《転生しているヒマはねぇ!》53話 冥力

「ダイチさん、これまでの力が発した狀況と、発した力の容を教えて頂けますか」

レイラさんは、ベッドで寢転がったままそう仰る。

どうやらくつもりはないらしい。

仕方ないので、ベッドの側まで椅子を引っ張ってきて座る。

ベッドに腰かけようものなら、また、茶化されるに決まっている。

「もう、そんなに警戒しなくても取って食べたりしませんよ。

私だって、アイシスやラヴァー、そしてソレイユちゃんに嫌われたくはないので」

茶化されるのは決定事項だった。

……まぁ、仕方ない。アイシスも、オレと、オレとの結魂の為にこの人に相談してくれたんだろうし、実際の話、なんであんなことができるのか、まったくわからなかったからな。

ヒントでもくれる人がいるならありがたい。

ただ、全てを話してもいいものか?

マーシャと違って賢いからな。完全に信じるのは危険だ。

どうせ、この考えもお見通しなんだろうけどな。

オレの苦悩を知ってか知らずか、レイラさんは黙って、ベッドの上でニコニコしている。

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オレは降參することに決めた。敵であろうとなかろうと、今はこの人に頼る他ない。

オレは冥界新聞社の伝で、現界の有力な魂に會っている件も含めて、力の発した狀況を包み隠さず説明した。

レイラさんは、仕事中の時のようなキリッとした表で、なるほどと頷く。

「私の使うものより強制力は弱いかも知れませんね。その分汎用が高そう。それに、強制力は魂魄を糧にすることで強めることはできると」

レイラさんが、ようやく上を起こす。

「問題は、ダイチさんが発させようとしなくても発しちゃう點ですよね。

とりあえず冥力とは何かということを理解してもらうことが必要です。 

冥力とは、魔力とは本的に違うのですよ。

冥力を行使できるのは一部の魂に限られ、使える力も個によって異なります」

「マーシャは々とんでもないことやってるみたいですが……」

レイラさんは首を振る。

「姉さん自の冥力は、質創造です。

姉さんやアイシスが、相手を毆ったりした時に、相手の魂魄を削れるのは冥力ではありませんよ。

あれは魂魄に魂魄をぶつけているだけです。

要するに力勝負。

あの二人の魂魄が強いから、一方的にダメージを與える結果になっているだけです。

仮にあの二人が毆りあったら、姉さんが確実に勝ちますが、無傷とはいかないでしょうね。

原理的なことを説明すると、あの二人は仮の中で、自分の魂魄の位置を自然に変えているんです。

本來、魂魄というものは仮の中央部に凝されて存在していますが、あの獣ちゃんたちは、毆る時は手に、蹴るときは足にと、無意識に魂魄の位置を変える。

相手の魂魄に直接當たらなくとも、仮に當たった時の余波だけで、相手の魂魄を削ってるんですよ。

私は意識的に魂魄の位置を変えることはできますが、移させようと思わないと移できないので、二人のように、反的に叩いただけでダメージを與えることはできないでしょうね」

「へぇ〜、じゃあ、あそこまでは無理でも、オレもやろうと思えば冥界の仮を毆ってダメージを與えることはできるんですね」

「可能です。ダイチさんも充分に強い魂ですから。

ただ姉さんをそれで毆っちゃダメですよ。

あくまで魂魄と魂魄のぶつかり合いですから、毆ったダイチさんの魂魄が削れます」

り、理不盡だ!

「やるなら、絞め技を推奨します。ぶつけるんじゃなくて、圧迫してやればいいんです。姉さんが本気になれば、跳ね返しては來ますが、毆るよりは安全にダメージを與えられます」

い、いいのか、そういうこと教えちゃって?

「あとは、現界に自力で飛べるのは、魔力を使用しています。

冥界は現界よりも魔力に満ちているんですよ。

そして、強い魂はそれを取り込みやすい。

たぶんダイチさんも練習すればできるようになるでしょうけど、やめてくださいね。ルール違反ですから。

役所勤めをしていないノラさんでさえ、守っていることです」

オレはしっかり頷く。

うん。ルール大事。

迂闊に破ると自分の首を絞めるからな。

「それで、肝心の冥力ですが、扱い方を口で説明するのは難しいです。

なにせ、私や姉さんは生まれた時から當たり前にできたことですから。

だから実際に力を使いながら、調節していくのがいいと思うんです。

ですので時と場所を改めましょう。

……そうだ!

今度の四連休に冥海に海魔浴に行きましょう!

あそこなら、広いですし、周囲に被害が及ぶということもないでしょうから。

みんなもって行きましょうね!

きっと、楽しいですよ♪ 

現界で死んだばかりの魂が、ぷかぷか漂ったりもしてますから♪」

この人は、魂をクラゲのように言うな。

レイラさんが、ようやくベッドから降りて立ち上がった。

「ウフフ、スゴい楽しみになってきました!

ちゃんと予定空けといてくださいね♪」

言いたいことを言って、部屋から出ていこうとするレイラさんが、ドアを開けたところで振り替える。

「あっと。忘れるところでした! 

ダイチさん、明日出勤したら、り口前の掲示板を確認しといてくださいね。

楽しいことになってますから♪」

爽やかに微笑み、ある意味姉よりも強烈な暴風はオレの部屋から去っていった。

ベッドに、ただ一本の針金を殘して……。

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