《転生しているヒマはねぇ!》11話 報復

「ギャフン」

「訳のわからん言葉を口にするな! 意味なき言葉が力になると思うな!!」

「グハッ!」

オレは顔面にいいパンチをもらって、壁まで吹き飛ばされた。

本日2回目だ。しかも、マーシャ同様の魂魄を削る打撃である。時間が経てば回復していくが、あと數発短時間で食らえば、消滅する自信がある。

昨日、マーシャの持ってきていた期間限定発売の菓子を食いきってやったのだが、その報復は想像よりも遙かに恐ろしかった。

アイツの報復は、オレの補佐の正式な代であった。

プルルさんを完全にオレから遠ざけやがった!

しかも、それだけじゃない!!

「ダイチ、キサマはマーシャ様に役所で働くかと問われ、働きますと答えた。そうだな!?」

「はい! 左様であります、アイシス補佐殿」

「ならば、口だけの魂になるな! 魂魄をすり減らす覚悟で働け!」

「はい!」

「口だけになるな! お前の仕事はなんだ!?」

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「はっ! 主に植の魂のきを監視することであります!」

「ならば! 私ではなくモニターを見んか! 馬鹿者が!!」

「グハッ!」

こ、魂魄が通常の半分以下になった! ヤバい! ヤバすぎる!

口だけ殺しのアイシス、ヤバすぎる! マーシャの方が一撃の重さは上だが、コイツは手が早すぎする! オレを消すことにいっさいの躊躇をじん!

朝、出勤してきたら、モニター室にすでにコイツがいた。

誰ですかと尋ねたら、まずはおはようございますだろうがと毆られた。

その後に、補佐が正式にプルルさんからコイツに代わると説明をけ、マーシャの報復だとピンときたので、冗談でギャフンと言ってみたら毆られた。

そして今だ。

「失禮いたしました!」

背中に刺さる視線をじながら、オレはモニター群と向かい合う。

いつも通り投影設定を自に設定しているので、50のモニターたちは、次から次へと多種多様の緑を寫していく。とは言っても、相手は世界である。短時間ずつ投影していっても50のモニターで就業時間中に植すべての魂を投影できる訳じゃない。

モニターに投影されていない場所で、魂に異変が生じた場合はブザーがなり、自で映像がその魂の場所へと切り替わる。

モニター係はその映像を確認。記録し報告をあげる。

時間外の自警報裝置作中も同様だ。警報が鳴ると魂魄に直接連絡が來るので、出所して同じ作業をする。

何もないときは、退出する前にチェック表の問題なしの欄にチェックをれるだけだ。

ぶっちゃけると、自警報裝置をONにしてしまえば、この部屋にずっといる必要はないのだ。

だから、昨日のような突然の現界視察もできた訳だ。

ファンファンファンファ〜ン

おっと、お晝を報せるチャイムだ。

モニターを見ながら、考え事をしていたせいか、3時間があっという間に経過していた。

今日のお晝は役所の食堂で、ンボさんと食べる予定になっている。待たすのは悪いからな。できるだけ急ごう。

「ん〜〜〜〜〜〜〜〜♪」

オレは、大きくびをしてから立ち上がり、振り返った。

するとそこには殺し屋・・・じゃなかった、アイシスが仁王立ちし、オレをまっすぐに見ていた。

忘れてた。一言も喋らんから、すっかりコイツのこと忘れてた。

「え〜と・・・休憩ですよね」

「ああ」

アイシスはオレから目を逸らさない。

「あの〜、なにか?」

「……気がついたか?」

「は?」

「10時27分だ」

「え?」

「縦4橫7番のモニターだ」

「え、え〜と〜?」

「その時の畫像を、全モニターにして再生してみろ」

「……はい。わかりました」

晝休みなんだが、逆らうと、また魂魄を削られる。しは回復したが、危険には違いない。諦めて指示に従うしかなかった。

モニターに大きく映し出されたのは、鬱蒼とした森の中だった。

映像には巨大な豬の魔獣の群れも映っていた。

突然、先頭を歩いていた魔獣に蔓らしきものが巻き付いた。すぐに魔獣のが宙に浮き、近くの大きな袋狀の植の中に放り込まれた。異変に気付いた他の魔獣がその場から離れようとしたが、植からびた2本の蔓が、群れの間を走り抜け、瞬く間に7匹の魔獣を捕らえ、次から次へと袋に放り込んでいく。8匹もの魔獣が放り込まれた袋は大きく膨らみ形を変え、ほんのしではあるが、裂け目ができている箇所もあった。

