《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 113

「ま、上手くやんなさい。人間てね、守るものが出來れば強くなれるから。

それに、格だって一見短気だと思っていた人が信じられないほどに粘り強くて、そして強靭きょうじんになれるわ。

その変化はきっと良いコトだと思うのよ。人間的に深みも出て來るし……」

杉田師長が何だか遠い目をしている。救急救命室所屬の先生のことでも思っているのだろうか?なくともオレの良く知っている同じ醫局の人の話ではなさそうだ。

だって、そんな人間に心當たりなんてない。

「分かりました。何だか人間としても長出來そうですよね。凄く深い話を聞いた気がします。有り難うございました!!」

いくら晝間の救急救命室に人が居ないとはいっても、杉田師長はこれから帰って寢るらしい――そりゃ、一番忙しい夜間に備えて休まなければが持たないだろう。それに「この」杉田師長と結婚したある意味強者つわもののご主人のためにも家事だってしないといけないだろうし。いや、もしかしてあだでさえ「高待遇」のナースに「ヒモ」的なご主人が居るとかいうウワサは聞いていた。

一般的なナースでも、例えば「司法試験を目指す!!」と言いつつ一向に法律の勉強をせずに専業主夫の座に甘んじているという、オレ的には信じられないような関係を持っている人もいるらしい。

オレが聞いた中で一番ビックリしたのは、某ナースの話しで「専門學校にも通わず司法試験に10回以上落ち続けてる」という男と付き合っているだ。付き合っているというか同棲しているらしいけれど、スプーンとかお箸の在処ありかもその人(?)に聞かなければ分からないほど家事は全て任せているというだ。ま、オレだって、家に帰ればテーブルの上に食事に必要なモノは全てキチンと揃っているけれど。そしてお箸の在り処くらいは分かっているけれども、お母さんが用意してくれているので取りに行く必要は全くない。

と言っても、オレは救急救命室勤務までしているので、開業醫のお父さんに合わせた生活時間を送っているお母さんと顔を合わせることがない場合も多いけれど。ただ、「お仕事お疲れ様。レンジでチンしてね」とか達筆過ぎる字の置手紙がテーブルの上に置いてある。

オレ的にはとても助かっているんだけど、母親にそうして貰うのと、同棲している「主夫」にして貰うのとでは違くね?とか思ってしまう。

そして。

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