《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》126.ジャメヴなのだろうか Game2

***

帰りのHRが終わった。ぞろぞろと教室を出ていく生徒はあたかもヌーの川渡りのような景で、部活をするつもりのなかった僕は帰宅の準備をしていく。

前の席に座っていたぼさぼさ頭の姿もなく、知り合いの顔は誰一人として教室に殘っていなかった。育館で行われる部活説明會へと出向いているためだ。有志だけとは言っても、高校生活=部活=青春と今でも勘違いしている學者が多いのだろう、きっと。

まだ學初日であったためか、持ち帰る荷は筆箱ぐらいで帰宅準備はすぐに済んだ。サブバッグに放り込んでから席を立とうとした時。

ガラッと教室のドアが開かれた。

僕一人しかいない教室にってきた人、それはダイヤモンドのように自分以外の人間が無価値と言わんばかりの凜々しさを兼ね備えていて。

率直に、子人だと思った。

長く黒い髪を背中に下げ、目付きの鋭さは一級品。生徒會長にでもなりさえすればさらに校則が厳しくなるのだろうと想像してしまう。

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謎の生徒は開いたドアから教室にってくると、教卓を過ぎ去り、窓側の席へと近づく。そのまま窓に沿って席の後ろ側に向かってきた。というか、まるで僕の席に近づいてきているようなじだった。ちなみに僕は教室の中で窓側最後尾というポジションを獲得していた。

「僕に何か…………用ですか?」

生徒が僕のすぐ手前まで來た時、思わず僕は訊いてしまった。クラスの端まで歩いてきたんだ、どう考えたって僕に何か用があるに違いない。

だが。

「は?」

呆気に取られていた。何を言っているんだこいつは、と非難の目で見られた。あ、終わった、高校生活初日に知らない子から話しかけられると勘違いした男と全校生徒にレッテルをられる。つまり僕は學式當日に華の高校生生活に幕を下ろすということか。最悪じゃないか。

そうして僕は瞑った目を徐々に開けていった。目の前には変態のように見る眼差しがきっとあるんだろうと、諦めつつ。

「ただの空耳かしら?廊下側から聲がかけられたかと思ったけれど、ほとんどの生徒は育館に向かったはず」

どこ見てんだよ。その聲主がこんな近くにいるってのに分からない方が可笑しいよ。

いや、僕が口にしてしまった言葉じゃなくて良かったと半分喜んでいる僕も居るけれどさ、まさか窓側じゃなくて廊下側を向いているとは思わないよね。

だから一応、知らないふりを裝いつつ訊いてみた。

「こんな時間にどうしたんですか?クラスメイトを探しているのなら、育館を當てにした方が良いですよ」

僕の言葉に驚き思わず振り返る生徒。いやいやそこまでビックリ仰天しなくても良いでしょ。

しかし、一瞬のうちに気を取り直し何事もなかったかのように冷靜な眼差しを裝った。

「何を言っているのかしら?私は誰とも會う約束をしていないし、そもそもするつもりもないわ。一生ね」

そう言うと、僕の隣の席に腰を下ろした。まてまて、まさか………

「そこに座るって……その席は三日月さんじゃ」

「その人こそ、私だとどうして思わないのかしら?いきなり話しかけてきて、今度は偽名呼ばわり、不躾にも甚だしいわ」

おろした長い髪をさっと耳にかける仕草。それだけ眺めていれば、ああ人な人だ、って思うだけなのに。

「しかもせっかく、休日屆を出したというのに、クラスメイトにこうも見られたら何の意味もないじゃない」

その言が全てをぶち壊す。それ、ズル休みってことだからね。間接的に格好つけて言おうとしてるけどさ。

ただ一つだけ、僕から訊いておきたかった言葉が浮かんだ。

「そういえば、三日月……さんは部活の説明會には行かないの?僕は中學で部活をしてきたけれど、そこまで熱中しなかったから高校ではらなくていいかなってさ」

「奇遇ね」

不思議と共を得られる一言だった。

「私も同じよ。部活なんてどうだっていい。高校にったからと言って心機一転人生が変わるわけじゃないし、だったら寶くじの1つや2つ當てるなら話は違うのだけれど」

軽蔑な眼差しは消え、代わりとして殘ったのは虛無。明後日の方向を見つめながら生徒は言った。

「とにかく、私はどうだっていい。だから學式も休んで、部活説明會にもいかない」

けれど、それならば疑問が浮かぶ。

「なら、どうして三日月さんはここに來たの?わざわざ休みって學校に伝えたのに、登校して、でも來たのは放課後。何がしたいのかさっぱり分からないんだけど」

生徒はぽっと湯を沸かしたかのように頬を赤く染めると急に席を立った。

「うっさい!!あ、あなたに私の何が分かるって言うの!?」

と、理解できない罵倒を僕に浴びせてから教室を出て行った。

そんなこんなで、妙な高校生活第一日目も終わってしまったのだった。

 

***

「雑な設定ね、何の変哲もない男子高校生に、矛盾ばかりの生徒。まさかこの二人がに発展していくのかしら」

「ああ……そうだな。いきなり放課後に二人きりの教室って……展開が速いのは悪くないんだが、フィクションがぬぐえない」

ってしまった、また創作者の悪いクセが。

「でもでもーー、なんか見たことあると思わない?ただの勘違いならいいんだけどさ、こんな人たちに會ったことあるようなーー覚えがーー」

ブレイカー神無月。噓ではない、が、このゲームは語であり、現実と重ねるのは以ての外だ。たとえ似てようが似てまいが口にしてはならないだろう、それ。

ふと俺は水無月の様子を窺う。ちらっと、視線を移した先に在ったのは驚くほど冷靜な水無月だった。

「そうかしら。私はあまり覚えがないわ。もしかしたらだけれど、神無月さんが中學生の頃の知り合いに似ているのではないかしら?」

「あーー!!なるなるなるほどの略稱!!みなったら、冴えてるねぇ」

「そうでもないわ」と水無月は話を流すように言った。しかしそれとは対照的に俺は酷く焦りを生じていた。冷や汗を背中辺りでじていた。

學式初日にあえて休んでいるにも関わらず登校。しかも誰も居ないことを見計らって放課後に。見覚えがある。決してイコールではないが、ニアリーイコールだ。

朝のHRを敢えて抜け出し、授業にも出ず、結局教室に戻ってきたのは帰りの挨拶をした後。そして異論は言わせない、アイスブロックのような冷徹な

似ている、あまりにも構図が似すぎている。この作品と俺の現実が。

しかし、水無月は鈍すぎて気付いていないのか、それとも分かっていて知らないふりをしているのか。後者だったらとんだ道化師と喩えてしまっていいほど演技が上手いと思うが。

「このまま続けて良いか?」

「いいわよ」と考せず答えるのを見ると、前者にしか思えない。

俺は再度、平靜を取り戻しながら「二日目に続く」のボタンを押したのだった。

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