《転生しているヒマはねぇ!》75話 ウェントス&プリサ

「プリサ……だよな?」

見た目は、魔師フズの迷宮ダンジョンで、初めて會った時とまったく変わらない。

ただ、あの時は無口で冷たい印象だったが、今のプリサは……とにかく五月蝿い。

「ふぇ? あれれ、どこかでお會いしましたか?

だとしたら申し訳ございません。地味なお顔をされておりますので、このプリサ、覚えておける自信はございません!」

なにこの反応? 

誤魔化してる?

その割には自然というか、腹立たしいというか……。

「いや、2ヶ月位前にノラのところで會ったろう?」

「ノラ? 野良天使のことでございますか? ここ最近は消滅された神様がいらっしゃいませんから、野良は発生していないはずでございますよ?」

「フム。プリサのことを知っているのかと思いましたが、何やら話が噛み合っておりませんな。

ダイチ殿、宜しければご事をお聞かせ願えませんか?」

おれとプリサのやり取りを不審に思ったらしいウェントスが、會話に割り込んでくる。

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「ああ、もちろんだ。もともとそこらへんの事を知るために來たんだし、々とはっきりさせなきゃいけないこともありそうだからな」

「うむ。プリサ、お茶の支度を。

レンダ殿、どうせあなたも聞いていかれるのだろう?」

「もちろんだよ!

あ、プリサ。ティロ茶ある? ティロ茶!」

「もちろんでございますよ! レンダ様は引きこもりの我が主のた・っ・た・一・人・のご友人。いつお越しになられてもいいように、備えは完璧でございますよーっ!」

そう言って奧へとパタパタと駆けて行く。

見送るウェントスの背中に哀愁が漂っている気がして、オレはウェントスの肩にポンと手を置いた。

「苦労してんな、アンタ」

「まあ、言っていることは否定できないのですがね。プリサも私にとってはただ一人の従屬天使。二人とも私にとって貴重な存在ですよ」

鳥顔なのでわかりづらいが、どうやら苦笑しているようだ。

「さあ、お二人ともこちらへ」

ウェントスに導かれ、ダイニングルームと思われる部屋に案された。

外壁と同じく、白一の部屋には、調度品の類はほとんど無く、大きめのテーブルとテーブルを挾むようにして置かれたソファーが2臺どんと置かれている。

だが、この部屋で一番目立つのはそのどちらでもなく、壁に掛けられた巨大な鏡だった。鏡の中には、生前に見た衛星寫真のような風景が映っていた。

「もしかして、あれがダリーナ峽谷?」

オレはウェントスに勧められるまま、飛び込むようにソファーに座ったレンダの隣に腰を下ろして尋ねる。

「左様です。見る限り嵐神が手を出してきた様子はありませんな。

説明會に姿を見せていなかったので、もしやと思ったのですが、考えてみれば、己の力を誇示したいあの男が、私のいない隙を狙うというのはあり得ない話でした」

「そうだね。ザウバーのことは大嫌いだけど、そういう點だけは、認めてやってもいいかな。ある意味お馬鹿だけどね」

レンダが面白くなさそうにウェントスの意見に同意する。

嵐神ザウバーか。今回の冥界説明會に參加してもらえなかったメンバーは、シャンセ係長に進行をバトンタッチした後にリストで確認した。

全部で12神。奇しくも流會メンバーと同數。その中で冥界から直接に參加のおいをした50神に含まれているのは3神。嵐神ザウバーもその一人だ。

そんな話をしているとお茶を持ったプリサが戻ってきた。

「お待たせしましたのですーっ!

ダリーナ峽谷名ティロ茶でございますよ。

茶請けはダリーナ芋を使用したグウでございます。堪能くださいませ!」

プリサが俺たちの前にお茶と茶請けを置いていく。

レンダが手を打って喜んでいるのを見ると、茶請けの方もレンダの好のようだ。

準備を終え、壁際に控えようとするプリサにウェントスが聲をかける。

「プリサ。お前に関わりのある話だ。お前もこっちに來て座りなさい」

「す、座る! それはその~、ウェントス様のお隣にでございますか 」

「無論だ。お前は客人たちに窮屈な思いをさせるつもりか?」

「いえ、滅相もございませんですよ!

それでは失禮いたしますです!」

プリサが深呼吸を2回繰り返してから、ウェントスにピッタリと寄り添って座った。

ウェントスが不思議そうな顔をしてプリサを見下ろす。

ウェントスはがけっこう顔にでるな。鳥顔なのに。面白い。

「なにもこれだけの広さがあるのに、こんなに私に寄らなくても良いと思うのだが……」

「いけないでございますか?」

プリサが捨てられた子貓のような瞳でウェントスを見あげる。

逡巡した様子を見せたウェントスだったが、猛禽類だけにすぐに鷹揚に頷いた。

「フム。特に邪魔になる訳でもないか。

よかろう、好きな所に座るがよい」

「ほ、ホントでございますか 好きなところに ありがとうございますーっ!」

プリサは目を輝かせて立ちあがり、なにを思ったのかウェントスの膝の上に座り直す。

ウェントスは一瞬目を大きく見開くが、すぐに気にするのを止めた。

「それではダイチ殿。説明會に引き続き申し訳ないが、ご説明を」

「……」

「あの二人のやり取りは、気にしたら負けだよ」

固まっていたオレに、レンダがそう耳打ちしてきた。

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