《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》085.序破急の序の序~語の幕開け~
Re:転生直後
登場人:主人公カトレア、謎の(推定12歳)
俺カトレアはどうやら高校に向かう途中でトラックとの接事故に巻きまれ別の世界に飛んだらしい。
巻き込まれた、と表現するとなんだか自分だけが異世界に選ばれたような、他人よりも上に立ったような優越があるのだが。
俺のみが転生しているというのは何とも信じられない。それに、俺の爺ちゃんやひいひい爺ちゃんやそのまたひいひいひい……と過去永劫に渡ってこの世を去って、また別の世に飛ばされているのかもしれないと思うとどうもプレミアムもじられない。
まぁ、俺の転生先に爺ちゃんも転生してて遭遇したらそれはそれで稽な話だろうが、止めよう縁起でもない。
と、なんだか自問自答しているためか、落ち著かないといった何とも悶えるこの気持ちを抱いているのは、きっと俺の所為だけではないのだろう。
「ねえ、ねえ……起きてってば。ほいほいほいほいっ」
白、無地のベッドに仰向けで寢そべっていたらしい。右手をかそうとすると、右手がく。また反対に左手をかそうとすると左手がく、とわざわざ考えてから行を起こしたわけではなくほぼ同時に俺の両手はいていた。
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どうやら人間のようだ。
なぜ自分自が暗闇から目覚めて(というのもトラックに轢かれて異世界に転生するまでの間は暗い闇の中で漂っているじだった)、さっそく掌のがあるか、足があるか、心臓はあるかと確かめたのには理由がある。
自分が何者か自覚するためだ。転生前、つまりは男子高校生であった俺はアニメやラノベ、ゲームと沒頭し、いわゆるオタクとして消費者世界の傀儡に過ぎなかった。
現実としてまさか転生などあり得るのかと初めのうちは思ったが、遠き慮りなき者は必ず近き憂いあり、なんて言葉を信じる俺ではなく、今起きていることを十分楽しめ、と言い聞かせ、すぐさまこの異世界になじむことにしたのだ。
そんなこともあり、異世界に転生したら、自分はどんなキャラクターになっているのだろうか、と何ともソシャゲのガチャでレア度が高いキャラが出てしいと願うように、俺は自分ののを好奇心を彷彿させてじ取ったのだ。
人間だった。
手足合計四本。心臓と管もあるし、息を止めようとすると苦しい。髪のを引っ張っても、手の甲をつねっても痛い。
そうして手足の、痛覚と確かめた俺はベッドから上半を起こし、今さっき俺の両肩を揺さぶったエルフ……ではなく、下半に乗っかっている(推定12歳)に聲を掛けた、というか荒らげた。
「出でよ、我が僕しもべとその従僕たちよ!!」
中二病満載のき、もし現実世界において高校の教室かどこかでやったらさぞかしネタにされただろう。
眼前に座る目の前のは、ぼうっと俺を眺めている。今思えばよく見てみると結構かわいらしい。しいというか、里親になりたい気分だ。クリクリとしたビー玉のような目に小さな鼻と口。髪のはさらっとした手り。手も腕も人形のように小さい。
だから順當にいけば気になったのはまさしく聲だ。
「おおーー!!王様だぁ」
バンザーイとばかりに両手を挙げて、げが垣間見える高い聲。なるほど完璧だ。
して自分のことを想像されたと勘づいたのか、どうやら目の前のは眉間に皺を寄せた。
「……しないの?」
すみません。どういうことですか。
テンションの上げ下げが急すぎて俺にはついていけないんですけど、そもそも何ですか、一度もリア充になったことがない俺にけでもかけてくれたんですかね、神様様よ。
神様様ってなんだ。神様に様をつけたらどっか名前に見えるけど俺が言いたいのは神様に敬意を示したいわけであって。
こんなを前に生まれ変わり、そして何らかの催促を子にされる。
あぁ、俺はもう死ぬのだろうか……
