《転生しているヒマはねぇ!》13話 參加者

監視課の課長の了解をもらい、オレとアイシスは資料室にて、マタイラの勉強會をやることとなった。

部のモニター室は、隣部屋の霊部モニター係のユヒョウさんという方が掛け持ちで、見てくれるらしい。ありがたいことだ。

この借りは、1日でも早く一人前になることで返そうと気合いをいれたのだが……。

「なんで、お前がいるんだよ?」

「知るか! レイラがここに行けというから來ただけじゃ!」

マーシャが、オレの隣の座席に座ってふんぞり返って言う。

「理由くらい聞けよ」

「聞けんわ! レイラのヤツ、朝からすごい機嫌が悪くてのう。魂魄が凍りつくかと思うくらい、冷え冷えとした口調で行けと言われたんじゃ。怖くて理由など聞けんわ」

よっぽど怖かったのか、マーシャは自分自を抱きしめてプルプル震えている。

「また、なにか怒らせるようなことしたんだろう?」

「またとはなんじゃ! お前が儂の何を知ってると言うんじゃ!」

わがままなお子ちゃまだということを知っている。

「あー、私から説明する」

アイシスが手をパンパンと叩く。

「ダイチ、すまない。お前が一人の時でも勉強できるような資料も、なんとかしようと思ったんだ。ただ、私はそういうのが、苦手でな。そういうのが得意な人……レイラ課長に魂魄通話で頼んだら、換條件を出されたんだ」

「……もしかして、それがコイツ?」

オレがマーシャを指差すと、アイシスは肩を落として頷いた。

「マーシャ様にも、マタイラの基礎知識を叩き込めとな」

「ちょっ、ちょっと、まてーい! なんで儂が今さらそんなものを學ばねばならんのじゃ!! お前たちの何倍もマタイラに存在しておるのじゃぞ! 儂にマタイラのことで知らんことなぞないわ!!!」

マーシャが機をバンと叩いて立ち上がる。

「ほおーーー」

アイシスのこめかみがピクリといた。

「では、マーシャ様。冥界から現界に視察に行く際の方法をお答えください」

「ハッ! そんなの簡単じゃ」

マーシャがドヤ顔で、ないを張る。

「こうグッと魂魄に力をいれて、軽やかにビョーンと跳んで、華麗にバッと著地するんじゃ!!」

空気の読めるオレは、アイシスの管の気持ちを代弁することにした。

「ブチッ!」

「あ! お前またブチッて言ったな! いったいなんなんじゃ? そのブ――――――」

マーシャが全てを言い終える前に、アイシスがマーシャの顔面を機越しに摑み、持ち上げる。マーシャの小さなが機の上にブラーンと浮いた。

「現界専用転移魔方陣で、転移する現界の座標を設定し、その場所に関連する神に連絡。連絡諾の返信がきてから、魔方陣を起させて転移するんだ、バカヤロウ!!」

「イタイ! イタイ! イタイ!! 顔が!! 魂魄が潰れる!!」

すごいなぁ、アイシスは。打撃だけじゃなく、アイアンクローでも魂魄にダメージを與えられるんだ〜。オレにもやり方教えてくんないかな?

「しかも、視察終了の連絡もいれてないでしょ! 神類部を通じて抗議文が屆いたんですからね!」

「べ、別に良いではないか!? あやつらが視察を拒否できる訳でもあるまいし!」

「・・・現界に関して、冥界が権力を行使するのは魂を送ることにおいてのみ。それ以外のことは全て現界に生きるものに任せ、彼らの意思を尊重する事。現界との関係を良好に保つこと。

誰のお言葉ですか?」

じたばたしていたマーシャが、急に大人しくなった。

それを確認したアイシスはマーシャを椅子の上に降ろした。

「反省してますか?」

「……した」

アイシスの言葉に、マーシャは頬を膨らませてはいたものの、頷いた。

「よろしい。それでは、私がダイチに教えている間、コレを読んでいてください。後でテストしますからね」

そう言ってマーシャの前に一冊の本を置いた。

『今さら人に聞けないマタイラの一般常識   モデストゥス著』

あー、冥界にもあるんだな。このての本。

「な、なんじゃこれは?」

「ダイチににつけてもらいたいのは知識。マーシャ様ににつけてもらいたいのは常識です。テストで満點取るまで帰しませんからね。あと、勉強中はお菓子止です」

「橫暴じゃ!」

「反省したというのは、口だけですか?」

アイシスが、拳をパキポキと鳴らす。

「しました。地獄界の浄化池よりも深く!」

マーシャの言葉に満足げに頷く。

おお! 口だけ殺しのアイシス!!

「さて、ダイチ。始めるのが遅れてすまない。

気を取り直して、勉強を始めようか」

アイシスが勝者の笑みを見せそう言った。

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