《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 99

し辺りを見回して、薄く塗られたから貓のような舌をチロッと出すのも最高にラブリーだった。

「こんなことを言うと先輩方にものすごく顰蹙ひんしゅくを買って最悪、無視されます。仕事で必要な時にしか聲を掛けて貰えません……」

寒そうに震えるじでアクアマリン姫は周りを見回している。何だかナースの間ではドロドロしているとかウワサでは聞いたことがある。

ただ、ウチの醫局では田中先生のファンが多いので「誰々さんにシカトされてます」とこっそり言いに來て、田中先生がその誰々さんに話を付けるそうだ。「的にどうしたのですか?」と聞いても「久米先生にはまだ早いです。時期が來たら伝を伝授します」と言われているので、それまでは「おあずけ」狀態で大人しく待っていようと思った。

「なんですか?」

看護師になったのは経済的に自立した人間になりたいという想いも確かに有りましたが、尊敬できるお醫者さんと結婚したいなというとしての願いも心の片隅にちらりと。

ただ、あからさまなお醫者さん狙いだと分かると、優しい先輩が次の日から口をきいてくれなくなります。

それとかナースキャップが隠されていたり……。

ウチの病院ではないんですが、新米ナースの歓迎會の時に「夢はお醫者さんと結婚することです!!」って言っただけでその場が凍り付いて……。明人間のように扱われてしまって……その病院を居た堪れなくなって辭めました。

「そんなことがあるんですか?江戸時代だったかの村八分むらはちぶみたいですね……。

オレが最も良く接するのは杉田師長だし、彼はミスをした時には容赦なく雷を落とす人ではある。ただ、同じようなミスを繰り返さなければ「久米先生!!良くやったわね!ナイス!!」とかカラッと褒めてくれる。

「田中先生と初めてお茶した時に――といっても一回だけですが――思わず久米先生のお名前を出してしまったし、そして『デート』プランが進行中だと田中先生とか柏木先生からも聞いています。

私も柏木先生の奧さんみたいに、子供が出來るまではこの仕事を続けたいのですが、先輩達から生意気とか思われたくないんです。柏木看護師は手室のベテランナースなのでそういう『雑音』とか無視出來ないだけの実力は有りますよね?でも、私は新米なのでそんなコト出來ないです……」

岡田看護師は「結婚」つまりオレとだろう。それしか考えられない。だって田中先生報によるとかなりの醫師に告白されているようだったが全部斷っていると聞いた。

これは、彼いない歴=年齢どころか「婚約即結婚」という流れになりそうだと思うと、心が風船のように空中をフワフワ飛んでいるような気持になった。

「それは任せて下さい。ほら、あの事件で、白河教授はウチの科に対して遠慮しているでしょう。遠慮と言うか、仰せご尤も!!と言ったじですよね。それにオレはあの事件で怪我をしました。だから白河教授にガツンと言ってやりますよ。だから心配しないでください」

ただし。

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