《転生しているヒマはねぇ!》18話 面談

「おお! ダイチ! よく來てくれたのう!!

ささっ、遠慮せずとも良い。そこのソファーに、ドーンと腰かけると良い」

オレとチェリーが執務室にると、諸手を上げて歓迎された。

大量の書類が乗った執務機の向こうには、笑顔のマーシャが椅子に腰かけ、機の両脇には二人の人さんが立っていた。

片や、額に太く短めの3本角。青い髪を腰までばし、き通るような白いのスレンダー

片や、角はないが、背中に白い翼を持つ小麥をした、マーシャ並みに小柄な。背中の翼の方が大きいくらいだ。この人は、眼鏡をかけていた。冥界では初めて見る。

 二人に共通するのは、笑顔のマーシャに冷たい視線を送っていることだ。

「書類に目を通しながらでも、ダイチさんのお話は聞くことができます。その方が効率的です」

と、スレンダー

「仕事量に見會わない給料を払うのは経費の無駄。所長の給料9割カットを提案する」

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と、眼鏡

うん。二人が誰かは、たぶんわかった。

「な、なにを言っとるんじゃ、お前たちは! ダイチと話すのは、転生魂すり替え事件に関わる大事な案件じゃ! 片手間でやって良い仕事ではないわ!

ほれほれ、お前たちはさっさと出ていかんか!」

オレは必死になるマーシャをなだめようと、らかい口調で語りかけることにした。

「マ~シャさまぁ~、大丈夫でございますよ。わたくしめが今回語りますのは、すり替え事件には関係してございますが、おそらくかなりの外枠と思われますので、だ~いじな仕事をされながらで結構でございますぅ~。

それにお二人にも、この場にいて頂きたいと思います~。今後、マーシャ様が、ムダーーーーーーに現場に來なくてもいいように計畫をたてて頂けますから~♪」

オレの言葉に、マーシャが愕然とする。

「キ、キサマ! 裏切ったな! しかも、なんじゃ、その気持ち悪い話し方は!!」

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嫌がらせに決まっている。

「ウフフ。ダイチさんは、狀況をよくわかっていらっしゃいますね」

「うん。モニター室に閉じ込めておくのは、勿ない人材。配置転換を提案する」

これからする話には、まず二人は直接的に関與はしていないだろうから問題ない。

それに、すり替え事件の方にも完全に無関係なら、心強い味方になってくれそうだし。

「クゥ~~~ッ! もう良いわ! さっさと話せ、儂は忙しいんじゃ!」

通常業務をサボるのに失敗したマーシャは、途端に不機嫌になった。

ホント、お子ちゃまだな。

「わかった。まず、本的な確認になるが、ソレイユ王子のに、オレではなく別の魂が送られてたのは、ミスによる事故ではなく、何者かの意思が介している事件で間違いないと思う」

「そんな事、最初からわかりきっているだろうが」

すっかりご機嫌斜めのマーシャが、書類に視線を落としたまま、ぶっきらぼうに言って來る。

「だから、確認だって。出した結論が思い込みじゃなくて、事実関係から導きだした答えだと再確認するのは誤認を防ぐのに必要な作業だ」

「はい。正しい判斷だと思います」

スレンダー――――――レイラさんが同意を示してくれる。

オレは追い風をけ、話を続けた。

「え~と、とりあえず數人から聞いただけの知識だから、間違っていたら、その都度訂正してくれ。

まず、オレの場合は、異世界の転生魂だから、各異世界にの転生界に通じる転移門の前で、異世界部の迎魂課付係が出迎える。

昔は異世界の転生界から付き添いの係員も來ていたが、今は転生魂単獨で來ることが多い」

「うん。今はどこの冥界も、地獄界以外の仕事のなりて手の減が深刻化している。刺激や遣り甲斐が不足し、魂魄の磨耗、消滅といった事案も発生してしまっている」

眼鏡――――――ラヴァーさんが補足してくれる。

付係は、資料とやって來た魂があっているかを確認。各擔當部の送魂課選別係に引き渡す。

その時に、二人で資料との相違確認。

選魂係から同じ課の注魂係へ引き渡し。ここでも二人で資料での相違確認。注魂係が、現界で注魂するの前で、最後の相違確認を行い、注魂」

言葉を切ったが、今度は誰も口を挾んでこない。ここまでは問題ないようだ。

「オレは、ンボさん……付係に確認された後、選別係が迎えにくるのに、かなり時間がかかるということで、役所の一室に待機することになった。

これはけ渡しに時間がかかる際のマニュアルとして記載があるらしいから問題ないと思う。

ところが、オレが待機している間に、別の魂が引き渡され、王子のにつつがなく注魂された。

オレが直接に當時の話を聞けたのは、付係だけだけど、彼から聞いた話では、10年後にオレと再會するまで、異世界の魂を部屋に案した事が、すっかり頭から抜けていたってことだ。

