《転生しているヒマはねぇ!》89話 

「おや、お二人ともいらしていたんでござんすね。ここが最後でござんすか?」

{ああ。洗い場と削り場はね。あとは選別の間と教練場くらいかね~」

オレたちに気がついたカレンが舞を中斷し、最初の部屋の時同様、るようにして近寄ってくる。

「もう終盤でござんすね。ダイチさん、ここまでどうでござんしたか? 転生界とはだいぶ違うと思うでござんすが?」

「いやあ、新鮮だったわ。職員みんな元気だしな」

カレンは九尾のシッポをピンとたててドヤ顔をしてくる。

「そうでござんしょう? 地獄界は目的がわかりやすいし、結果も一目瞭然でござんすからな。パパなんかはどこも大事な仕事と言っているでござんす。正しいとは思うんでござんすが、それと自分のやっていることの結果が明確なのとはまた別でござんすから、魂魄に與える影響には差が出るでござんすよ」

「それで一度は職場の変更をって話もでてんだけどさ。休憩所で話した環境がかわるのも恐いって部分に繋がっていっちゃうんだよね~」

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オレの頭の上でチェリーが補足する。

「無理やりってわけにはいかないもんな」

「世界によっては冥主が強権発して、そういうことをしてる世界もあるってパパから聞いたことがあるでござんす。でもマタイラの冥主様は、個魂個魂の自主を重視している方でござんすから」

「へぇ~。世界によっても違うんだ」

「冥主様の意向に沿うってところは、どこの世界も一緒みたいでござんすけどな。パパの持ってる本で読んだことがあるでござんすけど、チキュウの冥主様はかなりの放任主義らしいでござんすよ。なんでも運営にはまったく口をださず、運営は古い魂百魂の合議制だとか」

思わず顔が引き攣る。

「なにも決まらなさそうだな」

「そうでもないみたいでござんすよ。そもそも合議が行われるのは、チキュウの運営を左右する大きなことだけで、細部は適宜擔當の古魂が獨自に意思決定しているみたいでござんすからね」

「そうなんだ。でもカレン詳しいな」

「全部パパの持ってる本のけ売りでござんすよ」

ノラか。アイツ現界のことだけじゃなく他の世界のことにも興味あんのか。まあ好奇心のカタマリみたいなもんだからな。それはマーシャも一緒か。食い限定とはいえ、各世界の現界の知識を貪に取りれてるみたいだからな。あれ? 自販機とかの技を取りれてんのもマーシャなのかな? それともラヴァーか? ラヴァーはもともと科學技がチキュウよりも発達している世界出みたいだし。

「ところでその殘ってるのがその二ヶ所だけなら、休憩がてらアチキもついて行ってもイイでござんすか? 久しぶりでござんすから、アチキももうちょっと姐さんといたいでござんすよ~」

甘えた聲でオレではなく、オレの頭の上のチェリーにお伺いをたてる。

「しょうがない子だね~。ダイちゃんかまわないかい?」

「オレは全然かまわないぞ」

「そこは『オレはチェリーと二人きりがいい』て答えるところじゃないのかい」

オレのツノを握って頭にを打ちつけながら抗議してくるが、心地よいだけで説得力は皆無である。

「まあ、いことこと言うなよ。と同じくらかくいこうぜ。ほれカレン。チェリーはオレの頭からかんからな。案を頼む。オレは道がわからん」

「承知したでござんすよ。選別の間、教練場の順番で回るといたしましょうか」

カレンが俺の橫を通り抜けようとしたところで、彼の九尾のの中央のシッポを摑む。

「うひぃぃぃぃ! な、なんでシッポを摑むでござんすか! 放して、はなしてくださいー!」

顔を真っ赤に染め上げたうえに、皺くちゃにして振り返ってくる。取りす彼に俺は落ち著かせるように冷靜に語る。

「オレがはぐれたらたいへんだろう?」

「頭の上に姐さんがいるじゃござんせんか!」

「オレの前にいるのはお前だろ?」

「服! せめて服にしてくださいよ~」

「やだよ。こっちの方が気持ちいいもん」

「セクハラ! セクハラでござんす!」

これまた懐かしい言葉がでてきたな。

「どこでそんな言葉覚えたんだよ?」

「パパの本でござんすよ!」

ノラのヤツ、いったいどんな本集めてんだ。これは一度チェックしないとダメだな

「諦めな、カレン。ダイちゃんは自分のに正直な魂さ。のままに三魂と結婚し、のままにチョメチョメし、のままに三魂をもうけた。そんなのカタマリのような魂の前にフサフサのシッポの生えた仮を曬した自分を呪うんだね」

「お、鬼でござんす。の鬼でござんすよ~!」

目に涙をいっぱいに溜めてブルブルと震えている。なんだか俺の魂格こんかくが誤解されてる気がする。

「……あのー、チェリーさんや」

「なんだい、ダイちゃんさんや?」

「お言葉に、ずいぶんと偏見がっている気がするのだが」

「間違ったこといったかい?」

さも驚いたような聲が降ってくる。

「……わたくしが間違っておりました」

「だろ?」

チェリーが実に愉快そうに俺の頭にを打ちつけた。

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