《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 38

「ご家族に『友達の醫師の話しだけれども……看護師を婚約者として家に連れて來るのはアリか?』みたいに聞いてみた方が良いですよ。

お母様がK戸學院出ならなおさら。

今では時代錯誤だと思われがちですが、差別心は――ダメだと心の中では思ってはいるでしょうが――となると話が変わってしまうのも有りがちです。他人のことなら『そういう選択も有りよねぇ』とか言うでしょうが、ね」

そういうモノなのかと冷や水を浴びせられた気分になった。ただ、そういえばオレが晴れて香川外科に局が決まった時のレストランでのお祝いの時に「後はお嫁さんね。どんなが良いのかしら?」とか目をキラキラさせて言っていたような気がする。

それにお母さんのランチ友達は中學から大學までずっと一緒だったとかいう人が多いことも田中先生の深刻そうな眼差しで今更ながらに気付いた。

お母さんがバカにしているじで言ったエピソードも。それは神戸では母さんの出校よりかは落ちるけれど「お嬢様大學」として有名な子大ではキャンパスに教會があるという――ウチなんてそんな雅びなモノはない國立大學だ――ある意味、別世界のような子大らしいが、その大學では平日に結婚式が挙げられるらしくて、講義などでキャンパスに居る現役JD子大生も見守るらしい。

その時に花婿さんの容姿が殘念だと、ひそひそと「僚・一部上場とかの有名な企業の曹司・弁護士・僚・醫師なんだって」みたいな「ご立派な」―-なくとも世間様には思われている――職業じゃないとダメらしい。それで皆は納得して祝福するらしい。そして今挙げた以外の「普通の」職業の場合はウワサが怖くてホテルで挙式をするのが「普通」らしい。その「金」をお母さんは批判したかったようなのでうっかり聞き逃していたけれども、底にはそういう気持ちが有ったのかも知れない――職業差別的な。

「聞いてみます。ただ、友人の話ではなくて、『オレが仮に……』とキチンと話します。そうじゃなければ本音は聞けないと思いますので……」

田中先生は――マンガでしか見たことしかないけれども――弟子の長を喜ぶ師匠のような笑みを浮かべてくれた。

「まあ、その方が無難ですが、些いささか久米先生にはハードルが高いかと思っていました。

ちなみに往年の名作小説の――何回かドラマにもなっていますが――大學病院の奧様は皆がK戸學院という設定になっています。そして看護師、いえ當時は看護婦ですが、そのは下町として名高い町に結婚退職して住んでいるという『差別』が有りますね」

小説はそんなに読まないし、確か田中先生が言及してくれた小説も題名は思い浮かぶものの、容は細かいコトまで良く覚えていない。

しかし。

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