《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 26

どうしても田中先生作のデートの時の「臺本」というか想定問答集がしい。

というのも、ドラマの中でしか知らないが、子力も凄く高い上に、仕事もバリバリとこなす商社レディ、しかも総合職ともなるとプライドだって高いに違いない。自分の魅力に自信を持っていそうなので、なおさらのこと。そういうと遠距離をモノともせずに付き合っていられるのは、人さんとのデートの時にふんだんに語るの言葉も加えてのことだろう。

田中先生はとにかくコミュニケーション能力が――香川外科では専門知識と手技の次に重視されている――とても高いのは知っていたが、教授との共著の本の原稿を手伝った時に語彙力と表現力の高さを紙ベースで思い知った。

香川教授の醫師としての使命とか生きている人は絶対に救うという熱が余すところなく描寫されていて、思わず目頭めがしらが熱くなったのを覚えている。そして、その部分は當然教授が書いたモノだと思っていたが、何と!田中先生の「作文」だったと先生から聞いた。香川教授も々と多忙だし、その上共著と銘打つからには田中先生が半分書かないと「看板に偽りあり」だと思われてしまうとかで。

そういう表現のかさを持ち合わせている人なので――といっても共著の本には醫師としての熱い決意とか信念とかしか書かれていないのは當たり前だが、類推は充分に出來る――それをパク……いや、參考にさせて貰えれば彼いない歴にやーーーーっとのことで終止符が打てるような気がする。

そもそも田中先生の稀有な表現力の賜でもある、アクアマリン姫というあだ名も、清楚なしさの岡田様にはピッタリだった。

だからこの際USBメモリだろうが、新型のノートPCだろうが田中先生に貸してデート!のカンニングペーパーを作って貰おう。しかも田中先生が巧みに聞き出したところ、アクアマリン姫はオレに対してプラスのイメージを持っているのだから、この人を逃したら後はないような気もする。

それに柏木先生は、奧さんが――何でも二人目だそうだが――ナースの醫師からはよく分からないほどり組んだ人間関係の人たちの中では一目も二目も置かれているので、ナースや醫師の「ここだけの話」的な報がってくるようだった。

だからこの二人の頼もしい助っ人が居なければ、彼いない歴を更新し続ける憂き目に遭ってしまうような気がする。

「宜しくお願いします。このUSBメモリを使ってください。ワード文書で『アクアマリン姫』が表題です」

田中先生に――この機を逃したら次はないかもしれない絶好のチャンスだ――恭しく渡した。

それに、田中先生の文章は――その點では香川教授も同様だったが――難しい語句を使っている割に誤字字もないし、読みやすいのも特徴だった。

そういう點では、アクアマリン姫とのデートの時に會話に困る事態にはならないような気がした。

「了解です。そういうのは得意なので任しておいてください」

田中先生の返事に大船に乗った気分になった。

しかし。

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