《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》106.水無月桜も知っていた既知の事実(about 神無月茜)
廊下を戻るように歩くと、結局のところ前回話し合ったアウトドアリビングに落ち著いたのだった。
外の景観を一できるように、屋からガラスが突出した構造となっている。俺と水無月はやはり、白のガーデン用丸テーブルを間に置き、変わらないアルミ製のスタッキングチェアに座ることになった。
「そもそも子が自分の部屋に男子を連れ込むことがおかしいだろ」
「そうね、私としてはこれも仕事だから別に平気だけど。あなたはそう考えられないものね、そこまで予想出來なかった私の罪でもあるわ」
なんだかこれでは俺が仕事以外の為に、我を満たすがために水無月邸に訪れたような口ぶりで度し難い……まぁ、皆目見當全て拒むわけではないので、何とも言えないが。
「もしかして……男子との付き合いがないとか?」
「どうしてそんな話になるのかしら。私には煽り文句のようにしか聞こえないのだけれど。もしそうだとしたら、私はあなたのを地球上の人類に明かしかねないわよ」
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イエス。煽ったのは確かだ。だが……
「い、いやもしそうだとしても、あんたにはそんな影響力なんて無いはずだ。そこまで蕓能界で有名なわけでもあるまいし、ましてや政治的な主張をする立場でもあるまい」
「あら?私をそんなちんけな人間だと思っていたのかしら?ならその見當違いな考えは全て抹消した方が良いわよ。私には簡単に報を回せる、あることないことでっち上げて、様々な人間層から言い聞かせることも難しい話ではないわ」
「出版社の人間、取引店、販売店との結びつきもある。さらには、コミュニケーション(アプリ)だってフォロワ―10萬人。余裕よ」
生々しい話ばかりで如実にリアルさがじられる。この編集者様はやはり対抗しては、敵対したら面倒なのが目に見えて浮かぶ。
「はいはい分かったよ。あんたは男付き合いが得意で仕事と割り切れる完璧ウーマンだと。それでいいか?」
俺が呆れたように、さも面倒事を抱えたことに言うと、なんとも頬を赤面させながら水無月は答えた。
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「……そこまで言えとは言ってないけれど……というかあの時は……その、噓ではなかったのだし……」
「あ?なんだ?最後の方が聞き取れなくて悪いが、何て言ったんだ。もう一度言ってくれ」
聲の調子が徐々に弱弱しくなっていくので、聞こえなかったのは噓でも何でもなかった。
「もういいわ、羽蟲がどう聞こうと、人間の言葉は通じないもの。それにこれ以上問い質すことになるのなら私としてもあなたのブラックなヒストリーをばらしまくってもいいのかしら?」
ブラックなヒストリーってなんだよ、そのまんま「黒歴史」って言えばいいじゃないか。って俺の何を知っているんだか。
「俺が知っても良い容なら聞きたいのだが、一そのブラックジョークはどんなものなんだ?」
「そんなの決まってるじゃない。クラス擔任と斷のの沼に落ちて、駆け落ちに走るって話よ。まさに泥沼展開、晝ドラみたいな話ね。世のおばさま方はさぞかし気にいるでしょう」
「おいおいおい、ひとかけらも真実味のない噂話というのは流しては良いものなのか?まぁ……俺の真の黒歴史はさらされないのは有難いが……」
水無月はティーカップを口元に運びながらそう言うと、俺はどうしても彼が著ている白のロングワンピースが汚れないか不安にさせられる。白の小さなフリルが元についており、その上に青いペンダントを首からかけている。
高校では飾りものなど目もくれずといったところなのに、屋敷の中では彼なりに容姿について考えているのだろう、俺には派・手・に見えていた。
ティーカップを小皿の上に乗せるとともに水無月は聞いてきた。
「あら、その言い方ならば私の知らない過去があるらしいわね、聞きたいわ。いえ言いなさい」
っても外見だけ変わるのは水無月限らずにはよくあることだ。全くもって高校にいるときや外出しているときと口調に変化が見られない。つまり、中において変わり映えなんてすぐには起こらないのだ。天変地異が起こらない限り。
「そこまで尋問のような言い方をされても俺は言わないぞ。弱みを握られるわけにはいかないからな。って、それはそれとして、さっきの話だ」
