《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 40

「ウチの母は差別主義者レイシストなのでしょうかね……」

深窓のご令嬢しか――なくとも母さんの友達の嬢さんとか、もっと素晴らしい家柄とか――オレのお嫁としては相応しくないと思っているんじゃないかな……と田中先生と話しているうちに疑念が膨らんでいく。それまでは全くそういうことを考えていなかった反からか、何となく重い溜息をついた。

「差別主義者というわけではないかと。ただ『久米家の嫁として看護師は認められない』とか言いそうですね……。我々からすればK大醫學部卒の醫師なんて病院では石を投げたら必ず當たりますが、世間ではそうでもありませんから。

やはり非の打ちどころのないお嫁さんをお母様はんでいらっしゃるかと思いますよ。

ほら、禮儀作法とか料理の能力とか話が合うかどうかとか――そんなのは後付けで大丈夫だと個人的には思いますが――そういう嗜たしなみめいたものを先にマスターしているの方が良いと思っているお母様は多いようですから」

ふと(田中先生はどうなんだろう)と素樸な疑問がわいた。

「田中先生の彼さんは、田中先生のお母様に気にられているのですか?」

さんはバリバリの商社レディで三か國語はペラペラだし海外に商談にも行くだし、オレが怖くて一歩たりとも歩けなかった華奢なヒールを難なく履きこなす極上の人さんだ。

オレの高校の時の同級生が有名な商社に勤務している。その友達の話しだと商社レディは商社マンのお嫁さん候補として雇われている側面もあるらしい。

商社なんだから海外勤務も経験する人間が圧倒的に多いので、夫人同伴で現地に赴任する。

そういう時に大使夫人ともパーティとかで同席するとか現地のお客様をおもてなしするとかもソツなくこなすには同じ商社に居る人がましいとか。

「はい。一目見た時から気にって貰っています。田中家の――といっても全く大したことのないダタの庶民ですが――レシピと母の婚約指だったかな?とにかくそういう母がずっと大切にしていた指も貰っていましたからね……。

私にしては極上の人を見つけたと絶賛されました」

田中先生は共著の原稿を書いている時と同じような笑みを浮かべている。

それだけ彼さんも誇らしいのだろう。香川教授は上司として尊敬しているのと同様に。

「お母様からレシピと指を貰ったのですね。それは凄く気にられているんですね」

まあ、商社レディも「お嫁さんにしたい理想の職業」のトップ10にっていたような気がするしある意味當然かもしれない。

ただ。

    人が読んでいる<香川外科の愉快な仲間たち>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください