《転生しているヒマはねぇ!》41話 前世
(結論。ソレイユ、オキョウの両名に関係は皆無。
オキョウの勘違い、もしくは思い込み)
オレは、ソレイユには黙って、総務部清掃課のオキョウに関しての調査を、ラヴァーさんにお願いした。
オレとンボさんの昇格祝いの日に、知り合った人たちのほとんどと魂魄信號換をしてあるから、誰に頼もうかし迷ったのだが、ラヴァーさんなら、データ的な質問ならすぐに返答が返ってくる気がしたのだ。
案の定、ほとんど待たされることなく、返答が返ってきた。
(オキョウは、マタイラの分魂生まれ。転生経験なし。
2ヶ月前までは、清掃課の中でも一番丁寧な清掃をすることで評判だった。
だが、ダイチ発見後から、仮が急激に老化。
業務容、評判も悪化。
今回の転生魂すり替え事件で、最も被害をけた魂と言える。
……憐れ)
淡々と語ってはいるが、言葉の容から察するに、ラヴァーさんははオキョウさんに対して同しているみたいだ。
(なるほど。冥界での魂は噓をつくのに向いていないけど、勘違いや思い込みによって、正しいことを言ってるとは限らないんですね。
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噓がつきにくいからと、一概に信じきるのは危険なんですね)
(肯定。その點において、ダイチに期待。
現狀、冥界において、疑うことへの適正はダイチが最も高い。
冥界生活の長い魂は、噓をつきづらいという環境の為、疑うことに不慣れ。
自分のことも他者のことも信じすぎる。
マーシャ様や私を含み、間違いの未発見の危険上昇。
ダイチ、常に疑問の提示を期待)
この人、俺に疑い続けろと言っている。ラヴァーさん本人やマーシャを含めてだ。
まるで、昨夜のオレの悩みを知っているかのようだ。
と、盜魂機とかないよね? 魂を隠し撮りして、考えまで盜み見ちゃう道はさすがにないよね? ないと信じたい!
あれ? でもこの人って確か前世はAIだったんだよね?
自作しそうじゃない?
いやいやいや、ない!
人口知能に魂はないだろう。AIはなにか別の職業の略だよね?
……聞いてみっか。
(あの~、ラヴァーさん。ひとつ質問してもよろしいでしょうか?)
(了承)
(ありがとうございます。
えっとですね。ノラからラヴァーさんの前世のことを聞きまして、前世ではAIという職業に就かれていたとお聞きしたのですが、AIってどんな職業なというのかなーって……)
(? AIは職業ではない。ダイチのいた世界にもあったハズだが、ダイチは知らないか? 人口頭脳のこと)
……ヤバい。本格的に意味わかんなくなってきた。
(ダイチはモノに魂が宿る、否定派?)
言葉と一緒にすごい寂しそうなまで流れ込んでくる。
オレの魂魄の奧のなにかが、警鐘をならしてくる。
常識に囚われるなと。
(いえ。オレのいた國には付喪神という考え方があります。
長い年月を経た道は魂を宿すと)
(ん。ほぼ正解。ただ長い年月ではなく、多くの想いをけた、が近い。
長い年月の分だけ多くの想いをけるから、そういう風に解釈された。
マタイラの神や霊と同じ。
信仰、畏れ。そういった想いが、形なきモノに力を與え、魂を宿すに値するとなる。
冥界は現界を存続させやすくするため、その想いに応える。
単純なを持つには、収まりきらない強い魂の良いけれ先になる)
(……とても興味深いです)
(同意。……提案。魂、世界、その他、ダイチと話す時間を作りたい。
ダイチの不安。私の不安。解決の一助にきっとなる)
毆られた気分だった。
マーシャの一撃よりはるかに重い一発だ。
ラヴァーさんは私の不安と言った。
現狀に不安を覚えているのはオレだけのはずがなかった。
皆、なにかしら持っている。
そしてそれは自分だけで抱えていても解決するものではない。
でも、この人もそれを打ち明ける相手が見つからなかったのではないだろうか?
異世界魂。
オレと彼は、その點において同士だった。
この人は、決して話上手ではないが、その分、一言一言が、オレの魂魄の奧に屆いてくる。
(オレからもお願いしたいです。できれば今日にでも!)
(激しく同意。終業時間に連絡する)
(はい! お待ちしてます)
(……楽しみ)
通話が切れる。
最後の言葉が耳に、暖かい気持ちが魂魄に殘る。
「ダイチさん。今日の現界視察のスケジュール申請終わりました。いつでも行けます」
昨日だけで、きっちりと仕事を覚えてしまったソレイユが事務手続き終了の報告をしてくる。
「おう! 今日も張り切っていこうか!」
オレの返答を聞いて、ソレイユが笑い出した。
「どうした?」
「だって、さっきまでと全然違うんですもん。
……でも、ダイチさんは、その方が似合ってますよ♪
飄々としている時のダイチさんは、スゴく頼もしいですから」
「あー、悪い! 不安にさせちまったな。
もう大丈夫だ。
ある意味、さっきのオバチャンのおだな」
「えー。さっきの人ですか?
逆に気分が重くなりそうな相手でしたけど」
言い寄られたことを思い出したのだろう。ソレイユが眉をひそめる。
「ハハッ♪ まぁ、停滯した思念をぶち壊すのには、良くも悪くもインパクトが大事ってことだ」
「ふーん。よくわかりませんけど、いつものダイチさんが戻って來てくれてなによりです。
それじゃあ、行きましょうか」
オレとソレイユは、足取り軽く、現界行きの転移陣へと向かうのだった。
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