《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 34

その奧の空間でキーボードを叩く音が聞こえた。田中先生のタイピングの音は割と特徴的だったし、香川教授と共著の本の原稿を作している時に聞いたのと同じだったので間違いはないだろう。

何だかストーカー行為をしているような気がして――いや、更にマズいかもしれないが――そっと覗きこんだ。

すると、PCの畫面に向き合う顔が見えた。タバコを咥えながらというのは想定だったが、ナースが見たら歓聲を上げそうなじの真面目で端整な顔でPC畫面に向かっていた。

オレが渡したUSBメモリが刺さっているのでアクアマリン姫とのデートの時用の臺本を作って下さっているじだった。

あれ?と思ったのは、共著の原稿も田中先生はワードで作っていたのは知っている。その原稿を書いている時は何だかとても楽しそうにPCに向かっていた。

その時の田中先生の表の中でも最も印象的な目の輝きが凄く嬉しそうで誇らしそうなじだった。

原稿を書くのが好きな人なのかな?と思っていたのだが――実際に現役醫師の中でもベストセラー作家になっている人も居るのでオレ達の仕事と作家との相みたいなものはとても良いのだろう。そして田中先生も原稿書きが――というか力作業――好きなのかと思っていた。

しかし、今の田中先生は電子カルテに患者さんの報とかを力するのと同じじの真剣さと真面目さは漂ってくるものの、躍的な楽しさめいたものは一切漂ってこない。

今夜の救急救命室が忙しすぎたからかな?とも思ってみたが、香川教授からワード文書で原稿を手渡されたと言って、田中先生の擔當の「香川教授の心れる」という作業中には當然こんな風に凄く忙しかった夜も有った。その時もPCに向かう時は本當に楽しそうなじで眼力めぢからの強い黒い瞳は凄く楽しそうに輝いていた。

それが今夜は何だか義務を果たすようなじで淡々と作業をしているじだった。

自分の日記をつけるのではなくて――そんな面倒なことは田中先生もしないだろうけれど――どれだけ尊敬している上に個人的にも親しいとは言っても所詮他人でもある香川教授の心をそれらしく綴つづる作業が楽しかったのだろうか?

まあ、田中先生のことだから直接聞いても正確な答えは期待出來ない……な。

すると。

    人が読んでいる<香川外科の愉快な仲間たち>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください