《転生しているヒマはねぇ!》15話 非日常
勉強會の翌日。本日は休みである。
オレは先週も訪れた、居住界にある図書館に來ていた。
先週借りた本を返す用事もあったが、今日もここで勉強をするつもりだ。
ただし、昨日のような常識ではなく、非常識の勉強だ。
オレの通常業務に必要なのは、日常との変化に気付く、常識を基盤とした観察力だ。
これに関しては、アイシスが凄く頼りになる。超真面目な努力家だからな。チキュウのことだけじゃなく、オレの生活していたニホンの知識も持っていたから、事前に自己學習していたことが容易に想像がつく。
しかし、オレの極任務に必要なのはそういった力ではないだろう。これまでの転生界では考えられない事件なのだ。こういった非日常的な事象を解決するのに必要なのは常識じゃない。
非常識を基盤とした発想力になる。
アイシスは自分でも言っていたが、魂魄がいろんな意味で、不用だからな。な思考が必要そうなこっちの調査ではあてにしない方がいい。
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むしろこの件を相談するならマーシャだな。
アイツも不用だが、頭は固くない。と言うか、自己チューすぎて常識に対する抵抗力が半端じゃない。
昨日は結局、午後から、6回くらいテストをしたのに1度も満點を取れずに殘業が確定し、アイシスが頭を抱えていたからな。
一緒に視察に行った時も、オレの意見をにけれていた。なのに馬鹿だから、今回の件の黒幕なんて絶対に無理だ。とても殘念な理由で信用ができる。
うん。極任務に関してはマーシャが頼りに……しないまでも、オレの考えをまとめる為の話の聞き手をまかせられる。
実際のところ、オレは極任務の解決を急がなきゃいけないと思っている。長引けば長引くほど解決が難しくなるとかいう問題じゃなく、オレ自の問題だ
オレはきっと、自分で納得のいく果がだせないと悟ったら早々に諦める。解決はおろか、他のこと全ても。
生きていた頃と同じように……。
死のうとは思わなくとも、もう苦しみたくない、悩みたくない。殘りの人生をただ靜かに暮らしたい。20代半ばで、すでに終活に取り組んでいるような生き方だ。
幸い、今のオレのモチベーションは高い。
アイシスやプルルさんのおかげだ。
ビバ! 黒髪ショート! ビバ! ブロンドショート!
ただ、これもきっと長持ちはしない。すぐに今の生活……いや、生きてるのとは違うから、魂活か。この魂活にも慣れてしまうだろうな。との仲の進展も、高嶺の花と諦めていくだろう。
仮の姿は魂魄の狀態に左右される。
今は、魂活の珍しさ、との流で、若い姿を保っているが、このままでは、ンボさんの外見年齢に近づくのは時間の問題。この間、すれ違った老人のようになるのもそう遠くはない未來だ。20代半ばで終活にった男だからな。
だからこそ結果が必要だ。事件の解決とか、ショートカットとの仲の進展とか、オレ自が自分で自分を認めてやれるような結果が! それがあれば、今の仮をキープするのも夢じゃない!
でも、後者は無理だ!! ヘタレだからな!!!
だから、前者で頑張る!!!
オレは返卻窓口に、借りていた歴史書を返卻し、再度歴史コーナーへと向かった。オレが借りていた本は、マタイラ全の大まかな歴史にれているが、今回オレが知りたいことに関しては、ほとんど載っていなかった。
「え~と、ハイエルフ、ハイエルフっと……」
とりあえず、一番それっぽい「エルフの歴史とヒトとの関わり」を手に取ってざっと容を確認したが、オレが知りたかったことに関しては、1行ほども書かれてはいなかった。
オレが知りたいのは、10年前だ。ハイエルフたちがソレイユ王子にクロスジャミールを送ることになった経緯だ。
借りた本には、送られたことすら記載がなかったし、資料室の資料には、何故その魂がそこにあるのかという記述だけ。おまけ程度にソレイユ王子が『森にされし子』と呼ばれることになったことが書かれていたくらいだ。
當時の植部の監視課にとって、この寄贈はとても驚きだったのだろうな。魂の変化でもないのに、記述として殘したくらいだから。
対して、人類部の資料には何ら特別な記載はなかった。魂の変化がなかったからだろうな。あんな他種族や魔獣が一ヶ所で生活するような異常な狀態だというのに……。
ん? いや、待て。ウェイトゥ!!
マーシャが気になることを言っていなかったか⁉
そうだ。思い出した。
オレにはモニター室のモニターを通してしか見えない現界の魂が、マーシャには生でも見えるらしく、オレの魂とは全然似てないと言ってたじゃないか!
王子のに宿る魂は本來、オレだった。
10年前王子に誤って今の魂が注されたのは、オレの魂と似ていたからってことだった筈だ。
起きてるじゃん!! 魂の急激な変化!!
なんで人類部の報告書にあがってないの!?
モニター室の監視裝置や急警報裝置が、魂が急激な変化した際に反応するのは、裝置に、その存在に宿る魂が登録されているからだ。つまり、裝置に登録されている魂は、今、ソレイユ王子に宿っている魂ということだ。
大問題だろ、コレ!
もしかして、極で調査してる場合じゃないんじゃね?
マーシャに特別調査か何かに任命してもらって、人類部を直接調査するべきなんじゃ……。
オレが、自分でたどり著いた結論にあたふたしていたら、不意に後ろから聲をかけられた。
「こんな所でウンウン唸って、どうしたんですか? ダイチ監視♪」
こ、こ、こ、こ、こ、このこの聲は!
オレは、首が引きちぎれるんじゃないかって勢いで、振り返った。
「お久しぶりです、ダイチ監視。私のこと覚えてますか?」
オレの角とよく似た角を、額から生やしたブロンドショートの天使が、そこにいた。
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