《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 107

「そういう団結力ってとても大切よ。まあ裏のリーダーは田中先生だろうけど、なくとも獨裁者とかそういう面はないわよね。どちらかといえば『楽しく醫局を盛り上げて行きましょう』っていう方向よね。ま、患者さんが関係することとなると話は別だろうけれど。何しろ一個のミスが命取りになる可能めているわけだから」

杉田師長は俺にMRIの機會越しにマイクで喋っている。バケツをガンガンと鳴らす音と共に元気いっぱいの聲が聞こえてくる。

まあ、杉田師長の場合、搬送が立て続いて起こった場合キンキン聲にーーあれは聴覚を破壊するような気がするーー比べればMRIのバケツの音の方がマシなような気がする。

「そうですね。獨裁者チックな時も有りますが、田中先生は香川教授ともお親しいんで、いざとなればチクれば良いことでも田中先生が何とか穏便に解決しようと頑張っているな……とは思いました」

畫像が表示されるまでのタイムラグがあるのは仕方ない。

まあ、あれでも外科出の斎藤病院長などの世代だとMRIという機械すらなかったので、全く疎いとも聞いている。

厚労省肝いりでーー要するに補助金もたくさん出るということだーーAiセンターが出來た時に「視察」に訪れて、田中先生の案の元「ここに畫像が映る仕組みです」と言ったそうだが「何も映っていないじゃないか?」と短気さも持ち合わせているのがこの科の通例だが、カビの生えた外科醫としての気持ちが蘇ってきたようだったと聞いている。

それを田中先生や放線科の野口準教授が「システム上仕方ないのです。數十秒お待ちください」と宥めたと聞いている、田中先生から。

「『親しい……ね』」

ポツンと呟かれた言葉は何となく意味あり気だった。二人で夕食に行っているところを複數人に目撃されている。

格式ばったお店ではなくて、老舗の料亭などの板前さんが獨立してはじめたとかいう、死ぬほど味しくてしかもそれほど値段が高くないというカウンター割烹とかで。

ただ、そんなお店だから予約しないとダメだとも聞いている。ウチの両親用達ごようたしのお店は値段もそれなりに高いので平日などはフラッとっていっても大丈夫だ。

そういうカウンター割烹のお店を予約までして一緒に行くという仲なのに「親しくない」のだろうか?

「はい出來た。もう起き上がって良いわよ。

うわぁ、重癥ね」

杉田師長の言葉にギクリとした。

ただ。

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