《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 123

「もしかしたら、コーヒーの方が良かったですか?ただ、洋菓子は患者さんのご家族から頂いた焼き菓子しかないのですが……」

オレの戸った表を変なふうに誤解したらしい。そういう問題じゃないんだけれども。

「あの!私買って來ます」

どう見ても研修醫ではない醫師が慌てたようなじで財布だけ持っている。

いや、そもそも脳外科に研修醫不在なのは知っている。井藤は警察に連行されたし――その後は詳しく知らないけれど――この中途半端な時期に新規補充は無理だというウワサもある。

「いえ、大丈夫です。実はダイエット中なので……。それに怪我は完治しましたので大丈夫です。傷跡も殘っていませんし、そもそも男の顔にしくらい傷が殘っていても問題ないでしょう?うら若いならともかく……」

正しくはダイエットを「明日から」しようと思っていただけだったけれども。

「いえいえ、香川外科所屬の先生がわざわざ來て下さったわけですから、ムゲには扱えません。

そもそも香川外科には足を向けて寢られないのがウチの実です。

ウチの白河教授も畏れ多くて、謝罪にも行けていない狀態です。ですから遠慮なさらずにケーキを召し上がって行って下さい」

別に遠慮とかじゃないんだけどなぁと思いつつ、ここに來た目的は木村先生の個室でコーヒーとケーキを食べることじゃない。

ああ、そうだ!手に良いモノを持っていたと思いついた。

「あのう、先ほど転倒して……、念のために畫像を救急救命室で撮ってもらったので、それを読影して頂けますか?」

本當は放線科の先生が専門だけれど、脳外科だって一応は分かる。しかも、オレの場合は「仮病」ならぬ「仮傷」なので誰が見たって同じだろう。

それこそ、そこいらの掃除の小母さんとか、警備員でも大丈夫なレベルだ。本當に自己診斷でヤバいと思ったら専門家に聞きに行くだろうけど。

「香川外科の方のお役に立てるのは外の喜びです。

謹んで拝見させて頂きます。こちらの封筒ですか?」

木村先生は何だか貴重なを預かったような手つきでオレの畫像をけ取ってくれた。

も何だかキリっとなっているし、先ほどのように悪代にペコペコしている越後屋の主人のようなじではなくなっていたし。

「はい。実は脳外科にお邪魔したのはこの件です。ウチの醫局にもAiセンター長の田中先生が居ますけれど、生憎あいにく今は手中でして……」

田中先生という名前を出すと、より一層背筋がびたじだった。

何故だろう?

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