《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》015.あざとらしさにも程があるのですが……?

「ではでは、今日もお疲れ様ーー。明日もこの調子で頑張って行こうねーー」

五時間授業で終えた一日分の授業は肩が酷く凝るようにじ、何とも言えない気だるさが俺の背中にまとわりついてきた。

中學と同じ教育スタイル、いわば機に長時間座りっぱなしの授業はつまらないことこの上ない(殆ど寢ているが)。

だが、授業の余白などにより暇を持て余す時には編集者に刻一刻と迫られている小説の一部を創造している。そう考えれば他の生徒よりも充実に過ごしていると言えるのだが……

「はーーい」

「分かりましたあ」

を掌に乗せている絵を想像してほしい。出來ればそれを飼いならしている飼い主もだ。目の前にいる生が自分よりもよっぽど小さくがあると微笑んでいる飼育者。

そしてそれに呼応するように瞼を閉じたり、鳴き真似をして気を引こうとする小。今になってはこの立場が反転、クラスでは天変地異が起こっている。

「なあ、俺らの擔任って當たりじゃね?」

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「キャラが固定されてて接しやすいよねーー」

クラスメイトのどちらからも擔任を好いている。教室のロッカー付近、廊下側、窓側とあらゆる場所から高評価だと謳われているが、俺はというとそこまでとは思わない。

確かに接しやすいと言えば接しやすいがそれは建・前・だ・、噓偽りの仮面を被っていることには変わらないのだと俺の中で語っている。

「先、行くわ」

俺が教室における現時點でのヒエラルキーを第三者として予測していると如月は荷が整ったのか忽然と席を立つ。と思いきや擔任と生徒とが話している集団の中を大膽不敵に突っ切った。公道をブルドーザーで橫切るってじだ。

ただ俺の思想の代行者であるようにも見え、後のラファイエットになるんじゃないかと笑い話にもなり得ないフラグを立てているように思えてならなかった。

(掃除)

昨日と同様二人欠損したままの人員で掃除をすることになったが、変わったことと言えば俺と神無月の関係だろうか。良い意味なのか悪い意味かどうかは知らないが。

「ねえねえ、回り回って結局どうするの?」

「同じ言葉を連続して使うな、それと主語、述語ぐらい言え」

第三文型とか第五文型だとか発展させなくても英語は大話せる。だが、それは第一文型という最も基本的な構造を理解してから。

しかしながら天然という名のお転婆キャラを演じているのか、そうでないか実のところはっきりとしないが、俺は念のために突っ込みをれておいたのだ。

「ふふふふふっ……」

その割にはさらに予測不可能な返答というか、魔訶不可思議な笑みで悶えていたので俺は戸いながらこう言うしかない、

「何が可笑しいんだよ」

と。の不真面目さなどに興味がない俺にとっては理解しがたいと主張するように。

だが、やまびこをして戻ってくる聲が別の聲に聞こえるように俺の意表を突かれた。

「いーーや、なんだか曲谷君って面白いなって」

終始、俺の頭上に「?」が浮かび上がる。

「ほらっ、そういうところだよ」

「どういうことだ?」と頭を傾けて意思表示すると、俺の正面で雑巾を持ちながら突っ立っているこのはさらに口角を釣り上げて笑みを深めた。

「だーかーら、そういうところだって。クラスの中じゃ『ぽけーー』って仏像みたいに何処見てんのか分かんない顔しててさ、浮かない顔だなって思うの」

「でもさ!今みたいに話していればフツーに表を面に出す人なんだって、話してみて実したわけよっ」

神無月が語るように俺はクラスキャ、ヒエラルキー最下層だ。だが俺はそんな噓で塗りたくられたにすがりたくないのだ、自分を偽って格すら模倣する奴らなんて反吐が出る。

だからこそ、自分を真っ向から見てくる人など新鮮さの塊のようにも思えてならなく、一瞬戸いを隠せなかった。

「っ、まっまあそうだな、俺だって人間なんだからくらい顔に出ることくらいある。かの有名な理學者アルベルト・アインシュタインだって試に失敗してるんだ。人間、意外なことだって誰にでもあるんだ」

俺が一連の言葉を悠々と演じていると目線の先にいたはずのがいない。視線を右に左へと移しても視界に映らなかったのでポルターガイストかと恐れが湧いたが、謎はすぐに解明された。

「よく知ってるね……」

「って、うおおいっ!」

そこにいたはずの人が突然出てくるパターン、つまりは他人を脅かす手法には二つある。一つは後ろから飛びついたり耳元で「後ろにいるよ……」と囁かれる場合。神無月は二つ目の方法を取ったのだ。

「なんで下に隠れてんだよ……蹴ったら危ないだろ」

二つ目の手法、それは目線に映らないように膝元に隠れるのだ。とはいってもこれも視線を下にかしたら通じない方法なのだが俺はまんまとその罠に嵌まった。

「あははははっはは」

階段に響き渡る浮いた笑い聲、嘲笑じゃないのが俺の心を傷つけない唯一の助け船だ。

「だってーー面白いんだもんっ。ほらっその面食らった表、寶くじが當たったんじゃないかと仰天しているような顔。こんなに表かな人、出會ったことないもん」

両手を後ろに繋いでこちらを振り返りながら話しかけてくる姿。昨日の放課後と同じスタイルでからかってきたのが余計あざとらしさを醸し出す。

「ああそうかもだ、俺にはそんな意外も持っているのかもな」

だが、雑巾が握られている神無月の手元を確認してから「まだまだ甘いな」と。當の本人には聞こえない聲量で呟いた。

だからといって俺はこの笑顔を振りまく生徒のことを完全に理解することなんてできなかった。

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