《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 9

「分かりましたよ。履けば良いんでしょうっ!!

ただ、この高価な靴がどうなっても、そしてオレが転倒して腕などを骨折しても知りませんからねっ」

もうやけくそだ!と思ってぶと、泣く子も黙る杉田師長が三人で占拠していた控室にって來た。

「ちょっと、久米先生煩いわよっ!いくら患者さんがいないとはいえ、控室で駄々っ子のようにばないでちょうだい。

田中先生、その靴は何?凄くヒールが高いのね」

もしかしたら――田中先生は杉田師長に言い返せる唯一の人ではあるものの、基本的には師長を立てている。

オレならビビって何も言わず、いや言えずに唯々諾々と従ってしまう、あのガラスが割れてしまうのではと思えるド迫力の金切り聲で怒鳴ってもポソっと言い返している。

ただ、その指示が100%的確なことも相俟って、超早口で言われたこともキチンとこなしているのが田中先生の凄いところだ。

「杉田師長、聞いて下さいよ……。いくらオレがの気持ちがさっぱり分からない、そして彼居ない歴イコール年齢という記録に終止符を打つためにお二人が協力して下さっているとはいえ、ハイヒールまで履かせるのは橫暴だと思うのですが」

杉田師長は納得したじで頷いて――もともと何が起こってもじない人ではあるが――何か考えている。

「病院に居る時はオレではなくて、私と言いなさい。特に香川外科は上品かつ紳士的な醫師が揃っているというのがウリなんだからねっ!!」

しまった!ついつい「こんな高いヒールを履くのを斷固として阻止する」ことに気を取られて、いつの間にかオレと言ってしまっていたらしい。「人は急事態に陥ると素の言葉遣いが出てしまうので、普段から絶対に丁寧な言葉を使ってね」というお母さんの教えまでどこかに飛んで行ってしまっていたようだった。急事態の度が過ぎてパニくったオレ、いや私には。

「田中先生、どこで歩かせる予定なの?」

え?もしかして杉田師長も乗り気なのかっ?

救急救命室の天使と畏怖を込めて呼ばれている「天使」様なんだから、オレの天使になってしかったなぁ……。

「救急車専用スペースです。あそこなら平坦ですし、それに明かりも充分ですよね。それに萬が一のことを考えて、柏木先生と私が直ぐ近くに待機する予定です。

転倒でもして腕を骨折されたら貴重な戦力が削がれますから」

立て板に水といったじで田中先生が説明している。多分、この――オレ的には地獄の――プランを考えた時から場所も想定していたようだった。

「腕を骨折……確かにそれはとても困るけど、そもそも転倒した時に咄嗟に手でを支えるから骨折するんでしょ。その點久米先生はお上品なお育ちからか……」

杉田師長は豪快なじで笑っている。何だかとても楽しそうだ。

「上品なお育ち」の次は何を言われるのだろう。期待と不安で心臓がバクバクしている。

すると。

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