《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》110.文化祭の出しとしてnovel

結局、神無月は俺のイラスト擔當となった。

俺にとって最大の夏休みの課題とも呼べる、「自作の小説が出版されるまで」の読破は終わった。水無月桜が著者であるこの本は主題通り小説がいかにして読者の手元へと屆くのか、道筋が描かれていた。ゆえにとんでもないほどタメになった。

しかし、序破急と三部作にしたのは納得できないものだ。擔當は〆切近くなるとやけに騒々しくなるとか、執筆者は〆切に近づくほど集中力が高まるとか。あまりにもネタばかり書かれていたからだ。このような筆者の愚癡であるかのような要らぬ事が書かれていたところが、三部作もの分量を増やしたきっかけとなったのだろう。

そんなこんなで水無月から繰り出された問題ーー先の本の読破、は解決したわけであるが、現在夏休み終盤。次なる問題が発生していた。いや、いまさら出版の問題などではない。それは夏休みの中場から後半にかけて終わらせた。

何度も高校に通い、俺は校正を、神無月はイラストを描き続ける生活を送り、ほとんどの作業を夏休みの大半に費やした。結局、水無月に頼みゲラも刷り終わったところで、最終確認をするところまでいった。

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ではでは、また回帰して、次なる問題はというと。

「文化祭で短編集を販売しようと思っているのだけど、何かアイデアはあるかしら?」

「じゃ、はい!!だったら、スルトとユリィのバトルシーンを描きたい!!」

効きが悪いエアコンからの生ぬるい冷気が辺りを漂う部屋の中、「卻下」と寒冷前線を部屋に呼び寄せる。

現在時刻、13時と日中でもっとも暑い時間帯に俺は山が丘高校、文蕓部の部室にいた。俺だけでなく、擔當編集者水無月桜とイラストレーター神無月茜も一緒に。案の定、文蕓部の部長はその場にいない中。

「いきなり自分の求を吐したな。神無月」

神無月とは文蕓部に屬している部員の一人。純粋に茶が混ざっている髪で、ショートヘア。気さは誰も勝てそうもなく、どこからそのテンションが出ているのか気になるぐらいだ。

そして神無月は、ネットにアップされている頃からの俺の小説のファンで、スルトとユリィという主人公でも、ヒロインでもないモブキャラを本當にしてやまないのである。

何せ、二人のアナザーストーリーを書き下ろしてしいと懇願されるほどだ。

俺にしてはそこまで重要視してないキャラ達なのだが……

「えーー何その言い方。みなが何かアイデア出してって言ったから出しただけじゃんーー」

俺の言いたいことを代弁するように水無月は言う。

「でも、私も彼の言っていることには否定できないわ。描きたいのはもちろん分かるけれど、それだと二次創作の話もあるのよ。もし、創るのならあちら側、出版社側と話をつけなくてはならないの」

「あの。なんかその言い方だとまず俺の意見を否定することから話を始めようとしているように聞こえるんだが」

何で一々「でも……」って話し始めるんだか知らないが、正論だ。この黒髪ロングの深奧に潛んでいそうなは……いや、ではない。深奧な、なんて言ったがそんなよそよそしいもんじゃないし、ではなく、まさしく首尾一貫冷徹だ。

それこそが水無月桜という人そのものであり、俺の擔當編集者になりうる人なのだが。

「無論、そうよ。まさか知らないの?話し合いをする時、まずは『否定』から始めるって話を」

俺には當たりが強く、いつもこんなじだ。それに……

「今、私のことを考えていたかしら?」

他人の中まで深読みしてくる能力を持っているし(俺にだけ特効)、恐怖になるったらありゃしない。

「知らねーーよ!!あんたのことを考えているなんて、それこそどうかしているって話だ」

「それもそれで心外ね。そこまで言うのはどうかと思うわ」

いつもこの繰り返しだ。向こうから引っかけてきて、釣られても釣られなくても同じ結果。そのナイフを突きつけるような目付きやめてくれませんかね。

そうして、このまま続けても埒が開かないので俺は論點をずらす。こんな時、終わりが見えない話し合いの時にはもってこいの手法だ。

「なあ。そういえば俺たちが屬しているこの部活、文蕓部の顧問って一誰なんだ?」

そういえば一度も相談をしてこなかったような覚え。そもそも前回の新聞の一件だって直接理事長からの達しだったし、活容に対して異論を述べる先生は見たことも聞いたことが無い。

だがしかし、水無月は疑問に耽っている俺を怪訝そうな目で見つめて言った。

「何を言っているのかしら。今更そんな話をしてどうなるって言うのよ?まさか、またあらぬ噂でも流してしいってこと?」

「いや、さすがにそれは止めときなよ。みな」と止めにかかろうとする神無月の姿を見て、俺は不意に思いだした。

全くに覚えのない噂をクラス中に、校中に流され、そしてナントカ親衛隊に追われた、そのナントカ。

理事長の傍にいることも多く、何より、現時點でのクラス擔任であったからか、すぐには見當が付かなかった。

「まさか、掛依なのか?」

「そのまさかに決まってるじゃない」と俺の言葉に対して呆れるように、二度口にしたのだった。

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