いや死んでるな。一度死んでいる。
待てよ、因果応報という言葉が俺のいた世界にはあったような気がするが、俺は自分から良い事をしたことなんかあったか?覚えてないだけなのかもしれないが……
俺が考えている中、外の世界は數分経過していたらしい。
ああ、こういうことか。
空中で停止させたの両手に俺は自分の掌を合わせると、再びパチンと鳴らす。
ハイタッチだ。
いや異世界に飛ばされて早々ハイタッチですか。行く先読めない転生先だこと。
今思い返すとどうしてあんな妄想をしてしまったのか、恥ずかしくて思い出したくない思い出になってしまった。
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現実世界(曲谷孔)。
ミーンミンミン、ミーンミンミンと書くまでもなく想像できる悲鳴にも似たび聲はせわしなくき続けるこの両手を今にも邪魔をしているように見える。
そもそも「ミ」と「ン」の羅列からしても鬱陶しさがを示しているというか、確たる的証拠のようなのに、こんな狀況を日本人は蟬時雨と言い表したようだが、俺にはどうしても日本人が季節やその他諸々を解したようにも、優雅で風流の持ち主だとも思えない。ただこのむさくるしいほどの暑さを皮ったようにしかとらえられないのである。
さらに言うならば、ミンミンというのは文字変換すれば「眠眠」であるのだがこれのどこが眠れる要素があるのだろうか。快眠音でもなくただの騒音でしかないはずなのにいい加減「ミンミン」ではなく「シャンシャン」とハンドベルを振り回す方がそれとなく似つかわしいのではないか。
まぁ、ハンドベルというとクリスマスが到來してサンタさんでもやってきそうなじがするし、季節がずれてそれはそれで稽のようにも捉えらるのかもしれないが、気溫はどうやっても変わらないのは全く腹が立って仕方ない。
そうして、最高気溫40度超、度も7割を超えるという、まるで焼売にでもなったような気分でいる俺はキーボードを打つ手を止めずに溜息だけをついたのである。
決して気溫だけではない、理由とともに。
「あら、どうしたのかしら?まさか、もう疲れたなんて言うのかしらね」
そこに冷卻機、ならぬ神的ドライアイスを背中に押し付けてくるのはほかならぬ水無月桜しかいない。編集者である彼は俺の方を恐らく眺めながら(俺はパソコンを凝視しているので背後にいる水無月を確認できない)、冷ややかな言葉を浴びせてきたのだ。
「いいや、疲れてはいないが、どうにかしてこの鬱憤晴れぬ焦熱地獄を何とか出來ないものかと」
「そうね…………」と俺の冗談を8割含んだ問いに真面目に解を得ようと、悩みこむ水無月。いやそこまで真剣に考えてもらうとさすがにこちらとしても申し訳ない……。
「それなら北海道に行けばいいのではないのかしら?」
「突発的なジョークを言われて俺はどう突っ込んだらいいのか分かりません、リカイフノーデス」
まさにその通り、答えながらも自で納得した。だが、水無月は微塵もそんなこと思ってもいないらしいようで俺は言葉を失った。
「冗談なわけないでしょう、もし涼しいところで作業が進むのならそうするけど……どうするのかしら?あ、一つ言っておくけど金銭面は安心しなさい、今までの私の印稅なら余裕だから」
「そういうことじゃないから!!というか、さらっと凄いこと言ったな、あんた」
ふん、と鼻を鳴らすと再度俺を蔑むような目付きで水無月は答えた。
「平凡よ、平凡。こんなの執筆者として當然のことよ」
それが書き手として通念であるとしたら、小説界は金遣いが荒い集団と化すだろうと心思いつつ、俺は「ハイハイ、さいですか」と呆れた返事を返した。
いやしかし……変な想像をしてしまうとは面倒なことになった……
しかも水無月が來てからまだ10分も経っていないぞ。
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