なにより目を凝らせば見えるその植の魂のが、赤から赤黒く変していくのが見てとれた。

「食獣植『フォリグルトーン』。本來、に異常がでるまで獲を捕獲したりしない。よほど飢えていたのだろう。おそらく、年単位で補食できていなかったのではないかな」

「……」

「その様子だと、まったく気づいていなかったようだな。……キサマ、魂魄をすり減らす覚悟で働くと誓ったな?」

「……はい」

「口だけの魂になるな! 愚か者!!」

「グハッ!」

き、消えちまう! 午前でこれなら、オレは午後に絶対消滅する!!

「ブザーがならない程度の変化。そこだけを見れば報告をあげる必要はないかもしれん。だが、この森が、魂に変化をもたらす狀況になってきていることを、報告書に殘しておけば、送魂課がより適した魂を送り出す足掛かりとなり得るのだ」

「……」

「現界のヒト社會を経験したキサマにとって、この仕事は変化のない退屈な仕事かもしれん。だが、必要だからこそ生まれた仕事なのだ。責任を持って努めてもらいたい」

「・・・はい。申し訳ありませんでした」

アイシスはもういいと首を橫に振った。

「午後は私は來ないからな。頑張ってくれ」

「え?」

オレが驚くと、アイシスは、しばかり寂しそうな笑みを浮かべた。

「もうわかったと思うが、私はあまり用な魂ではない。こんなやり方でしか、キサマを補佐してやれん。

このまま午後も補佐すれば、私はお前を消滅させてしまいかねん。そんなことは私も、マー・・・、冥界もんでいない」

・・・マーシャは? お菓子か! お菓子のせいか!!

「誤解しないでもらいたい。キサマもこの仕事と同じだ。

必要だからこそ働いてもらっているのだ。

転生できなかったキサマにとって、今の環境は不本意だと思う。

キサマは他に生かせる場がないから、冥界に留まらせ、ここで働かせていると考えているかもしれんが、そうではないのだ。

役所も転生界も冥界も、キサマを必要としている。

なくとも私は、キサマがここで働いてくれていることで、救われている魂があることを知っている。

今はまだ無理かもしれんが、自信と誇りを持って生活してもらいたいと、心から願っている」

自分で言った通り、アイシスの言葉は不用でまっすぐだった。

ああ、なんだろうな? コレ? オレの魂魄からなにか熱いものが込み上げてくるよ。

「先程の件は、報告書に殘しておこうと思います! また、この後も、あの植の魂の変化に気をつけ、同様の変化が起きている地域がないかも注意し、監視を続けたいと思います!!!」

オレがそう宣言すると、アイシスの顔が綻んだ。

カ、カワイイ! 考えてみればアイシスもプルルさんと同じくオレ好みのヴェリーショート人! しかも、ブロンドのプルルさんに対して、よりオレ好みの黒髪ショート!!!

「よろしく頼む。だが、休憩はとれよ。息抜きは大事だからな」

「はい! お気遣い謝致します! 大佐!!!」

オレはビシッと敬禮を決めてそう言った。

「誰が大佐だ!!」

「グハッ!」

「・・・あ!」

吹き飛んだオレに、アイシスが慌てて駆け寄ってくる。

「き、消えるなダイチ!! 気をしっかり持て!!!」

うん。死ぬわ、コレ。

・・・いや? もう死んでんのか。

薄れゆく意識の中で、そんなことを考えてた。

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