《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》087.捻り曲がった考えとリアクション(♮)

では、一何が整えられなかったのか。何かと項目がありすぎるような気がするが、一応三つ挙げてみようではないか。

まず一つ、部屋。

致命的だ。

言うまでもなく、論する必要もなく、言わずもがなというやつである。

しかし本日正午に水無月桜なる同年代高校生、加えて異である彼が訪れることになっていることは前から知っていたわけでどうしたって掃除をする時間が無かったわけでは決してない。旅行に行っていたわけでも、病気や何か患いにかかって寢込んでいたわけでもないし、至って健康萬事良好狀態であった。

だが、それがどうした。俺が健康であるから部屋を綺麗にする時間があったというのはイコールではない。むしろ健康であるから自宅外に出てしまい、要するに自宅で過ごす時間がなくなってしまったのだ。いえいえ、掃除が出來なくて逆ギレなる開き直りをしているのではなく、論理的に思考してみてから出た疑問である。

用事は無いから、くから掃除はしなくてはならない。

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そんな決め事は一切、誰も決めてはいないではないか。あえて意味を履き違ってみるならばかせるからかさないのだ。人間は常時ける、病気でも患わなければけない、ともじ得ない、思おうとしない、なぜならばそれが當たり前だと思っているからだ。

ゆえに、俺が今掃除を隅から隅まで行えていないということは人間として當たり前のことなのだ。

二つ、著替え。

これも致命的である。

いや致命的であるかどうかは水無月自が考えることで俺が俺自で考え悩むことはそこまで重要視するものではないだろう。それもそう、俺を直視し、判斷するのは俺ではなく、俺を見る他人であるからだ。

趣味の欄にファッションと書く人もいるようなので確かに自己満足するために、鏡で自分の姿を見て「あ、オレ、イケてるじゃん」などと怖いことを言う人も中にはいるのかもしれないが。

しかしそれも他人から自分がどう見られるのか、考えていないはずがない。つまり、俺は俺自で自分の服裝に関して評価する必要は全くなく、変な服裝を著ているからといって俺自に非があるわけでは決してないということだ。

三つ、執筆準備。

これはもはや言うまでもない。致命的を超えて失敗にしかならない。

ん、だがこれもさっき述べたように俺のみに非があるわけではないのではないか。恐らく検討違いということもあるのかもしれないが「非」ではなく「琲」であったのだ。

同じ非を用いながら王がくっついた漢字、コーヒーの「珈琲」でも使われるし俺にピッタリではないだろうか。しかも訓読みは「つらぬく」だったそうだ。珠を繋ぎとめた髪飾りか何かだとする言い伝えもあるし、この信念をまさしく貫く縁起のいい単語ではないか。

そう考えよう。

納得納得、これで萬事解決。よかったよか……

「よくないわよ」

寒い風呂にっていきなり冷水シャワーを浴びせるような聲。

「さすが妄想力を使うだけで何もしない、ホバリングして鬱陶しいことしかしない翅蟲と同じね」

俺のことを翅蟲と喩え、貶す要素しかない言葉ばかり使う人はこのしかいない。

「……申し訳ないです、こればかりはぐうの音もでません」

ところで羽から翅に変化したのはメリットと考えても良いのだろうか。言葉的に高度になったと喜んでも平気なのだろうか。

というか言葉的に高度ってなんだ、まるで小學生が授業中に「センセー、分からないでーーす」と言ってクラスメイトを笑わせているのと同じように、政府のお偉いさんが「想定外です」と発言しているのと変わらないのではないか。

申し訳なさをこれまで以上に、多分高校生活の中では上位3位にランクインするぐらいに醸し出す俺は、水無月桜の隣に立っている妹の時雨に今更ながら気づいた。

しまった。

恥ずかしいったらありゃしない。

無論、実の妹に見られたわけではないが、もうすでに妹みたいな妹じみた弟みたいなもので。つまるところ義妹の曲谷時雨に、俺が他のに頭を下げているところを見られたということは、あまりにも直結的に笑い話に仕立て上げられてしまうと、目に見えていたのである。しかも掃除やら支度を一通りしてから、玄関を出たので猶更恥ずかしさ満點だ。

「ホントですよねーー、用事があるのなら準備というか、編集者さんが來ることを予想して早く起きればよかったのに」

貓だ。それに、じ・ゃ・れ・て・い・る・貓だ。

まるで飼い主の顔を時折伺うかのように口で遊ぶ時雨は、玄関から出て水無月を迎いれた後、あのけたたましい軍人姿を止め、貓被る営業セールスマンにジョブチェンジしたということだ。

外の顔は、小學校においては児會長、中學校は副會長、會長とトップを擔い、そして現在。セールスマンということだ。々無理がある話だが。

しかしそれは今のこの狀況で重要ではない。勿論、俺が編集者と會ったら禮儀作法はしっかりなと教訓めいた、當たり前の何かを話していたわけではあるが、俺を蹴落としまで良・い・顔をしろとは言っていない。

「まぁ……その點に関しては謝るほかないからな」

「別にいいわよ、作業が出來ればそれでいいのだし。でもまぁ……一応子高校生を家にれるということを考えてもらえたら良かったのだけれど……」

「そこまで汚くはないから安心してくれ……これでも綺麗好きなんだからよ」

ってから決めるわ……でいいのね?」

同意を求める水無月はどうやら本當に、噓でも何でもなく俺の部屋が相當に汚らしいのではないかと想像しているのか俺がGOと言うまで躊躇している。そこまで不安がられるというか、不信を漂わせられるとこちらとしても傷つく一方なのだが……

俺はゆっくりと頷くと玄関前で繰り広げられた會話に一區切りついたようで、ようやく水無月は自宅に足を踏みれた。ちなみに俺は先に玄関にり、あとから水無月が付いてきたというじだ。

そう、ゆえにもう一人外にいたはずの人が自宅に戻らないのである。

一人、義妹の時雨である。

貓を被っていた時雨はどうやらさらに貓化したのか、警戒心と好奇心をめた瞳をしていた、というのは勿論噓であるが(そもそも離れている人の瞳の奧なんてどうやったら見ればよいのだろうか)、ボクシングをするカンガルーのように両手をのあたりで掲げてこちらを注視している。

観察している気分でいた俺は、どうしてそんな構えた狀態で突っ立っているのか訊くことを忘れてしまい、時雨が自ら話し出さなければ、結局のところ、分からなかっただろう。

「まって……編集者さんって、高校生なの?兄と同じの?」

玄関でスニーカーに見える黒い革靴をぐのを止めてから、「そういえば私の名前を言い忘れていましたが……」と踵を返し、

「私は山が丘高校一年の水無月桜です」

「それと……ヒカリレーベル文庫東京編集部の如月桜でもあります」

あたかも軍人のような自己紹介に怯んだわけではなく、ただ単純に信じられない、といったあたりだろうか。

「え、えええええええ!!」

そういえば水無月が編集者であり作家でもあることを知った時の本來のリアクションはこれが普通なのだろうが。

俺はどうやら忘れていたようだった。

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