《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 93

香川教授の場合は才能とそしてーーそんなじは一切けない溫和さとか憐悧さだったけどーーそれでも人知れず努力はしているのだろうな……と。

そういう人だから人並み以上の資産を築いて帰國出來たのだろな。日本ではどんな名醫でも、ぶっちゃけヤブでも手の料金は同じだ。そういう點では普通の料理店のように良質の食材を練の職人さんが腕を振るうお店はそれなりの料金が必要だし、オレが大好きなミスドとかマクドはーー東京ではマックと呼ぶらしいがーー基本アルバイトで回している分、単価は安い。

どちらがどうという比較は出來ないけれども、手技に関して言えば名醫とヤブだったら名醫に任せたいと思うのが人だろう。まあ、病院には香川教授の高名を慕って日本全國どころか外國から患者さんが押し寄せて來るという結果になっている。

料理のお値段はそういうランク付けが有るというのに、手にはそれがないというのは正直おかしいとも思えるけれど、それがこの國の方針なので仕方ないのだろう。

「お!待ち人來きたるだな」

柏木先生の聲に我に返った。

「久米先生、そして柏木先生おはようございます」

朝に相応しい爽やかな聲とアクアマリン姫と田中先生があだ名を付けたのも分かる清涼なじの笑顔がオレと柏木先生を互に見ている。

柏木先生にペコリとお辭儀をした後はオレの方を長めに見て清純そうな笑みを浮かべているのは気のせいではないだろう。その証拠に柏木先生は朝の挨拶をわしてしばらく経つと「ああ、用事を思い出した。久米先生も人に見惚れて時間を忘れるようなことはダメだぞ」と笑いながら釘を刺すじで言った後にさっさと離れていった。

「おはようございます。本日はお天気も上々で良かったですね……」

アクアマリン姫は怪訝そうに空を見上げている。先ほどはお天気が良かったんだけれども今は思いっきり雲で空が覆われていたのだから。

シマッタ!!と思っても後の祭り狀態だ。

「いえ、あのう、そのう……飛行機で雲の上に行ったら……という意味です」

大慌てでフォローしたらアクアマリン姫は可笑しそうなじで鈴を転がすように笑ってくれたので一安心だったが。

「確かに雲の層を抜けると太が燦燦さんさんとしているでしょうね。

飛行機ですか……。私もどこかに旅行したいなぁと思っています。

ただ、新米なのでなかなか思い通りに休みは取れないですけれど」

華奢な肩を仕方なさそうに竦めて綺麗な笑みが煌めくようだった。

ただ。

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