《転生しているヒマはねぇ!》49話 繋がり

「それで、シャーロ。頼んでいたクルデレ、ホーレイト王國のメイドエルフの噂って、なにかあった?」

シャーロが首を橫に振って、お手上げポーズをとる。

「なーんにも。一応、ソレイユが生まれた頃まで遡って、そんなエルフの噂がでなかったか、みんなに聞いてみたけど、まったくなし。

今回、里に戻ってきていない子もいるけど、期待はできないと思うよ」

「そっか。いや、それならそれで良いんだ」

「まったく噂にあがっていないっていうことも、ひとつの報ってことですよね」

キスコールから立ち直ったソレイユが、オレに同意を求めてくる。

オレ以外は、からかっていただけだと気がついたのだろう。

「そういうこと。あのエルフが、冥界の魂である可能が高まった訳だ。

だけど殘念ながら、今のところは、冥界でもエルフ姿の仮の目撃報はないみたいだな。

もしも、この魂が、転生界や裁斷界、居住界の狹間にある、冥界の海と呼ばれる空間に隠れ住んでいたら、捜すのは容易ではないんだってさ」

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「ふ~ん。冥界もいろいろあんのね。

……ところでさ、逆はアリなの?」

「逆?」

「そう。逆。その噂のないメイドエルフさんの噂話をしたいなーって。あたしたちが、広めたいなーって。

つーかさせろ!そんな不思議話黙ってるなんてあたしたちにできると思うなーっ 」

なんかダメな方向に自信満々だ。

でも、クルデレの噂話を流すと言うのは面白いかもしれない。

もうひとつ、ホーレイトでは黙殺されたと言っても良いソレイユ暗殺の疑い。

クルデレの敵対者と言って良い存在だが、心當たりがまったくない。

ホーレイトでは、問題無しとして片付けられたこの一件を、外側から突っついて蒸し返すのも悪くない。

クルデレの敵がオレの味方という保証はない。

炙り出せるなら炙り出しておきたいものな。

直接的な手出しはそもそもできないが、存在を明確にはしておきたい。

ただし、これらの噂を流すのは、リスクもある。

オレは、シャーロに今の考えを聞かせる。

「流したーい! つーか、流させろ!

時に噂は、世界さえもかすのよ!」

「だけどな。危険かもしれないんだ。

相手が個人か組織かもわかっていないが、どちらにしろ相當な実力は持っている。

下手をすれば、噂を流した妖族の命が狙われてしまうかもしれない。

オレたち冥界側にはメリットしかないが、お前たちには危険が及んでしまう可能がある。

相手の目的も規模もわかっていない。だから―――」

「あー、もう! ごちゃごちゃうるさい! 死ぬのが恐くて、噂話が流せるかっつーの 」

容は、はた迷だが、かける意気込みはすごい。

「それに、ダイチはその2つの噂話が流れた方が、助かるんでしょ? 」

「ああ。まあな」

「友達を助けるのなんて當たり前じゃん」

「友達……か?」

「ひっどいなー! ダイチは、これまであたしに遠慮なんかしてた?」

……してねぇな。

コイツなら叩き落とそうが、踏んづけようが、また顔にはりついてくるだろうという確信というか、奇妙な信頼がある。

「あたしはしてないよ! 遠慮のない付き合いができる相手を、友達と言わずになんと言うのさ!」

ああ……コイツ友達多いだろうな。

「……そうだな。ありがとな、シャーロ」

「うん! それに、あたしの友達ってことは、みんなとも友達だよ。みんなも喜んで、命懸けで噂を広めてくれるよ

ねぇ、みんな 」

「「「「「ブーブー!」」」」」

「ブーイングされてるじゃねーか!!」

オレの言葉に合わせ、妖たちがまた笑顔でオレの周りを飛び回る。

「アハハ! あたしらこんなだからさ、偉そうにふんぞり返っているような奴らには嫌われるけど、ダイチとはうまくやれると思うんだ。

だから、あたしたちは、友達の、ダイチのためなら、できること全力でやるよ!

