《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 46

お母さんが自宅から歩いて10分ほどの父さんのクリニックに行くことはほぼない。

ランチ食べ歩きとかお茶とお花、そして小さな頃からハマっていたという日本舞踴で忙しかったせいだが、父のクリニックに居る合計15名の看護師さんとは距離を取って接しているな……と思い當たった。田中先生に指摘されて。

「そういえばクリニック宛にお中元やお歳暮を患者さんが持參なさるか送って下さいます。そういうシーズンには母もクリニックに荷を取りに行きますが、看護師さんにあげるということはないような気がします。

100%かどうかは分からないのですが、お歳暮などのシーズンになるとリサイクル業者がごくごく普通の國産車とスーツ姿でウチの自宅の玄関先までやってきて、封を切っていない洋酒とか日本酒の瓶とかブランドの袋にったモノとか商品券などを一括して玄関先で査定してそのまま引き取って行きますね」

看護師には何もおすそ分けしないのだろうか?

田中先生に指摘されるまでは何とも思っていなかったが、確かに何だかお母さんが――玄関先で応接しているのは「信頼できる業者だとしても、そういう人は家に上げるに値しない」とか――人間の線引きをしているのは確かなようだった。

「リサイクルショップね……。今は『メル〇リ』などが主流みたいですけど、お歳暮などが山のように來た場合出品して売れた場合いちいち荷造りとか面倒臭そうですから。

ま、それは置いておいて、日持ちのしないお菓子や果などはどうなさっているのですか?」

そう言えば「世界の」香川教授が執刀するウチの科では患者さんも金一封を喜んで包むだろうが、凱旋がいせん帰國からずっと「金銭の授は謝絶します」という方針を斷固として貫いている。

香川教授レベルでは――病院のウワサにしか過ぎないが――100萬円単位の札束が一個か二個が普通だったそうだ。

ただ、仮に200萬円を教授に渡したとしても、手技は普段と同じに最善を盡くすのは目に見えている。

オレが醫局にっていなかった頃の話だが、特診患者さんを――差額ベッド代などで病院を儲からせてくれる人達だ――優先するのかと思い込んでいた先生方が多かったみたいだが、手の順番は病気の重篤度で決めていたと聞いている。

ま、香川教授に「100萬円」の「寸志」を渡せなくなった患者さん達は老舗料亭とかレストランなどの超豪華なお弁當を執務室に屆ける――生ものなので返すことが出來ない――戦法に出たらしい。

時々だけれど、オレも凄く味しくて豪華な晝食にお相伴するという名譽に與っている。

で、何の話だったっけ?

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