の黒鉄》第24話 第一水雷戦隊、突撃せよ!

第二は敵六番艦の手前に三発とも著弾をする。

「上げ二〇!」

第二のデータを元に更なる計算が加えられ、各砲塔にデータが送り込まれる。

この間にも敵弾は容赦なく大和を打ち砕いていく。今回は今までで最多の四発が命中した。

一発は艦橋基部に命中。裝甲で跳ね返しはしたが、艦橋を激しく揺らした。もう一発は大和の左舷にあった副砲に命中、これを中にいた砲員共々砕した。この時、中の砲弾がを起こし、今まで一番大きい音がした。最後の二発は先ほど命中した艦橋後部を襲い、先ほどの命中箇所にほど近い兵員居住區に侵。ここを燃えかすの固まりに変える。

一撃一撃は致命傷にはならないが、確実に大和の戦闘能力を奪っていった。

そしてついにこの砲撃で米戦艦五隻が大和に挾叉ないしは命中弾を送り込むことに功。ついに大和を五隻の斉弾が襲うこととなる。

「不味い! このままでは大和が持たんぞ!」

流石に焦燥のを隠しきれなくなった宇垣がんだ。

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普段であれば冷靜に止める古賀であったが、今回ばかりは彼も焦燥のを隠しきれなくなっている。

大和はこれらの砲撃に負けじとばかりに第三を放つ。

しかし、この時米戦艦郡を狙っていたのは何も彼らだけではなかった。

「ようやく米水雷戦隊を抜けることが出來たか!」

米戦艦に雷撃という巨大な牙を突き立てんと突撃を行っているのは第一水雷戦隊だ。

第一水雷戦隊の旗艦を務める軽巡洋艦の阿武隈に將記を掲げるのは大森仙太郎。彼の指揮下には第六駆逐隊の暁、響、雷、電。第二一駆逐隊の子日、初霜、初春、若葉。第二七駆逐隊の有明、夕暮、白、時雨の計一二隻がいたが、先ほどの米水雷戦隊との戦闘で第二一駆の子日、第二七駆の有明が相次いで魚雷発管に直撃弾を喰らい一撃で吹き飛ばされ、第六駆の暁、響が被弾により艦隊から落伍した。

よって今突撃を行っているのは彼らを除いた計八隻となる。

本來であれば第一七駆逐隊の浦風、浜風、谷風、磯風もここにっているが長門、陸奧の護衛のため臨時に別行しており、この場にはいない。

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「さて、どの距離から投雷するか?」

現在、米戦艦は二列に並んだ並行陣を敷いている。第一水雷戦隊はこれを米艦隊から見て左舷側から突し、魚雷を発する作戦だ。

必中を期するのであれば、かなりの至近距離からの雷撃がまれるのは言うまでも無いであろう。しかし、近すぎては必然的に敵の砲撃の命中率も高くなり、ここの見極めを行うのが水雷戦隊の指揮のつとめだ。

「各艦に伝えよ! 雷撃距離七〇」

「雷撃距離七〇、了解!」

阿武隈の艦橋に據え付けられた探照燈を用いて僚艦に雷撃距離の指示が伝わる。

し遠いのではないですか?」

阿武隈の艦長村山清六が尋ねる。

「いや、今回の作戦において最も大事なことは米艦隊に混を起こすことだ。見てみろ。既に敵の重巡が出てきている。おそらくは俺たちの雷撃を邪魔する気だ。奴等の主砲に捕らえられればこのブリキ缶は持たんよ」

見れば米戦艦への進路を塞ぐように重巡が四隻、白波を立てながら向かってくる。

「敵艦、発砲!」

「おお、気の早い! もう撃ってきなすった!」

見張り員の報告に大森はおどけたように言った。

距離にして重巡まではおよそ一萬五千メートルほど。若干遠い気もするが水雷戦隊は最大船速の三〇ノットは出しているからあっという間に近づいていく。

最初は遠くに著弾していた敵弾が著実に近づいてくるのが分かる。

「司令、このままでは戦艦に到達する前に落伍艦が出ます! 一旦、重巡部隊に雷撃を行ってから再裝填を行い、戦艦郡に雷撃を行うのは如何でしょう?」

「いや、突撃は続ける」

「分かりました。砲長、目標は狙いやすい艦で構わん。撃て!」

「了解、目標敵重巡一番艦! 撃ち方始め!」

阿武隈の一四センチ単裝砲が火を噴く。戦艦に比べれば遙かに小さい砲ではあるが、水雷戦隊を守る立派な役目がある。大森等にとってはある意味戦艦の主砲よりも頼りがいのある砲であった。

しかし、敵の重巡が持つ二〇センチ砲と比べると威力不足が目立つ。

それらが立てる水柱は遙かに大きく、著実に第一水雷戦隊を絡め取ろうとする。

また、距離がまったことも相って敵艦の副砲が打ち始める。これらは威力こそそれほどないものの數と弾數は多く、二〇センチ砲弾が一発降り注ぐ間にこれらは八発ほどのペースで降り注ぐ。

これらは威力は高いが當たりづらい、二〇センチ砲弾よりも遙かに恐ろしい存在である。

何せ水雷戦隊は魚雷発管という危険なものを背負っている。萬が一にもこれらにをすれば彼らは一巻の終わりだ。故に當たりやすい小口徑の砲の方が遙かに恐ろしい。

突撃していた水雷戦隊についに被害が出始める。

駆逐隊の先頭を航行していた雷に敵の副砲が命中。出た炎を目標にあっという間に狙い撃ちされ、だらけにされていった。奇跡的に発管こそ無事ではあったものの雷撃が不可能であることは誰の目にも明らかであった。

次に狙われたのは殿を務めていた若葉だ。

は運悪く敵の二〇センチ砲弾の直撃を喰らい、文字通り吹き飛んでしまった。

大森はこの被害を見つつも突撃を続け、ついに米重巡の包囲網を突破することに功した。

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