《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》09.どうしてここにいるのですか……?

さて、どうしたものか。

どうしたものかと考えても、いとも容易く何か解決策が浮かぶとは限らないのが現実。

さらに言うと頭が固い社會様はアイデアさえも生み出させてはくれない。目前に待ち構えるこの巨大すぎる壁を乗り越えるにはそのアイデアこそが唯一壁を通過できる鍵のはずなのに、それさえも渡してはくれない。

何を、いつ、どこでとWhat,When,Whereの懐かしい構文が頭に流れてくるのに結局のところ文章が何を語っているのか分からないという致命的アレだ。

なんというかこの世の不憫さをそこまで叩きつけられても、ハテナボックスでもない俺からは何も出ませんよと言いたいほどだ。

と、自分語りはこの辺にして本題に至りたいのだが、

「獨り言は止めてくれる?目障りな蠅が耳元で羽音を出しながら飛んでいるようで鬱陶しいわ」

この現狀を理解していない、いや理解なんてめっぴらごめんよと蔑むような顔をされて思考を強制終了された。

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この、俺が謙遜し敬わなくてはならないこの忌まわしい人こそが俺と同時期に部した如月桜だ。名前のように優雅にひらひらと舞い降りる花びらのように、なんてのは夢のまた夢の話だ。

れたら相當危ないトリカブトの方が似つかわしい。しかも生息地は確か……気が多い環境だったな。

「私のことを侮辱しているのなら止めておいた方がいいわよ。それなりの罪狀がこの國にあるのはご存知?」

他人の心をこうも容易く摑み取るとは、これこそ占い師の才能あるんじゃないか。

「名譽棄損罪な。ってそれはお前こそ言える話じゃないのか?俺がお前を侮辱してるって話、俺からしてもあまりにも一方的過ぎて納得しないぞ」

「あら、まあそうね。それも考慮のにしとくわ」

さらっと自分の非を認めて話を片付けようとするところ、俺は嫌いじゃない。

ここで念のため言っておくが、人生一生涯において珍しき勧新聞部への勧(嬉しいわけではないが)をけた掃除という名の時間を終えた後、殘りの放課後の余白を高校生なりにも謳歌するべく自然と昨日と同じ文蕓部の部室に足を運んでいた。

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しかーし、そこにはいたのはなんと。昨日と同じメンバーで授業を無斷欠席した面白みの欠片もない俺の擔當編集者だったというわけだ。なるほどつまらん。

「今日は何やってんだ?昨日もそうだがパソコンに目線逸らしてばっかりでそんな忙しいのかよ?」

「あなたのように私は暇人ではないのよ。そういえばその調子なら先日送った件、もう終わったのよね?」

にこやかに俺を見返すパソコン越しの笑顔の表はまるで悪魔。なんで笑顔が悪魔かって?