 まかせと―――っわ! ちょ、ちょっと、ソレイユ! どうしたのさ

 あたしら、なんかマズイこと言った?」

シャーロが突然不安そうな顔つきになって、ソレイユに話しかける。

何事かと振り返ってみると、ソレイユが……泣いていた。

「ゴメンなさい! ゴメンなさい、ダイチさん!」

「オ、オレか

オレはソレイユになにもされてないぞ?」

ソレイユは、違うと首を振る。

「私が言ったことなのに……。

ダイチさんは、私に全力で応えてくれるって。

さんたちもそうしようとしてるのに……。

私、魂の別のこと黙ってて!」

「い、いいのよ、そんなこと! そんなことで怒るほど、ダイチのは、間と違って小さくないわ!」

「そうだぞ。オレのは、間と違って・・・!」

(おい、コラ! どういう意味だ!)

魂魄通話を繋ぎ、不平を言う。

(うっさい! 黙ってソレイユをめなさい! あんたはも小さいのか!)

(クッ! 後で覚えてろよ!)

「う、の方がはるかに大きいよ?」

疑問形にしたのは、なけなしの抵抗であったが、どちらにしろオレのを犠牲にしためは効果なく、ソレイユは涙を流し続ける。

「前世の記憶が戻っていないのは、噓じゃないんです」

「うん。わかってる!」

「でも、現界で10年間生きてきたはずのソレイユ王子も、自分の中でじなくなっているんです」

「そ、そうなのか?」

ソレイユは力なく頷く。

「たぶん、魂が存在している期間が、ソレイユ王子として生きた期間よりはるかに長いせいだと思うんです。

環境によって得たソレイユとしての、気や考え方がどんどん薄れて、元々の魂の格が、中心になってきていると思うんです。

私、怖い。こんな狀態で記憶を取り戻してしまったら、自分はどうなってしまうのか!

記憶を取り戻した私が、クルデレの仲間だったら、今、私の支えになってくれてるダイチさんのことさえ、平気で裏切るかもしれない! 

そう思ったら怖くて。であることを伝えて、今の関係が壊れたら、もう2度と戻れないんじゃないかって思ったら、もっともっと怖くなって、言えなくて……」

ソレイユがオレにしがみつき、涙で濡れた瞳を向けてくる。

「ダイチさん。私どうしたら良いですか?

どうしたら、今の気持ちを、ダイチさんへの気持ちを繋ぎとめておくことができますか 」

オレは、ソレイユの質問への答えをもたなかった。

だが、シャーロは違った。

「な〜んだ。そんなことか。

そんなの簡単な解決方法があるよ♪」

「ほ、本當ですか 」

「マジか 」

「うん! マジ! 本當!

よく聞いてね」

「はい!」

が見えたのか、ソレイユの返事に力が宿る。

「ソレイユ」

「はい!」

「ダイチと結魂して♪」

「はい! フェッ!?」

あ、なんかデジャブ。

「あたし、ノラちゃんとも友達だから聞いてるんだ。

こっちの人類の結婚と冥界の結魂て違うんだよね、ダイチ」

「お、おう」

誤魔化すこともできず、オレは昨日ラヴァーさんから聞いた結魂の容をソレイユに聞かせる。

「……永遠の忠誠……」

「ノラちゃんは、服従って言ってた。

『そんな條件なのに、あっしとの結魂をむなんて、ホントに好きな房たちでござんすよ』だって。

そんでさ、結魂したら、ダイチに新しい名前つけてもらったらいいよ♪ 生まれ変わったつもりでさ。

そしたら、クルデレがあんたをまたコッチにったって、昔の記憶を取り戻したって、きっと大丈夫。

魂が繋がってるダイチに、ダイチにつけてもらった名前を呼んでもらえば、絶対にダイチの所に戻ってこれる。

だから、結魂しちゃえ、つーか、結婚しろ  」

「「「けーーーっこん! けーーーっこん!」」」

オレは、シャーロの力強い言葉を皮切りに巻き起こった結魂コールを全に浴びながら、オレの服を摑むソレイユの手の力が強まったのをじていた。

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