《転生しているヒマはねぇ!》7話 迷探偵

「暇じゃ!!」

「いてっ!」

モニターを見ながら、勉強した歴史を思い返していたオレの後頭部を、マーシャの奴がグーで毆った。

「このっ! 毆んじゃねぇよ! あと一発で消滅すんだろうが!」

「うっさい! 加減しとるわ、ボケェ! し薄くなっただけじゃ!」

「そっちこそ黙れ! オレが生前、その言葉にどれだけ恐怖したと思ってやがる!」

「知らんわ、ハゲ!」

あまりよろしくない方向に打ち解けたオレ達は、そこまで怒鳴りあったあと、揃って息をついた。

「やめよう。この爭いは不だ。いろんな意味で」

「……そうじゃな。お前の頭を叩いたところで、暇なのもの量も変わらん」

なら最初から毆るなという言葉はなんとか飲み込んだ。

「そもそも植部に監視課って必要か? くのはごく一部だろ? 特に畑の野菜に送った魂なんて、一年足らずで転生界にほとんど戻って來るんだろう?」

「ふん。バカめ。転生界から送り出した魂が健全な野菜に長するかを監視するのは、特に重要なのだ。野菜がどれだけ多くの生命を支えていると思っているのだ。食は現世での魂を濁らせない為の基本じゃ」

「暇だって騒ぎだした奴に言われても説得力ねぇよ」

「う、うるさい!

大事な仕事だろうと暇なものは暇なんじゃ!」

面倒臭い奴だ。それにプルルさんはたまに様子を見に來るだけなのに、なんでこいつはずっといる?

「それじゃあ、もうお前いいから、帰って自分の仕事しろよ」

「それはそれでイヤじゃ! せっかくお前を理由に逃げて來たというに」

おい、本音駄々れだな。オレを気遣った話は何処へいった。

「いや、逃げんなよ。書さんたちが困るだろうが」

「いいんじゃ。あやつらはし困らせてやった方が!

あやつらは酷いんじゃ!

お菓子を食べながら仕事するのは非効率だの、

お菓子は経費ではないだの、

やる気がないなら辭めちまえだの、

文句言う暇があったら仕事しろだの、

休日も働けば仕事が減りますよだの、言いたい放題なんじゃぞ!」

……書さんたちの噂の出所って……コイツなんじゃね?

しかも、プルルさんストレートに休日返上しろって言ってんじゃん!

「わかったわかった。いてもいいから喚くな。暇だと思ってるのはオレも一緒だしな。

なぁ、実際問題、ここは多目を離したって問題ないんだから、極任務の方で、なんかした方がいいんじゃねぇの?」

「ふーむ。それに関してはお前を転生役所で働かせること自が、犯人たちへの揺さぶりだからのう。犯人たちがお前という餌に食いついてくれんことにはな」

「は? オレに調査しろって話じゃなかったっけ?」

「ああ。そう言っとけばお前は何かしらの行をするじゃろう。転生魂すり替え犯にしてみれば、お前のきは気になるはずだからな。お前を泳がしておけば、自然にそやつらが釣れるという完璧な作戦よ」

「……そうか? 仮にすり替えを企んだのが、転生してった魂以外にいたとしてだ。違う魂を現界に送ることで目的を達してたら、オレが転生界で事件のこと調べたって気にしないんじゃないか? オレがいようがいまいが、事件が発覚された時點で、お前が誰かに調査させるのなんてわかりきったことだしな」

「…… 」

おい……なんだその今気付きましたみたいな顔は?

「い、いや、犯人どもにとってお前が発見されたのは想定外だったに―――」

「それだったら、オレが待機してる間に、オレをなんとかしようとするんじゃね?

ほっといたってことは別の魂を送ることで目的を終えたか、送られた魂の単獨犯だと思うんだが」

「……天才か!」

お前がバカなんだろうとは、可哀想すぎて言えなかった。

「待て、落ち著け。儂の見立てが間違っていたなどあり得ん。

……そうじゃ、こやつをもっと積極的にかして、犯人どもの危機を煽ればいい」

マーシャが小聲で呟きながら、薄ら笑いを浮かべている。なんか嫌な予しかしない。

「よし、そうと決まれば即行じゃ!

ほれ、もたもたするな、行くぞ 」

「はぁ? 行くってどこにだよ?」

「そんなの決まっておろうが。現界だ。現界!」

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