《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 129

木村先生の背筋がピンとびた。何だか直立不で敬禮でもしそうな雰囲気だった。

そう言えば井藤がガチでヤバいヤツだと――ただ、オレにもあんな暴挙というか最悪なことを、選りにもよって香川教授にあんな逆恨みで、そして腱を切斷するという全く理解出來ないことを仕出かすとは思ってもいなかった――田中先生はき回ったらしいので當然、脳外科の先生方とも接に関わっていたのだろう、的なコトは知らないけど。

「田中先生のご機嫌は如何ですか?あの例の研修醫がとんでもないことを仕出かしてしまって、白河以下田中先生や香川教授、そして醫局の皆様には足を向けて寢られないと言うのが実でして……」

ウチの醫局にはたくさんの醫局員が居る、當たり前だけど。その全員に「足を向けて寢られない」んだったら立ったままでしか無理なんじゃね?と思ったけど、単なる誇大表現というか(それくらい申し訳なく思っている)ということだろう。

まあ、田中先生が杉田師長の類い稀なる臨機応変さで救急車を強奪して京都駅に向かって――確かにそれが一番早いだろうけれど――最速で駆け付けたから大事おおごとには至らなかったから良かったものの、最悪の場合、香川教授の腱は斷絶されてた……と聞いた時にはが凍るくらいビビった。

井藤だって――脳外科では戦力外扱いだったらしいけど――どこを切斷すれば指とかがかなくなる程度の知識は當然持ち合わせていただろうから。

「一時期は細を欠いているな……とかに思っていたのですが、今はすっかり以前の快活さとかエネルギッシュさを取り戻しています。醫局もすっかり落ち著いていますし、オレ……いや、私の元同級生が――と言っても斷じて友達ではないですけれど――やらかした件について口にする先生とかも居ないですし、ましてや脳外科をどうこうとかは一切言ってないですね。

だから足を向けて寢ても良いんじゃないですか」

木村先生は心から安堵したようなじで笑みを浮かべている。心なしか、髪のもちょっとはフサフサになって來ているような……。

「そうですか。それは本當に良かったです。いえね、香川教授や田中先生がウチに何かを仰おっしゃって下さるならまだ良いのです。醫局に対して厳重注意とか病院長からの――まあ、私の職階では直々にお言葉を賜るなんて思っても居ませんので白河にでも――叱責などが有ればまだ謝罪も出來ます。

しかし」

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