《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第86話 「火だるま」と「嫁」②
※無事第1部完結までPC力しました。書き溜めが80話(11/21時點)になってしまったので、投稿頻度上げます。
「ぎゃっはっは!! コレ見ろよ暖斗! スカート毎回燃えっから、もうほとんど殘ってね~じゃんか。常時か。常時出か? なんで著替えね~んだ。このエロ」
「‥‥エロザベータね」
「お、の名前憶えてんじゃん。さてはお前(ま)。このマンガ気にったな?」
クセが強いんじゃ! と言いそうになるのをの前で止めた。
とにかく、ラポルト子に嫌われる前に、この場を切り抜けたい。
‥‥‥‥‥‥‥‥まあ、マンガの悪口ばかり言っちゃったけど、いい所もあるかな。絵は上手いから、ヒロインの子がすごいカワイイんだ。名前はアレだけど。
そのちょっとい顔立ちのカワイイ子が、‥‥その、なんだ‥‥ミニスカートのさらに焼け落ちて短くなったヤツでスープレックスかますから‥‥。
ま、まあ。ライドヒさんみたいな高校生が食いつくのはわかるな。うん。‥‥カワイイくせに々見えちゃうからなあ。毎回。
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「何見てんの。ベイビー!」
「はう!!」
麻妃だった。や、驚いた。心臓が止まるかと。
通りかかって僕を見かけたらしい。そういえば、依の「ライドヒさん被害報告」に、麻妃はって無かったなあ。まあ、無事にこしたことはないんだけど。どして?
「お~~!! 麻妃ちゃん。俺のとなり來いよ? ほれ。‥‥暖斗席替われ」
「気安くさわんなっての! 暖斗くんもそのままでいいから」
「痛って!」
僕の後ろに著こうとした麻妃を、ライドヒさんが腕をつかんで引っぱって。
それを指先で、ぱちん! と弾いていなす麻妃。
麻妃って、ライドヒさん平気なんだ。‥‥いや、昔からそうか。そういうキャラだ。こんなじだから、ライドヒさんにも怖じしないし、いい意味で被害もないのか。
「お前(ま)っちってさあ。『紙の本』持ち込んでんだってなあ」
と、気を取りなおしたライドヒさん。
「うん。ひとり一冊以上。必ず、って」
「麻妃ちゃんはどんなん持ってきたん?」
僕はぎょっとする。「ライドヒさん! 待って!」
「へっへ~。知りたい? しょうがないな。持ってくるか」
麻妃はその「紙の本」を取りに自室に向かってしまった。
僕は麻妃が戻ってくる前に、ライドヒさんの説得を試みる。
「麻妃は。アイツ相當変わった趣味してるから。昔から」
「い~じゃん。マンガだって? 子向けも俺、守備範囲だぜ?」
「僕は見たくないんだよ。ゴハン前だし――――」
麻妃が、「おまた~」と戻ってきてしまった。単行本1巻と2巻を小脇に抱えている。
それを手に取るライドヒさん。
「‥‥‥‥ふ~~ん。『嫁(よめ)悪魔(イビル)』、ねえ」
「そう! 義嫁モノだよ。第三席(サード)で嫁いだ主人公が、第一席(ファースト)や第二席(ゼカンド)、つまり長嫁次嫁に、とにかくめられるんだ」
「重婚生活、嫁×嫁バトルか。ありがち~」
「そうだゼ! 後から來た第四席(ラスト)の末嫁や、最後の心の拠り所だったダンナにまで! そのめに耐えかねた主人公の、溜めに溜めた怒りが発する――――! くうぅ!」
う~ん。ここでしみじみ思った。麻妃は怒りやストレスを「溜めない」タイプだ。ある意味、この「長期間験乗艦」に最高に適した人材。まったく疲れた様子もない。
でもそれゆえに、このマンガ「嫁(よめ)悪魔(イビル)」の主人公に惹かれてるのかな? 自分と180度真逆のタイプだから。
この主人公の子は、確かに常識人で真面目な子なんだけど、「言いかえせばいいじゃん?」、「そこはちゃんと理由を言って、自己弁護するべきだよ!」って場面でも引き下がる子なんだ。もどかしい。
「いいんです。‥‥‥‥きっと、私がわるいんです」
ってポジを取る。ある意味、絋國の気持ちの、寫し鏡。
社會や國家からの不遇、という現実。
自分では到底どうする事もできないその現実に、「もういいです」と匙を投げた境地。
そして、そこからの、――――破滅的な暴発。
「へえ。楽しそうじゃね~~か。そういうドロドロ復讐系、俺大丈夫だぜ」
「じゃ、2巻の後半くらいからか、『ざまぁ』展開は。主人公の復讐編だから。その辺からでもどう?」
「オッケ。いやしかし、『の敵は』ってか。ヤだねえ」
‥‥‥‥ライドヒさん。アナタのムーブもたいがい、「の敵」なんですが‥‥
*****
「紙の本」を両手で持って、視線を向けるライドヒさん。一転靜かだ。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
ライドヒさんの顔が土気になり、額からあぶら汗が出てきた。
ほらね。
「‥‥‥‥うん。‥‥‥‥わかった。すげえなコレ」
と、彼が閉じようとした本を、麻妃がこじ開けた。
「あ~、ダメダメ。そこじゃあ復讐の前半だから。せめて後半までは読まなきゃ!」
「うん? いや、オレは‥‥」
読んでしまったライドヒさんの、手が震えだした。
「ね! スゴイでしょ? ハンパない復讐劇☆! いや~。このマンガのファンが増えて良かった。宣教師気分だ。同士ゲットだぜ☆!!」
――麻妃、その「同士」には僕はってないよね? ‥‥いや、訊かないけど。
*****
麻妃は去っていった。そういえば麻妃はライドヒさんに対してタメ口だったなあ。まあ麻妃は割とそうか。
無言のまま、機械的に、仲谷さんの作った不思議な味の焼き飯? 的な米を口へ運ぶライドヒさん。
僕も、前にアレを読まされてたのを思い出しちゃったから、正直味がしない。
食も失せてしまった。‥‥‥‥だからゴハン前はいやだったんだ。
「‥‥‥‥人って、あんなにも殘酷になれんのかな?」
手を止め、目に涙を溜めながら、うつむいてつぶやいたのが印象的だった。
僕は、「さあ‥‥」とだけ答えた。答える気力もないから。
「なあ。暖斗」
「はい」
「俺のわがままひとつ。聞いてもらっていいか? ‥‥いや、頼む。黙って『うん』と言ってくれ」
「え? 何?」
「あのさ‥‥‥‥メシ食ったらもっかい『火だるま』、読もう‥‥」
――うん。そうしよう。
「火だるまの」
あれは名作だよ。
※麻妃ちゃんご推奨の「嫁悪魔」、スピンオフの予定はまったくございません。
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