《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 131

「見捨てたとかそういうのではないかと思います。特に醫局でも井藤……失禮、オレ、あ!失禮しました」

木村先生は何だかいわゆる排泄がおから出るヤツとか胃袋から逆流するヤツ両方がそこに有るような心の底から嫌そうな表をしたので焦ってしまった。

たしかに、あの井藤がーー同級生なのは確かだが、斷じて友達ではないーーあんなとんでもないことをやらかさなければ、心臓外科と脳外科には何の波風も立っていないのは事実だ。以前のように政不干渉で、脳と心臓の両方に手が必要な患者さんが居た場合はお互い協力しあうというだけの淡々とした関係が普通なのだから。

そういう均衡を破ってしまって、しかも香川教授の「神の手」を永久に使えなくしようとしたーーいや、そんな怖い想像は止めておこう。現に香川教授は田中先生などの盡力により無事だったのだからーー井藤という存在が脳外科にとっては忌まわしい黒歴史中の黒歴史なのだろう。

田中先生からちらっと聞いたところでは、脳外科にる時にも井藤家から多額のお金がいていたとか。オレの場合、そんなズルのような真似は出來ないし、しかも香川教授は患者さんからの金銭すら謝絶している人だからオレが局に當たってお金なんて言い出したらそこでアウトのような気がする。

「見捨ててないのですか?」

岡田看護師と楽しくお話出來ればな……とは思うものの、何だか脳外科の皆様が気の毒になってきた。

「はい。醫局でい……例の研修醫の話はたまに出ますが、あれはアイツの神疾患もーーほら、院LANに不定愁訴外來の呉先生が「ご參考までに」みたいなじでアップしていましたよねーー加わっての単獨犯だということははっきりしていますので、脳外科に対しては含むところがあるとは思えないです。病院長は雲の上の上の人なので、どういう気持ちなのかは分からないですし、香川教授も直接そういうお話をしたこともないのですが、そういうのって何となく分かりますよね?

田中先生は救急救命室でかなり親しくお話する機會が有りますが、脳外科についてなんとも仰おっしゃってないです。だから無視とかではなくて、単に言うべきことがないので何にも言って來ないのだと思います、あくまで一研修醫の意見ですが……」

香川教授は「あの」月曜日から普段通りの卓越した手技を披していたしーーどうなることかと醫局中、いや病院中が固唾を飲んで見守っている中でーーそれ以降も本當に素晴らしい手技を披し続けている。

すると。

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