《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 15

「甘いですよ。私の高い給與所得、しかも今は夜勤中なので時間外手當まで付きますよね。その貴重な時間を奪って、しかも両肩がまだ痛いというかつてないほどの『重労働』を強いておきながら、コンビニのおでん代だけでなくていつものように三分割して支払わせようとするのでしょう?

その唐揚げとかの方が高価だというのに」

田中先生はセブンのレシートをちらりと見た後に、お気にりの柚子胡椒の小さな袋を用に破きながら冷たく言った。

田中先生は醫師的にも、そして人間的にも尊敬に値する人なのだけれど、金銭に関してはかなりシビアなところがある。それに確かにオレの重を―ーいかに力に恵まれているとはいえ――支えてくれていたのも紛れもない事実だった。オレだってまだ腕の痺れが殘っているのだから、田中先生の肩もかなり痛いハズで、今回は仕方ないかな……と悄然と肩を落とした。

「その話は了解したみたいだな……。だったら続きをしよう。夜景の綺麗なホテルのラウンジーーまあ、京都は建の高さがない分、厳選に厳選を重ねたバーに予約出來たと仮定して――その席に二人して並んだという設定で行こう。その乾杯の時に何を言うかが問題だ」

ロールキャベツを食べながら柏木先生がデートの臺本を見ながら――ちなみにワードで書き出したモノは二人にも渡してある――吹き出しそうな顔で聞いてきた。

「ええと『君の瞳に乾杯!』でしたっけ」

柚子胡椒をたっぷりかけた大を口にれていた田中先生が噎むせ込んだじで、を押さえている。しかも肩が震えているのはオレの重を支えただけではないだろう。

「あのな……臺本に書いてあったから、それを棒読みしただけだとは思うが……。そういうのは一昔前以上のトレンディドラマのにだけ許されているセリフだ。

アクアマリン姫なら言われ慣れているかも知れないが、久米先生のキャラで仕出かしたら大変な大慘事になりかねない。変更した方が絶対に良いぞ」

柏木先生がコピー用紙に赤文字で二重線を引いている。

オレのキャラ……には合わないか……。イケメン俳優が言っているのをお母さんがハマっているドラマでちらりと見たのをそのまま流用しただけだから、確かにそうかも知れない。この場でそういうキザなことを言って許されるのは田中先生くらいかも知れない。

確かにアクアマリン姫は乙ゲームのキャラをそのまま大人にしたじの清楚な人さんだ。ただ「大人のデート」のいはたくさん有ったと聞いているが、それを全部斷ったという話も柏木先生の奧さんのナース報網で調査済みという點がこの二人のすごいところだ。

「だったら、何と言えば良いですか?田中先生の人さんなら言われ慣れているじなので……そちらのご意見も是非ともお伺いしたいと思います」

田中先生が製薬會社の営業さんがたくさん置いて行ってくれる五りのボールペンをお箸に持ち替えている。

オレが書いた「君の瞳に乾杯」という文字列を容赦ないじで二重線を引きながら、し考えこんでいる。

(多分)歴戦の田中先生にも難しい問題なのだろうか?

それとも。

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