その患者さんのご家族が次にいらっしゃった時にわざと難しい顔をして「この治療法では功確率が１５％しかないという臨床報告も出ています。エピデンスはこれですね」とか言って、遠藤先生が出してくれた英語の論文とかをご家族に告げると黙ってしまうそうだった。

そういう方法はスゴイ！と思っていずれはパクり……いや、真似をしようと思っていた。

醫局を早く出て行きたいじのーーそりゃあ、コードブルーの患者さんを優先しないといけないのは當たり前だーー木村先生に向かった。

「一応、頑張ってはみますが、こればっかりは醫局の総意ですからね。私の伝えられる範囲は限られていますが、その範囲で『ロビー活』をしたいと思います」

香川教授はとっくに許しているとは思うーー淡々とした憐悧な表は心を把握するのが難しいものの、に持つタイプではないな……というのがオレの観察だった。まあ、外れたこともあるので斷言は出來ないし、雲の上の教授職なので世間話とかは論外だ。だから直接聞いてみるとかは出來ないのも確かだった。ただ、雰囲気とかそういうものを総合的に判斷するともう「過ぎたコト」とか思っていそうなじだったけど。

「それはそれは。何卒なにとぞ宜しくお願いいたします。岡田君、久米先生のお相手を頼む。くれぐれも失禮のないようにしてくれたまえ」

そう言い殘して醫局から足早に出て行った。

いやいやいや！アクアマリン姫こと岡田看護師に対して「オレが」失禮なことを仕出かしてしまう可能の方が絶対に高い。

何しろ、ずっと男子校だったし、大學にってからも圧倒的に男が多かった。中にはの子も居たけれども、男勝りというじの人ばっかだったし。

そして病院に就職してからは心臓外科と救急救命室という二足の草鞋わらじを履いている。

香川外科には長岡先生という紅一點のが居るけれども、彼は香川教授とか科の田教授とかから凄く信頼の厚い人で、とてもじゃないけど研修醫風が気軽に口をきいて良い相手ではない。

救急救命室の杉田師長を始めとする看護師も皆が男勝りというか、言いたいことはハッキリ・グッサリなタイプだ。だから岡田看護師のような大和子というか「らしい」人っていうのは初めてだ。

そのうえ。