなくて、お値段も……」

こんなモノが何故病院に有るのだろう?

「そうなのか?」

柏木先生が疑い深そうなじでオレを見ている。値段の高さを言い立ててヒールを履くのを諦めさせる目的だと思っているような気がする。

「そうです。何だったら奧さんに聞いて下さい。ブランド名はご存知のハズです。お灑落なが羨の的というか……実際に履けないような作りですよね?リムジンか何かでパーティ會場まで行ってそこでだけ歩いて帰りはまた車で送ってもらうような生活をしているしか無理でしょう、どう見ても」

履くことは、取り敢えず置いておくとしてオレの重でこの華奢過ぎるヒールを砕してしまったらどうしようと思ってしまう。

オレの必死の言葉に、二人の目がその華奢な靴に集中した。二人とも「なるほどな」というじの表を浮かべてはいたが、止める気はなさそうなじでいよいよ心パニくる。

「まあ、その程度のブランドだとは思っていました。正確な値段などは知りませんが。

でも、たくさん有った中の一揃えなので多分把握すらしていないでしょうし、仮に把握していたとして、壊しても怒らないので大丈夫です。そんな細かいことを言うようなではないので」

ウチのお母さんがため息をついていた値段が「細かい」とは。

「あ!田中先生、長岡先生の個室からパク……いや拝借して來ましたね?

でも鍵が掛かっていたでしょう?どうやって?」

醫局でこんなモノを持っているのは、長岡先生しか考えられない。そしてナース羨の的のファッションリーダーに相応しくいつもハイブランドで固めているが、それが決して嫌味にならない貌と仕事の出來るだ。そもそも、香川教授が科醫としての彼の優秀さにアメリカから帰國する條件の一つとして病院に提示して、外科にも関わらず科醫として存在しているという稀有さだった。

それに教授や田中先生とは仲が良いらしい。オレにとっては畏れ多すぎて必要なことしか話せない相手だったが。

「いや、それが……個室の鍵を忘れることも有るので、その予防策として合いカギを最も近くの観葉植の鉢の下に隠すのが彼の習慣なのです。

だから、病院の個室でもそうでないかと常々思っていたのですが案の定でした。

で、このサンダルを履いて歩くだけで、絶対にのハイヒールの辛さが分かりますよ。

ほら……」

絶対に無理だと思う。こんな兇のような細いヒールを――アニメのキャラデザで見ているぶんには可いが――履いて歩くと絶対にこける。しかも、井藤が仕出かした事件の最中に「何もない所で派手に転倒」して顔面から出したのを、醫局の先輩方が誤解してしまって脳外科への怒りのボルテージが上がって最悪の事態になりかけた昏い近過去がある。

どうしよう……

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