ん?とさりげなく知らないような雰囲気を匂わせるので俺は二度言った。
「だからあんたはどこで書きしてるんだって話。自分の部屋で進めていないってことは、この屋敷のどっかで別の作業スペースとかあるんじゃねーの?」
「ああ、そのことね。ならそんなの簡単じゃない。ここよ」
「ここって屋敷のことか?そんなのを聞いているんじゃないだが……」と俺が言うと即座に返された。
「ここよ、ここ」
水無月は両人差し指で床を差すとようやく俺は理解出來た。なるほど、自分の部屋で勉強出來ない人がリビングで勉強するというのと同じということか。
「つまり、ここリビングか」
俺も水無月と同様のポーズを取る。
「そうよ。広い部屋の方が資料とか置くことに困らないの。寫真とか、本とかね」
勿論、この屋敷で広々としているのはこのアウトドアリビングくらいだろうーーまだ全ての部屋を見つくしたわけでも、この屋敷の見取り図を頭にれたわけでもないが、屋敷の外見からそう判斷しても妥當な広さなのだ。
ソファに、ローテーブルぐらいしかない部屋の裝でも、十分彼にとって作業できる空間にり得るということか。
「なるほどな。まぁ、そこまで他人のことを詮索するつもりはないからそれ以上聞かないことにして。んで、次に俺は何をしなくてはならないんですかね?まさか『何を言っているのかしら?この続きを読むのよ』なんてつまらない解答じゃないだろうな」
俺はそう言いつつも、ショルダーバッグから一冊の本を取り出し、水無月のもとへ差し出す。本のタイトルは『自作の小説が出版されるまで~序章~』。水無月自が著者である本だ。
どうせ作業以外のことを推奨するとしたら、おそらくというよりか、ほぼ確実的にこの続きの本を読めと言われるのだろう。それはもう重々承知、予想たりうることだった。
「私の口調を真似されたのはいささか蟲唾が走るのだけれど。けど、半分あなたの言う通りで、半分ミステイクね。いえ、もう100%ミステイクかしら」
ミステイク。間違いとは。それに100%というのも看過できない。それじゃあ俺が続編を読むことを奨勵しようという意志が無くなるのではないか。
「あなた……私に何か言うことはいのかしら?」
「それはなんだ、この本を読んだ想とかか?そりゃあさぞかしタメになったよ。出版しても簡単には売れることが無いとか、そもそも売りに出されることが無いとか。現実的なこった」
テーブルに置かれた自分の本に一瞥をくれると、溜息を洩らした。
「なわけないでしょう。ここに來るにあたって、あなたの周囲が違和で一杯よ。それに……私よりも自分自がもっと理解しているのではないかしら?」
異変、違和、奇異。まさか……いくら俺の擔當編集者であるとしても前日に何をしていたのか、なんて當てることは可能なのか。館に行くことを名目に、神無月茜自のを明かした昨日の出來事について、知っているのか。
「って……何を言っているんだよ。違和?珍しいな、水無月がそんなオカルト紛いなことを信じるなんてらしくないじゃないか」
俺がそう言うと、水無月は呆れたように俺のショルダーバッグを指差した。
「では、あなたのバッグから飛び出ているそ・れ・は一何かしらね?みっともないわよ」
指の先にあったそ・れ・の正に気付いた時、いや思い出した時、俺は悟った。噓を見破られた恥というよりも忘れていた自分に。
「その贈りは誰宛なのか?まさか私ではないでしょうに」
バッグから顔を出すように飛び出ていた包裝紙。たしか……10cmほどのボールペンが包まれているはずだ。館にった直後に神無月が提案してきたプレゼント換の贈り。
由井香の登場から、神無月……いや出雲流の悩みについて思考を巡らしているうちに忘れてしまったのだった。
前日の出來事を単に仕事上の関係で、あいつ神無月と俺は資料がしくて館に行ったということに済ますなんて、この水無月桜にそんな噓はつけまい。
だから白狀することにした。神無月茜出雲流が俺の小説のイラスト擔當になることを。
「ごめんなさい。隠してた」
しかし、その言葉謝りは俺ではなかった。
「全て私が知ったうえで、話そうと思っても話せなかったの。神無月さんがあなたのイラストを擔當することを前々から知っていたのに」
殘酷な仕打ちをされたのは神無月だけではなく、どうやら俺の近に、界隈にいた水無月桜もその一人だったのだ。
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