《転生しているヒマはねぇ!》39話 孤獨

オレは自分の部屋に戻ってきていた。

すでに日課となった冥界新聞の為の原稿をサクッと終わらせ、ベッドにダイブする。

今オレを襲っているのは、以前図書館で冥界新聞を初めて読んだ時と似たような倦怠だ。

現界への羨

現界で生きている魂たちへの嫉妬。

冥界への諦め。

実際に現界の魂と流すると、やっぱりオレがいるべき世界は向こうなんだって強く思ってしまう。

オレは本當に転生できないのだろうか?

初めてマーシャにあった時、オレを將來的にも転生させる事ができない理由として、こう言っていた。

『お前の代わりに転生した魂が、どこから來たかわからん。

どこかの転生界で、魂が足りなくなったはずじゃが、10年前にそんな話はでておらん。簡単に言えば転生させる先が用意できん』

あの時は、そういうものなんだなと、素直にれていたが、転生役所での業務をしたり、いろんな魂の話を聞いているうちに、今すぐには無理でも、將來的に転生させる事ができないというのはおかしいと思った。

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転生先の決定は、基本的に各部の送魂課選魂係が、注魂先に適した魂を魂宿所で待機中の魂や、異世界部より送られてくる転生予定魂リストから選ぶことで決定する。

それらの中に、適した魂がいない場合は、冥界主による分魂が行われるが、このケースはめったになく、前述した待機中の魂と転生予定魂リストが基本となるらしい。

つまり、待機中の魂に加えてもらえれば、他の転生界で転生させる魂が、足りなくなっていようといまいと、注魂される魂の候補になれるはずだ。

詳しくは聞いていないが、ノラの子供たちは、魂で生まれ、現界に転生しているらしい。

分魂以外で生まれた魂も、現界に転生している実例があるのだ。転生し損ねて、余ってしまった魂だって、順番待ちさえすれば、転生できたっておかしくないじゃないか。

もしかしたら、マーシャに魂魄通話でその事を突っ込めば、『はっ! そういえば』とか言い出すかもしれない。

おバカだから。

でも、それができないでいる。

2つの事が引っかかっている。

ひとつは、ソレイユが言っていた、謎のエルフメイド『クルデレ』と口論していたというマーシャ似の人

もうひとつは、現界の魂たちと接したあの部屋。

冥界の魔法がかけられたあの部屋では、オレとノラの姿は、きちんと視認され、あまつさえ、シャーロはオレにれていた。

マーシャは、ワガママでおバカなお子ちゃまだが、魂魄の強さだけは規格外。

相手の魂魄を直接削り取り、現界へは自力で転移できる。

そんなあいつなら、あの部屋にかけられた魔法を自分自にかけることができてもなにも不思議じゃない。

転生魂すり替え犯の目的として、考えられる可能は、今のところ大きく分けて4つ。

1、ソレイユの魂を現界に送ること。

2、オレの魂を現界に送らせないこと。

3、その両方。

4、それ以外。

考えてみれは、2番を目的としたら、マーシャやノラなんか容疑者筆頭だろう。共謀だって考えられる。

アイツらは、冥界の魂の磨耗と消滅問題解決のために、冥界に刺激をいれたがっている。

異世界の現界経験のある魂をここに留めることが、冥界にとってかなりの刺激になると考えてもなんら不思議はない。

マーシャ自はおバカでも、アイツにはそれをカバーする人材と権力がある。

ノラにいたっては、大抵のことは一人でできる。

狐顔のせいで、狡猾なだけの男みたいに思い込んでしまうが、魂の力、人、権力、金。冥界をかせる力の全てを高レベルで揃えている。

ただ、もしも二人がこの事件に関わっていたとしても、オレを傷つけようとしている訳ではない。

味方とは言えなくなるが、敵に區分するのもどうかな。

ただそれも、現狀はという條件付きだ。

オレが現界に転生することを目的にいた時、二人はどうするだろう?

二人が完全に敵になったら、オレに味方は殘るのだろうか?

ンボさんは味方でいてくれるかもしれないが、本人も言っているが、爭いにむく魂ではないし、巻き込みたくもない。

アイシスは……この1ヶ月で、オレの勘違いでなければ、魂と言っていいくらいの仲にはなったと思う。

休日にデートしたり、この間は、ついにチューを……ほっぺにじゃないよ♪  死んでてもリア充って立するのかな? って、のろけ話ができるのも、マーシャが敵でなければだろう。アイシスの中で、オレとマーシャを秤にかけられたら、オレの方に傾いてくれるとは正直思えない。

……異世界でもいい。もう一度現界で生きてみたい。限りある命を、今度こそ全力で輝かせたい。

ただ、そこに至る道は限りなく暗く、オレはその道を獨りきりで歩かなきゃいけない。

考えるのが嫌になり、オレは布団を頭からかぶった。

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