《転生しているヒマはねぇ!》21話 進展
「……暗殺と病死、半々か」
「モニターを見る限り、ですけどねぇ。暗殺としたら毒ですよ。王子に近しい魂の、過去の映像を細かく調べれば、怪しい奴はわかるかもしれないけどさ。やるかい?」
「いや。すり替え事件との関係があると証拠でも出れば別じゃが、それまでは、現界の出來事には不干渉じゃ」
人類部への立ちり調査が一通り終わり、プルルさんを除く三人の書たちが執務室に戻って來ていた。
「結局、ホボストたちは問題を隠蔽しておっただけか」
「はい。ミクロ課長は、魂を王子のに送ってすぐに、本來、送るはずだった魂と注魂した魂が違うことに気付いたそうです。連絡をけたホボスト部長は、ここで報告ではなく、事実の隠蔽を謀りました。冷靜に考えれば、ダイチさんが見つかれば、すぐに発覚すると気付くはずですが、當時はかなり慌ててしまったようですね。
本人は部長になってから、千年近くも問題なく続いていたものがミスによって、崩れていくのが怖かったと証言しております。そこで、ミクロの昇進を後押しして口止め、モニター室の監視裝置の魂データの改竄。これらの作業をミクロと當時のモニター係の三人で行ったと。
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尚、このモニター係は退職し、現在は居住界で飲食店『いーと魔鬼魔鬼』を経営」
「ぶっ!!」
「なんじゃ、ダイチ。報告中じゃぞ」
「わ、悪い」
思わず吹き出してしまった。
あそこ過ごしやすいんだよな。なくなんないでしいけど……。
「発覚を恐れ、10年間転生役所に留まっていたとのことです。ミクロ課長の証言も概ね同様です。
ただ、魂のれ間違いに関しては、ミスではないと主張。注魂するまでは間違いなく、資料と魂は一致していたと。
そして、次の証言が最も大事と思われます。
注魂した魂の資料は一切なく、け渡しに使用したも現存するもダイチさんの資料しかないとのことです。
データ改竄に用いた魂データは、実際に注魂した魂をモニタリングしたを使用したため、あの魂が、前世はどこの世界で何をしていたのかは不明です」
レイラさんの報告が終わると、マーシャの顔の険しさが増した。
「資料には手を加えず、魂の方を誤魔化したと? むぅ~。資料の方をいじる方がはるかに簡単だと思うのじゃがな。……とりあえず、その件はいったん置いておく。次、ラヴァー」
「他の職員の直接的な関與はないもよう。ただ、漠然とではあるけど、皆、不自然さはじていた。でも皆もホボストと同じ。無理に変化を作りたいとは考えなかった。出來ることなら今の作業を淡々と続けていたかった。その先に魂魄の磨耗や消滅が待っていたとしても」
マーシャは今度は大きくため息をつく。
「どんな問題の本にも、必ずと言って良いほどそれがあるの。
変化に対する恐れの克服。一朝一夕でどうにかなるとは思っておらんが、冥界の作業魂不足改善の為にも、変化を、刺激を恐れぬ環境作りは続けていかねばならんな」
「同意。けの魂は刺激に慣れてしまうのも早い。常に改善をしていくことが大事。居住界の代表の1人として協力は惜しまない」
「うむ。頼りにしている。……しかし、ここでの記憶を殘したままの転生を許可してくれれば、一番良いリフレッシュ休暇になるんじゃがな」
「マーシャ様、それは……」
マーシャの愚癡ともとれる呟きに、レイラさんが困ったような表を見せる。
「わかっておる。現界の崩壊を招けば、より狀況は悪化する。現界不干渉。これが現界を存続させるのに適している。……わかってはおるんじゃがな」
苦笑しつつ、頭を掻く。
「まぁ、どうせ冥界暮らしの引きこもりが、好き好んで記憶を殘したまま現界に行くはずもないしの。さて、次、チェリー。」
「はいはい。でも、正直なところ、王子の件も含めて、これといった収穫はなかったねぇ。ホボストがやったのは隠蔽だけってのを裏付けたぐらいかねぇ。データの改竄をやったのは、魂を送った後と記録にも殘ってたし、他に工作した形跡も見られなかったよ。
なくとも、ホボストが転生魂すり替えの主犯もしくは共犯と示すようなものは何も出てこなかったのさ。
むしろ問題なのはミクロの方かね。もちろんコッチも何も出てきてないんだけど……」
「ミクロの証言とマーシャ様が話した王子の魂の狀態の矛盾」
ラヴァーの言葉に、チェリーが我が意を得たりと頷く。
「そうさ。資料がダイちゃんのものなら、前世の記憶は消さない。でも、王子の魂は前世の記憶を持っていなかった。
これが初めての現界行きだったならともかく、マーシャ様の見立てじゃ違うんだろ?」
「違うな。あれは、かなり転生を繰り返しておる。転生のベテランじゃな」
「だとしたら、消したのは當時の注魂係のミクロしかいないだろ? 専用の裝置を使ってやらなきゃならないんだからさ。裝置にったら自分で作はできないだろ」
「……そうとも限らん」
「「「え?」」」
チェリーだけでなく、レイラさんとラヴァーさんも首を傾げた。
「裝置を使わずに記憶を消せば良いのだ」
「まさか……」
レイラさんが、信じられないものを見るような目でマーシャを見る。
「うむ。自分で自分の魂魄を削れば良い。表面を毆るのとは違うから、多技がいるがな。もしくは魂分けの要領で、前世の記憶を分けてしまうという手もあるの」
「理解不能。一歩、間違えれば存在が消える」
「危険を犯すだけの理由があったのかもしれん。余たちが知らんだけでな」
「「「余?」」」
気にりやがったな、コイツ。
「レイラ。ミクロの仮は老けたか?」
「え? ええ、そうですね。ミクロ課長の尋問はパチョビ警備部長にやって頂きましたが、出頭してきた時よりも、10歳は歳をとったように見けられました」
「左様か。余はミクロの証言を信じて良いと思う。奴は強い魂ではなかった。尋問を平然とは乗り越えられまい。
とにかくじゃ。今回の件では、犯人どものしっぽは摑めなかったが、わかったこともいくつかある。
王子の前世の記憶が甦れば、また進展もしよう。
今後も調査は継続するから、全員そのつもりでおるようにな」
マーシャが締めくくるようにそう言った。
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