《転生しているヒマはねぇ!》31話 の付き合い

「ソレイユ、面會だ。開けるぞ」

「え? あ、はい。どうぞ」

部屋の中からか細い返事が返ってくると、オレをここまで案してくれた魂宿所所長のドムスさんがドアの鍵を解錠し、ドアを開けてくれる。

「終わったら、そこのインターホンを使ってくれ。時間は気にしなくていい。予定がある魂ではないし、マーシャ様からの依頼でもある」

オレが部屋にりきると、ドムスさんはそう言ってドアを閉めた。外から施錠する音が聞こえる。

オレは魂の姿で、ソレイユの魂と向き合う。

の時は、見下ろしていたから、気づかなかったけど、魂で向き合うと、コイツ、けっこうデカイ。おまけに、なんかすごいキラキラしているうえに、き通っていて、なんかとても綺麗だ。

見とれていてなにも言わなかったオレに、不安を覚えたのだろうソレイユが、話しかけてきた。

「あ、あの〜、どなたでしょうか? あ、まさか!」

「あ〜、悪い。オレはホーレイトにいたお前の仲間じゃない」

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「あ、ご、ごめんなさい。早とちりしてしまって」

言葉使いが、すっかり王子じゃなくなってるな。まだ、こっちに來て2日しか経っていないが……。

まぁ、來て早々にけっこう脅されたし、冥界じゃ誰も王子扱いなんてしないだろうからな。

それとも、魂の姿だから、これがコイツの本質なのかも。

「いや、これまでこっちじゃ、仮を持った奴としか會わなかったんだろ? それが急に魂のままの奴が會いに來たら、もしかしたらって思っちまうよな。

すまない。オレの配慮が足りなかった」

「いえ! 気にしないでください! 私も特に期待してたという訳ではないんです。だって、それって相手の死をんでいるという事になりますよね」

10歳の子供だったにしては、考え方がしっかりしてる。王族としての教育のせいか、それとも前世が影響してるのかはわからないが。

「そこは深く考えなくていいんじゃないか? 大切な相手に會いたいと願うのはおかしなことじゃないさ」

「……ありがとうございます。……それであなたは?」

「オレはカワマタダイチ。ダイチと呼んでくれ。ほら、マーシャっていう偉そうなお子ちゃまと會ったろう? その時、マーシャの隣にいた、額に1本角が生えていた男がオレだ」

「ああ、そういえば、そんな人が……って、え⁉ ! はどうしちゃったんですか! 死んだんですか⁉」

驚いた様子のソレイユを、まあまあと落ち著かせる。

「心配すんな、前から死んでる。

冥界ではさ。こっちの姿が本當なんだよ。管理している側もな。

ただ、事があって仮のを活用しているだけなんだ」

「……そうなんですか。でも、なんで、わざわざその姿で?」

「魂の姿ってさ、噓とかつけないんだって。オレはお前と會話したかっただけなんだけど、お前だけがそういう狀態って不公平だろ?」

「……お気遣いありがとうございます。なんだか、ダイチさんって他の方とし違いますね。これまで、忘れている記憶を戻せって一方的に言ってくる人ばかりで……。

もっとも、私はこちらに來てから、4・5人の方としか出會っていないですから。ダイチさんのような方の方が多いのかもしれませんが」

「いや、オレが変わり者ってのは間違いない。

オレは、元々この世界の魂じゃないんだ。異世界からこのマタイラって世界に送られて來たんだ」

「そうなんですか。あ! もしかして、私も!」

「可能はある。ただ、お前の資料が冥界で見つかっていないから、お前の記憶が甦らないことにはわからない」

ソレイユが殘念そうに揺らめく。

「そう……ですか……。結局、私にあるっていう記憶次第なんですね」

「まぁ、それは焦っても仕方ないさ。お前だってわざと思い出してない訳でもないんだろ?