「あ、いや終わってないです……今やっと半分なんですけど」

先輩でも後輩でもない人に対して言葉遣いを正してしまうのは、拘束力があるこのの目力のせいだろう。

目の前のは俺の役目が終わっていないことを知った途端、人を石にさせるんじゃないかというメデューサのような眼を放っているのだ。

「あ、そうなの」

だからとはいえ、なんでやってこないのかと何度も拷問のように問いただされることもなく、當たり前のようにゴミをゴミ箱にれるような口ぶりで俺に返答するのだ。

「ほんと、すみませんでした。明日には終わらせますんで、ホントマジで」

そこで俺が取るべき行は頭を下げることだ。一応、俺の上司で仕事を続けているベテランなのだし、一応ね。

し時間貰ってもいいか?ちょっとした相談なんだけどよ」

からの職業での立ち位置から切り替えるのは些か気を使うが、何事もないようにただのクラスメイトに話しかけるようにする。

「これ、どうする?」

俺は機の片隅に必要が失われたのように雑に置かれた書類を指をさす。

それは、俺が社畜になるように仕向けられた小道。すなわち文蕓部の活容である。

「どうするも何もそれはあなたの仕事でしょう、私にせがんでも意味がないわよ」

斷固拒否。俺に目線すら與えずに自分の仕事に沒頭しているようだ。

「俺だけに荷持たせるのやめてくれません?ここに何度も、何時でも籠っておられる部員様は今俺の目の前にいるんですが」

パチンッとエンターキーを叩く音が部屋に鳴り響く。俺の細やかな弁論がそれは見事に々に刻まれる予が冷たく背中に伝わる。

そもそも俺以外の新生部員がいるのかいないのか知らなかったのだが、この場に留まって悠々自適と生活しているこのを見れば部員は俺のみではないということは一目瞭然だ。

つまり、そう、とどのつまりだ。このーー授業さえもろくに出ずに自由奔放に高校生活を送る如月桜は文蕓部員である他ないという確証なのだ。

「それは私のことかしら?」

削った挙句、が出來得る限り反するような磨きを施したダイヤのような眼が俺に向けられた。

恐怖。

「私のことだったらあきらめることよ。私は今の今までこの部屋にいるだけ、分かる?いるだけなのよ。部員というグループに初めからってないのよ」

呆れた、とか驚いたとかそんな一言で言えるではないような気がする、かと言ってそんなも無かったと言えば虛言を吐くようなことになってしまうのだが。

まあ頭の中で俺の一部分が「信じられない」とか「じゃあなんでここにいるんだとか」、一方から錯するように議論しあっていると言えば妥當なのか。

獨りで考えに耽るのは別に苦難を要するようなものでもなかったし、これまた簡単なことでもなさそうだったので俺はこう返した。

「ならなんでここにいるんだ?」

無粋でも一応はまともな返しだともじたが、平安時代にこんな返歌をしたら心底つまらなそうにする人々の顔がよく目に浮かぶ。

(というか俺だってあんたらの考えていることは意味不明で、相手の思を理解して返す詩にもそれを取りれろだ?なぜ鸚鵡返しのようなやりとりをしなくてはならんのだと、それに重要はあるのかと豪語すると、これまた想がなく小さい男と呼ばれたこともあるのだが俺は気にしない)。

その要らぬ副産が世界のどこかで溜まって溢れたように、如月は俺に言葉を當て付けてきた。

「私がどうしてここにいるのかって?」

俺よりも辛気臭い鸚鵡返しだと、そう信じたい。

「そうだ。部員でもないお前がここにいたって必要ないんじゃないのか?」

「行く場所が無いからよ」

自分の居場所が無いというのは別に嫌なことでもない。それは俺の人生の中での教訓がそう語っている。

獨りでも生きていけるし死ぬこともない。相談する人がいないのが原因で自殺するとかしょっちゅうニュースで報道されるがそれは違う、他人のせいにしているだけだ。

「行く場所なんて何処だってあるだろ、例えば図書館とかよ。どうせ編集とかその関連の作業仕事してんだろ?なら絶好な場所じゃないか」

「出來たらそうしたいのだけどその場合、図書室の管理人に私の居場所を知られたら擔任に耳打ちされて何もかも終わりだわ」

俺が提案することに幾度となく反対する。微細な抜けれを厳しく指摘するのはやはり仕事上のなのかと納得するほどだ。

「なら自習スペースはどうだ?」

「SHR前の朝自習、放課後しか開いてないわ」

「な、なら食堂はどうだ?」

「同じよ、そこで勤務する人と教師は繋がっているもの」

「だったら、使用されにくい教室はどうだ?」

「そんなリスク負うのならここにいた方が安全だわ」

さりげなく如月にそう口に出させるための導尋問をしていることに俺は気付いていなかった。

それはさりげなくというべきなのか、いや自分から口に出してそうさせているのだから「さりげなく」ではないのかもしれないが、と自問自答していると言葉に鋭敏な如月桜は必然的に気付いていた、気付かされていた。

「それともあなたは私にここを出て行けと、そう願っているのかしら」

恐らくこのは気付いていないのだろう。「この場を離れなくてもいい」と言わせていることを。男はが自分を否定することに否定する二重否定規則という世界の不憫だ。

だから俺は敢えてそれに乗ることにした、世の中で語られる男との草芝居が一どんなものなのか、人間のやりとりに関して興味があったわけではなかったが、興味がなかったわけでもなかったのだ。

「それは違う、俺はお前にここを出てしいなんてことは思ってもいねえし。ただなんで部にらないのかと興味があるから聞いただけだ。だってそうだろ?仕事でも文學に攜わっているというのにろうとしないなんて、その理由を知りたくなるのは知識である人間のなんだよ」

「……回りくどい言い方。単純にどうして部にらないのか?と言えば良いのに」

「そんな楽な生き方で生きれれば人生困ったことないかもな」

そう、これはいつの日かもう忘れた頃の話だ。

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