《転生しているヒマはねぇ!》24話 臨時休暇

「いつまで寢ておるか!!! このくそボケがーっ!!!」

オレはノラの奢りで、さんざん飲み食いした翌日、とても不愉快な魂魄通話からの罵倒で目覚めることになった。

魂の存在になった今、寢る必用はない。なんたって、この間まで10年間起き続けていたくらいだからな。

それでも、オレは深夜から朝にかけては、睡眠を取ることにしていた。

容と健康の為……というか、生活にメリハリをつけようと思った訳だ。く時はとことんく。休む時はひたすら休む。

魂魄の磨耗を、仮の老化を防ぐのに良さそうなことはなんでも試してみるに限る。

オレは時計を確認する。

6:00。まぁ、いつもより1時間早いだけだ。

9時出勤だからな。職場への移は、ほぼ転移なので時間はあまりかからない。これまた取る必要のない朝食を食べても、仮だしなみを整える事を計算にいれても、7:00に起きれば充分に間に合う。

しかしながら、時間ギリギリまで寢ていたいという強い求もないので、早く起こされたことなど怒るようなことではない。

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だがしかしだ。起こし方というものがある。

こんなお子ちゃまのキンキン聲で、罵倒されながら起こされても嬉しくない。

オレは課長じゃないぞ!!

「誰だ」

わかってはいたが、オレは反抗を試みる。

「余だ」

「王子か?」

「儂じゃーっ! マーシャじゃ!」

フン、一度で元に戻したか。堪えのないお子ちゃまめ。

「最初からわかっとるじゃろうが! いちいち確認するでないわ!」

魂魄と魂魄の繋がりだからな。攜帯やスマホと違って、なりすましようがない。

「十分の一は冗談だ」

「む。冗談ならいいんじゃ」

クッ! 殘りの十分の九をスルーされた! 素でスルーされた!

お馬鹿には高度すぎるテクニックだったのか……。

クソッ。なんだこの地味な敗北は……。

「それで? なんのようだ、こんなに早く。今から出勤してこいってか?」

反抗に失敗した不快をおくびにも出さず、平然と問いかける。

ウン。大人だな、オレは。

「いや、逆じゃ」

「逆?」

「うむ。お前は今日出勤しなくてよいぞ。昨日の臨時會議で各部のテコれが決定しての。本日は予定されてた送魂しか行わん」

「え? 迎魂ってしなくて大丈夫なの?」

「あくまで転生界へのれを休むというだけじゃ。現界で死ねば、勝手に冥界の海で漂っておるからの、後日まとめて回収すれば良い」

「ふ~ん」

「とにかく、モニター室も自にするからの。お前では、他の者のフォローもできん。來るだけ邪魔じゃ」

ちょっと腹立つ言い方だが、事実なので仕方ない。

「だが、お前には別にやらなければいかんことがある」

「なんだよ?」

「見舞いじゃ」

「見舞い? 誰の?」

「アイシスに決まっておろうが! あやつ魂魄不調が回復せんみたいでの。今日も休みなんじゃ。心配じゃが、儂らは暫く手が空かん。

だから、アイシスが魂魄不調を起こした原因であるお前が、責任をもってなんとかしてこい」

「オ、オレが原因なのか⁉」

や、やっぱり、図書館でのプルルさんとの角合わせが問題だったのか⁉ プルルさんがついていったから大丈夫だろうと思っていたが、オレの不潔は拭えなかったのか⁉

「お前、しらばっくれるつもりか? 儂の報網をなめるなよ!

セクハラ、パワハラ、モラハラのオンパレードで、補佐を4人も代させ、アイシスが休まねばならん程のダメージを魂魄に與えたのはお前であろうが!」

……。

「アホか、お前は⁉ 全部お前が手配したことじゃねぇか!

なんで、お前が噂に振りまわされてるんだよ! しかも、二人は臨時で、一人はお前だろうが!

だいたいな。噂がホントだったら、そんな奴をひとりで被害者の所に見舞いに行かせようとするんじゃねぇよ! 逆効果じゃねぇか!」

「ぬ? そうか?」

コイツ!

「どちらにせよじゃ。お前、アイシスには世話になった認識あるんじゃろう?」

「もちろんだ。くろ……アイシスさんなくしてオレのモチベーションの維持はあり得ねぇ」

「だったら決まりじゃ。行ってこい。お前、居住界の一番高いマンションを知っておるか?」

「ああ。あの景観ぶち壊しのアレだろ」

「なっ! アレは儂が材料を創造し、5人の匠が心を注いだ超高級高層マンションなんじゃぞ‼」

「いやいや、もっと街全の事を考えて建を作らなきゃ駄目だろ? あれじゃあ観客はがっかりだ」

そんなものいないけどな。冥界に冥界の住人以外が、気軽に遊びに來れたら、それはもう冥界じゃない。

「観……客?」

そう言って、マーシャが押し黙ってしまった。とても珍しい。

「お、おい。マーシャ? どうした? 大丈夫か?」

「それじゃぁぁぁぁ‼」

マーシャの意思が、オレの魂魄全に響き渡る。

だ、打撃並みにきつい。

「コ、コラ!!」

「おっと、済まぬ。いやしかし、流石は異世界の魂じゃ。目のつけどころが違う。クフフ、ラヴァーにも相談じゃな。面白くなりそうじゃ。ありがとう、ダイチ。心から謝するぞ」

突然の率直な謝の言葉に、オレはかえって戸う。

「い、いや。よくわかんねぇけど、役にたてたようで良かった。あ、そうだ。話は変わるけど、オレさ、昨日ノラって奴に會ったんだけど……」

「ああ。ノラノラリか。癖の強い奴じゃが、繋がりを持っておいて損のない魂じゃ」

「そっか。そいつにさ、現界でソレイユの死んだ件で、意見を寄稿してしいって依頼されたんだけど、やってもいいかな? もちろん、魂すり替えに関しては伏せてだからさ」

「かまわんぞ。むしろ、儂は新しいことを始めようとする魂を心から応援するぞ。すり替え事件も特に隠す必用はない。お祖父様にすでに事の顛末は伝わっておるからな。

お前から発表して紙面を賑わせてやるのも一興じゃろう」

「そうなのか? まっ、いいや。わかった。それじゃあ、オレは準備できたら、アイシスさんの見舞いに行って來るよ」

「うむ。マンションの18階4號室がアイシスの部屋じゃ。よろしく頼むぞ」

「了解。そっちも頑張れよ」

オレは通話を切り、ひとびすると、いそいそとお見舞いへ行く準備を始めた。

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