《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 48

「もう上がりですよね?それにこの時間ならシャワー室にほぼ人が居ないので迷にはならないでしょう」

先ほどの真剣な眼差しとはうって変って田中先生の目は悪戯イタズラっぽいりが宿っていてイヤな予がした。

「まあ、ご両親の本音中のホンネを聞いておいた方が良いですよ。

もしかしたらアクアマリン姫のことを看護師としてではなくて、人間、いや久米家のお嫁さんとして見て下さるかも知れませんから。

まあ、その可能は……」

意味有り気に言葉を切った田中先生は飲みの自販機へと足早に歩み寄った。

何を買ってくれるのかと思うとオレの大好きなコーラで、やっぱり頼りになる上に優しい先輩だ!と、同じ醫局にれて良かったなあと思った瞬間にプルトップを用に開けて、さっき手に持っていた細長い棒のようなものから錠剤の拡大版を取り出している。

「どうぞ。ただし、そこに立ったまま飲んで下さいね」

それだけ言うと田中先生はPCを置いてある所まで普段以上の速足で去って行った。

その瞬間、コーラが間欠泉のように噴出した。

「ええぇぇぇっ!!」

缶を摑んでいる手までがコーラまみれ、いやコーラの滝が流れ落ちる水路(?)になっている。

「ネットで見ませんでしたか?コーラにミントスをれたらそうなるらしいです。

ただ、ああいう畫サイトはヤラセも多いと噂されていますから、一度目の前で検証してみたかったのです」

目を悪戯っ子のように輝かした田中先生を見て(やられた!)と思ったのも後の祭りだった。

今夜はハイヒールといい、コーラの間欠泉といい田中先生の「他のない」気晴らしの餌食になってしまった。

「ほら、そこの水道で手を洗わないと糖分でベタベタになりますよ。そんな手でUSBメモリを持ったら下手をすればPCまで悪影響が出かねませんから……」

田中先生は心の底から可笑しそうな表で、それでいて親になってアドバイスをくれた。それに、杉田師長達から頼まれたたこ焼きとかも持って帰らないといけない。まさか救急救命室の天使サマにコーラの香りと甘みの付いたたこ焼きやお好み焼きを渡すわけにはいかないので。

「お疲れ様です。じゃあ、また明日の、いやもう今日ですね……。手前カンファで會いましょう」

田中先生はハンカチで丁寧にくるんだUSBメモリを手渡してくれた。

もしかしたら必死に考えた臺本が――オレのデートの、だけれど――破損するのが嫌だったからかも知れなかったが。

し時間が出來たらお母さんとお父さんにアクアマリン姫のことを言ってみよう)と心に決めて、こんな深夜にも関わらず自宅に帰る田中先生を見送った。

背を凜とばして歩く田中先生の後ろ姿はバランスの取れた長で、その上早く家に帰りたいのか――といっても一人暮らしなので待つ人は居ないハズだけれど――きびきびと足をかしている様子をしばらく見送った。コーラの香りがほのかに漂っているのはきっと気のせいだろう、多分。

そして。

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