んで、いきなり話が変わって悪いんだけど、もし嫌じゃなかったらさ、お前の生きていた時の話を聞きたいんだ。

替わりになにかしてやれる訳じゃないから、無理強いはできないんだけど……」

ソレイユが橫にフルフルと揺れる。

「かまいません。むしろ、前世の記憶って言われなくてほっとしています。

それに、生きていた時のことで、私も聞いてみたいと思ったことがあるので」

「へぇ、どんなことだ?」

「……ダイチさん。貴方はただのヒトが、魔獣や異人種に無條件で好かれるなんてことあると思いますか?」

お互いに目がついていないのに、オレは真剣な眼差しをソレイユから向けられているじがした。

「ご存知かもしれませんが、私は不思議と他者に好意を抱いてもらえることが多かった。でも、そういうことが異種族に及ぶというのは、普通じゃない気がして……。

城に保管されていた文獻には、そういった例は確かにありました。

ただそれは、神や霊の加護をけた者に限られています。

殘念ながら、私はそういった加護はけていません。彼ら自の予言を信じたハイエルフたちに、クロスジャミールを贈られただけです。

だから、マーシャ……様でしたか。あの方に私のる魂は、本當は私じゃなかったと聞かされてから、考えていたんです。

彼らが好いていたのは、本當は、私ではなかったのじゃないかと」

オレはマーシャと視察に行った時の事を思い出す。

9匹の魔獣と5人の人類に囲まれ、笑っていたソレイユ。

あの景を造り出していたのがコイツでなかったら、いったい誰だというのだろう?

を失っても、私の意識はこうして冥界で続いている。この事から、私の本はこの魂だと言えます。

更にあのは、本來別の魂がる予定だった。

それならば、私の周りに様々な種族を集めていたのは、私ではなく、あのだったのではないかと考えたのです」

……ああ、なるほどね。そういう考え方もありか。

でも、コイツの魂がから離れたとたんに、城からあっさりといなくなった護衛と魔獣を考えると、やっぱり、彼らを惹き付けていたのは魂の方じゃなかろうか?

オレは、護衛と魔獣のその後を教えて、今の意見を述べた。

「逆かもしれません。の他者を惹き付ける魔力のようなものを発させるには、魂が必要で、その魔力が切れた為に、彼らは正気を取り戻した」

……なんかスゴくない? この子。

「ところで、タキトゥスとクルデレはどうしていますか?」

「えーと、名前言われてもわかんないんだが、あれか? 執事服っぽい服著てた爺さんとメイド服著てたエルフのねぇちゃん」

「はい。たぶんそれです。ご存知なんですね」

「いや、一度お前と一緒にいたところを見ただけだ」

「そうですか。……タキトゥスは、私が生まれる前から城に仕えていた者です。い頃からずっと私の世話をしてくれている者で、私が最も信頼していた者でもあります。

クルデレは……わからないんです」

「は? いやいや、城で素のわからん奴を雇ったりしないよな」

ソレイユが、頷いてるじがした。

「生きている時は、なんの疑問も抱かなかったのです。

それが死んで彼から距離ができた今、彼の存在が不思議で仕方ない」

「……調べてもらうわ。役所は現界不干渉貫いてっから無理かもだけど、もうひとつツテがあるから」

「ありがとうございます。

でも、こうしてしずつ時間が経過していくと、生きていた頃の自分が、いかに流されて生きていたのかを思い知りますね。

ハイエルフの預言にしろ、自分の力にしろ、環境にしろ。

疑うこともなく、そういうものなのだとれていた。

私の周りはこんなにも不思議だらけだったのに……」

言ってる言葉は懺悔のようだが、言葉は弾んでいるようにじた。

「面白いか?」

「面白いです。殘念なのは、死んでしまった私には、もうこの謎を解き明かす機會がないことです」

本當に面白いな。コイツの話したこともだが、コイツ自もだ。

前世の記憶が戻っていないのは、本當だろう。だが、死んで立場やら環境から解放されたコイツは、どんどん本來のコイツになってきているに違いない。

前世も含めて、長い年月をかけて形された、この魂の本當の姿に……。

それに、その本來のコイツは、きっとオレと合う。

マーシャやンボさんとはまた別の意味でだ。

「なぁ、ソレイユ」

「はい、なんですか?」

「お前、冥界でオレと一緒に働いてみない?」

「え⁉」

ソレイユがこれまで以上に揺れた。

「オレに決定権はないから、頼んでみることしかできないけどな。

仕事って言っても、現界に対して、何かできるって訳じゃない。ただ経過を見守るだけだ。

それでもさ、いつ戻るかもわからない前世の記憶の為に、ここに閉じ込められてるよりは、謎に近づける。

どうだ?」

ソレイユは揺れ続ける。

「……なんでですか? 私にはありがたいお話ではあります。でも、そんなことをしても、貴方になんの得もないじゃないですか」

「得ならあるさ」

オレはニヤッと笑う……雰囲気を醸し出してみた。

「オレも、楽しめそうだろ?」

ソレイユはポカンと口を開けた……雰囲気を醸し出していた。

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