《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 128

「久米先生、あのう……大丈夫なのですか?

頭の怪我って……」

心の底から心配してくれているようなアクアマリン姫、いや岡田看護師が控え目に聲を掛けてきた。

多分、木村先生を憚ってのことだろうが。

「大丈夫です。あくまで念のためです。ほら、頭を打ったのは事実ですが、あくまで念のためです。

それに、ほら頭にはがたくさん有るので、ちゃんと保護……って?」

岡田看護師はアクアマリン「姫」に相応しくない手荒なじでオレの腕を強く引っ張って、ピンクに華奢な、でもナースらしく荒れた指を一本縦に立てている。

え?何?と一瞬固まってしまったが、木村先生の後頭部を見て納得した。

ちょうどオレが「仮傷」と言い張ったのも後頭部で、しかも木村先生の後頭部はかなりハゲ……いや、かなり寂しくなっている。正面から見た時には額が広くて賢そうなじしかけなかったけれども、どうやらが死滅しかかっているらしい。

もしかして、脳外科を文字通り震撼しんかんさせた井藤の事件のストレスで余計に抜けたのかも。

そして髪が寂しくなっている人は二種類に分類されるとオレは思っている。

凄く気にしていて言われると怒るタイプと、自分のハゲを笑い飛ばすタイプ。

そして木村先生はきっと前者なのだろう。アクアマリン姫の慌てたじだと。

ってこんなに気配りが出來るんだぁ~!っと心しつつ、了解の頷きをした。

「大丈夫だって、木村先生が仰おっしゃっていたので全然平気です。そんなに心配して貰わなくとも……」

ここが脳外科の醫局だということなんて頭の中から吹っ飛んでしまってまさにアクアマリンの清楚なに包まれていた。

そんな空気を察したのか、木村先生がコホンと咳払いをした。

「岡田君、久米先生にコーヒーとケーキをお出しするので、第二會議室を使って良いですよ。

佐藤看護師にはキチンと言っておきますので、今後はこのようなことがないように致します。

それで良いですか?久米先生」

頭髪が過疎っていることはスルーすることに決めたらしい。何となくがヒクヒクいているような気がするけれど、神科の醫師でも臨床心理士でもないオレには何を意味するのか分からないけれども。

「はい、喜んで。田中先生にもゆっくり休めと言われましたし」

すると。

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