「ケーキ、お好きですか？」

オレ的には無難なことを聞きながら、あっと気がついてケーキとコーヒーの載ったトレーをアクアマリン姫からけ取ることにする。

我ながら冷靜な判斷が出來たと自分で自分を褒めてやりたい。

まあ、こういう「にを持たせない」ということも――なくとも仕事上のモノでなければ、という前提がつくが――田中先生がナースに対してごく自然にしているのを見て覚えたことだった。

あの時は（良く気がつく人だなぁ。だから外國出張の多い――だから西洋の男のエスコートは凄くスマートだと聞いた覚えがあるーー商社レディとも気兼ねなく付き合えるのだろうし、病院での評判も凄く良いんだろうなぁ）と他人事ひとごとのように眺めていたけれど、今回はその実踐編だった。田中先生みたいに慣れた自然なじには全然なってはいないだろうけれど、挙不審にも見えないだろう。

やっぱり、普段からモテる人のことを良く見ておいて本當に良かったとシミジミ思った。

「有難うございます。それに……指示を的に出してくれって言ってくださって本當に助かりました。

『あれ』とか『それ』とかで全部言われてしまうので、何を指しているのかサッパリ分からなかったものですから」

そういう先輩ナースの不手際というか、指示ミスなどが有った場合、ウチでは柏木先生とか場合によっては田中先生が対応している。それが普通だと思っていたのだけれど、あの醫局の混沌カオスっぷりからしてそんな「些細な」コトまで気が回ってないじだった。

「『こそあど言葉』で片付けられたら全然意味不明ですよね。外科醫の場合は的確に言わないとならないのでそういう指示語は一切使いません。

まぁ、だから飲み會とかでも平気で心臓とか臓の話をしてしまって、周りの空気がササっと白けることとかもよくあります。そういう點を気をつけるようにはしているんですけど……」

アクアマリン姫とA會議室にって向かい合って座った。

なんだか面接みたいなじになってしまうのは仕方がない。だけれども、オレが綺麗なと向かい合って座ってケーキとコーヒーを一緒に食べているなんて夢のようだった。

「前教授のPC『も』カオスらしいですね……。いっそのこと全部壊してからこっそり山に埋めに行くとか、海に捨てに行くとかじゃダメなんですか？」

オレも専門的な學問としてPCを學んだわけでもないので詳しいことは分からないが、PC本があれば復元することも可能だと聞いた覚えがある。

すると。