《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 42

「都會で、いや世界中を飛び回るようなバリバリのキャリアウーマンが、僻へき……いえ、京都の日本海側までご挨拶に赴きましたよね」

正直なところ京都市街はともかく日本海側は田舎といったじだ。僻地と言いかけて慌てて言い直した。

「ああ、そのことですか?『彼』は私の母に気にって貰えるかとその前の晩は眠りにつけないほど張していました、よ」

田中先生がおしむような、そしてどこか儚げな――正直なところ先生がこんな表を浮かべるのは初めて見た――眼差しだった。に浮かべている笑みは、共著の本の原稿を書いていた時と同じような暖かさだった。もしかして田中先生は文章を綴るのが大好きなのかも知れない。現役醫師のベストセラー作家とか、元醫師の文壇の重鎮も居るので醫師という職業で文才に長けた人は意外にも多い。

「そんなに張するものなんですね……。非の打ちどころのないなのに……」

に関して目もえている田中先生が選んだなのだから、才兼備な人なのは間違いない。

ウチのお母さんがナースという職業をどう思うかはまだハッキリとは分からないけれども、難を示しそうな気がする。

しかし、一流大學――はっきりとは聞いていないが一流商社の総合職なのでほぼ間違いないだろう――を優秀な績で卒業している

ちなみにオレの高校時代の友達は殆ほとんどが一流と言われる國立大學や私立を卒業している。そして就活の時に商社にもエントリーして定をもらい損ねたとか言っていた、大學時代の績が悪くて。

そんなをオレが「付き合いたいんだけど」と紹介すればお母さんも諸手もろてを挙げて歓迎してくれると思う。

それでもそんなナーバスになるものだのだなぁと何だか「大人への第一歩」を踏み出したような気がした。

大人は部屋に萌えキャラのフィギュアとかポスターや抱き枕を置いてないような気はしたけれども……。

まあ、趣味は趣味なので仕方ない。

「ええ、完璧な人ですよ。容姿にも凄く恵まれていますし、才能も有り余るほど持っていますし……しかもそのことを全く鼻にかけない謙虛さも持ち合わせています。

それに々なことを深いレベルで知っているので、話していてもとても興味深いです」

田中先生が彼さんにぞっこんなのは知っていたけれども、そういう人ですら人の両親に挨拶に行く時には張するのだろう。

だったら。

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