ここで問題になるのは資料だ。オレがマタイラに到著したときに使われた資料と各係での魂け渡しの時とで別の資料が使われていたってことだ」

「全員がグルじゃなければ、だけどねぇ」

これまで、黙っていたチェリーが橫やりをいれる。

「それにしては、現在での連攜が悪すぎるな。どっちにしろミスによる事故ではないって結論には変わらないと思う。

それと、現在殘っているのはオレの資料だけ。引き渡しに使用された魂の資料はなくなっている」

「もしくは、そんな資料は初めからなかったのかもしれません。ダイチさんを案した付係が、案した事をすっかり忘れていた事から推測すると、何らかの魔法が使われた可能があります」

「そうさねぇ。魂自を間違わせるのは難しかろうがねぇ。資料の方に幻の魔法をかけちまうってのはありえるさねぇ」

レイラさんの意見にチェリーが付け足す。

「なるほど。そういう可能もあるのか。

でもその場合でも疑問は同じだな。いつすり替えやら魔法やらが使われたかだ」

「話を聞く限り怪しいのは付係。人類部側の資料は事前に細工可能。でも、異世界部の資料は、君を確認後、付係がずっと持っていたはず」

ラヴァーの言葉を聞いて、オレは焦った。

「い、いや。ンボさんはそんな事をできるような――――」

「大丈夫だよ、ダイちゃん。関係者のことは調査済みさ。アレはそんな大それた技もつても度も持っていない魂さね。ま、もう一度詳しく當時を思い出してもらう必要はありそうだけどねぇ」

おお! ンボさんの人柄が幸いしたか。良かった。小心魂萬歳!

「ああ、それはオレもそう思うよ。

あと気になるのは、オレが初めてこの部屋にいた時にいた骸骨みたいなおっさんの言った言葉だ」

「ホボストじゃな。そやつが人類部の部長だ」

マーシャが書類にサインしながらつまらなそうに言った。

そうか。アイツが人類部の……。やっぱりすり替えの黒幕じゃなさそうだな

「アイツは魂姿のオレを見て、こう言ったんだ。

『送った魂に似ている』とね。『資料にある魂に似ている』とは言わなかった。部長なら、実際の魂のけ渡しには參加してないだろう? ならアイツが魂を見たのは送った後になる。

でも、マーシャと視察に行った時に見た王子の魂は、オレとは全然似てなかった」

「え? ちょっと待つのさ、ダイちゃん。

ダイちゃんと今の王子の魂って似てないのかい?」

チェリーが驚いたように聞いてくる。なにか問題でもあるのだろうか?

「あ、ああ。そうらしいぞ。オレは見れなかったけど、マーシャは直接魂を見れるんだろう? オレとは全然違うって言ってた」

「うむ! 儂の目に狂いはない!」

「……マーシャ様。なんでそれを教えてくれないのさぁ。資料の魂と全然違うなら、魂の急変の報告もセンサーも作してないって理由で、人類部のモニター室を強制捜査できたじゃないのさ〜!」

「・・・あっ」

マーシャのサインを書く手が止まり、三人の書が一斉にため息をついた。

目に狂いはなくとも、頭が狂っていたようだ。

「え~と、それはじゃな。きちんと理由があってだな――――おっ!魂魄通話がった! この話はまた後じゃ!」

怒られるのが、先延ばしになっただけなのだが、マーシャは解決したかのようなスッキリした顔をする。

「おう。お前か。良いタイミングじゃ。お前に聞かねばならんことができてのう。……なんじゃと?! それは真か!

……馬鹿を言うでないわ!!!」

マーシャの怒鳴り聲が執務室に響く。

「なんの解決にもなっておらんわ! 到著次第すぐに儂の所に連れてこい! 到著次第すぐにだ! さもなければ、キサマの魂魄消し飛ぶと知れ!!!」

通話が終わったらしく、マーシャが椅子の背もたれに、ドッと寄りかかる。

気がつくとオレは冷や汗をかいていた。オレだけじゃない。三人の書もだ。

マーシャがを剝き出しにすると、ここまで凄いのか……。

うん。からかうのは程々にしよう。

「マーシャ様。どうなされました?」

一番早く衝撃から回復したレイラさんが、マーシャの顔を覗きこみ尋ねる。

「ホボストからじゃった。……ソレイユ王子の魂が冥界に來たそうだ。間もなく転生界に到著する」

「え? それって、つまり……」

「……ああ。ソレイユ王子が死んだということじゃ」

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