《転生しているヒマはねぇ!》81話 転屬

なかなかに忙しい一週間だった。

神類部以外で流會をやっている悪魔部、竜類部の流課が、この間、神類部で行った冥界説明會の容を知りたがり、マーシャの一存で、転生役所向け報告會を行うことになったからだ。

魂魄の耗・消滅は、なにも神類部だけの問題ではなかったということ。一番顕著だったのが神類部だったということらしい。

「これからは開かれた冥界を目指すのじゃ!」

魂魄通話で偉そうに言われた時にはどうしようかと思ったが、指揮をとったのがラヴァーだったからな。

各部門のトップをえつつ、日程を調整し、報告會の段取りをあっという間につけてしまった。

さすがはマーシャの書課の一人にして、居住界の四天王。オレの自慢の嫁さんの一人だ。

さらにソレイユも仕事が早い、早い。説明會時の議事録をとってくれていたのはソレイユなのだが、それの要點をまとめ、今回の報告會に使える資料をあっという間に作りあげてしまった。

報告會での司會進行はオレがやることになっているが、基盤を二人の嫁さんが固めてくれているので、それほどたいへんではない。

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オレの嫁さんたちスゲェー。惚れなおしちまうな~♪

ハッ!

もちろん! もう一人の嫁さんのアイシスも非常に優れている! 自分の仕事を責任を持って最後までやり遂げる、尊敬できる嫁さんだ!

だから、アイシス! こっち來ちゃダメ! 手伝いはいいから、自分の仕事をしなさい!

してるから! アイシスのそんな素晴らしい姿にも惚れてるから!

……フゥ~。どうやら仕事に戻ったようだな。

危なかった。魂が繋がってるってたいへん。

の中で、迂闊に嫁さんひとりを褒めようものなら、殘りの嫁さんがヤキモチ妬いちゃうからね。

夫たる者、嫁さんには平等にをそそがなくちゃ。

オレが係長デスクで部下のひとりから、企畫係よりあがってきた企畫立案書の説明を聞きながらそんなことを考えていると、これまで定位置で大人しくしていた三子魂が、それぞれのポジションで跳びはねだす。

「うん。お前たちも大人しくしていて偉い。

だからもうちょっと我慢しような。もうすぐ終業時間だから」

苦笑を浮かべつつ、三子魂に話しかけると、ぬいぐるたちのきがピタリとやみ、再びしっかりとオレにしがみついてくる。

三子魂とは魂が繋がっているわけではないが、半分はオレでできているようなモノだからな。考えていることなどお見通しで、自分たちもかまってしくなったのだろう。

そんなオレたちのやり取りを見て、目の前にいる部下はもちろん、ラヴァーの下に行っているソレイユを除く、企畫課の企畫を形にすべく話し合いを続けていた他の部下たちと、シャンセ係長を含めた隣のデスクの島の企畫課の面々が、全員揃ってとても優しい笑みをオレたちに向けてくる。

ちょっと恥ずかしいが、公私混同と突っ込んでくる魂がいないのはありがたい。

それにしても、みんな仮が若返ってきてるなあ。

シャンセ係長はもともと30代前半の姿をキープしてたけど、いまでは20代半ばくらいで、見るからにエネルギーに満ちている。

ウチの連中もシャンセ係長ほどではないが、これまで60歳は越えているように見えていた姿が、40代くらいにはなってるんじゃないか?

いや驚きだ。現界の神々との和解は、まだ就したわけではないのだが、はっきりとした目標とそこにたどり著けるかもしれないという希が、魂に良い影響を及ぼしているのだろうな。

オレへの報告を終え、しっかりとした足取りで自分の席へと戻る部下の背中に、俺は満足気に頷く。

この様子なら、オレたちがいなくなってもきっと大丈夫だろう。代わりの係長は、いまの部下が昇進することになると魂事部のブチブチブッチ部長から聞いている。

実はオレとソレイユ、また部署移なんだよね。來週の他部署への報告會の司會が、いまのポジションでの最後の仕事になると思う。

今度配屬されるのは霊部。

ほら、地方神である風神ウェントスの自宅で聞いた話だよ。

高位の霊は、神よりも古く強い魂を持ってるってやつ。でも霊部には、現界の魂に調整する為の流課がない。

これをレイラさんに話してみたわけ。マーシャじゃどうせ把握していないだろうから。

ただレイラさんの下へは、霊部の方で問題が起きているといった報告はきていないということだった。

念のために調べてみた方がいいかもしれませんねって言ってたから、調べてくれんのかと思ったら、まさかオレに調べろという話になるとは。すっかり便利使いされている。

ただ現狀問題が発生しているわけではないので、今回はゆとりがある。でも霊部にいくのはオレ一人。

なんとソレイユは、冥界運営省書課に転屬が決まってしまった。

オレがマタイラに來てまだ半年くらいしか経っていないのだが、その間普通の魂では対応が難しい案件が続出。

書課の五魂が先頭にたって解決にいていたのだが、やはり魂手が足りない。そこで白羽の矢がたったのがソレイユというわけだ。

もちろんソレイユは、まだ無罪放免となってはいない。いまだに魂すり替え事件の容疑者の一魂だ。それでもオレ経由ではあるけれど、書課の二人と魂が繋がっている。能力も優れていることは冥界説明會で実証済。信用も信頼できるということらしい。

オレはソレイユと離れるのが寂しい半面、実は楽しみにしていることもある。

ソレイユ、なんて呼ばれることになるのかなあ?

書課の五魂にはさ。それぞれマーシャへの対応の仕方によって二つ名がつけられている。

非効率潰しのレイラ。

経費削減の鬼ラヴァー。

窓際叩きのチェリー。

口だけ殺しのアイシス。

休日返しのプルル」

みたいな、こんなじ。

あの大人しくて可憐なソレイユがさ、マーシャのサボり癖を注意している姿が思い浮かばないわけよ、オレには。

むしろマーシャの勢いに押されて、流されちゃう姿の方が容易に想像できちゃう。

それはそれで可いんだけどね。でも頭の良い子だから、なんとかしちゃいそうな気もすんのよ。

微笑みだけでマーシャをかす絶対天使ソレイユとか、マーシャを褒めてコントロールする褒め殺しのソレイユとかさ。

いやー、ホントなんて呼ばれるんだろう?

すんげー楽しみ♪

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