《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 「夏事件」の後 132

導き出される答えは一つで、田中先生とか被害者の香川教授は井藤に含むところはたくさんあるだろうけれど、脳外科とは切り離して考えているという線が濃厚だ。

アイツはもともと外科志だったし、ウチの醫局は落ちたとはいえ脳外科以外の外科に所屬していた可能だって凄く高い。

というのも、昔ならいざ知らず、大學病院の研修醫なんて「人間扱いされない」というのがオレの周りでは共通認識だった。だからウチの病院ではなて私立とか公立の病院に就職したり、博士號を取得するために院に殘ったり箔はくをつけるために外國の大學に行ったりで、病院に殘ることは割と珍しい。ウチの場合は実家のクリニックを継ぐための拍付けのために「K大大學病院を経て」というのがお父さんの悲願だった。

それにオレの場合は「絶対にオレが悪い」という場面では杉田師長なんかに思いっきり怒鳴られるけれど、それはある意味自業自得なので仕方がない。醫局では田中先生辺りにチクリとに刺さる言葉は投げかけられる場合もあるけど、それも「職務中のポカミスへの注意」なので、そんなのは醫師ではなくて普通の會社員でも良くあることだと思っているし、注意してもらって有難いと思う。

だから「人間扱い」はされていると思う。夜中のセブイレなんかの買い出しもーー冬はめっちゃ寒いけどーー新人がありがちなパシりだろうと割り切っている。

井藤も親さんが醫院経営なのかは知らない。けれどそういう事で殘る積りならばどの醫局でも良かったハズだ。

香川教授は必要最低限の言葉しか言わないし、ざっくばらんに話すようなタイプでもない。――まあ、雲の上の教授職なので研修醫ごときとは「絶対に」二人きりでは話さないだろうけど。

ただ、田中先生とか元同級生で學生時代は仲も良かったーーオレと井藤とでは大違いだーー柏木先生などとは話す機會があるらしい。まあ、オレの知る限り「あの事件」の後柏木先生と呑みに行ったということもないらしいが。ただ、「あの事件」の直後に教授が神的に參ってしまった時につき切りだった田中先生はその辺りも聞いているだろう。あの時には外科醫生命が絶たれるかどうかの瀬戸際なのでそうなる気持ちは痛いほど良く分かった。まあ、香川教授ほどの卓抜した手技をオレが出來るかどうかは未だ未知數だが。たまたま井藤のこともマークしていて駆け付けた田中先生とその道の専門醫でもある不定愁訴外來の呉先生――ちなみにオレは會ったことはないがーーが付き添っていたらしい。

その時には。

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