《Umbrella》2杯目
「コーヒー、冷めちゃったね」
さくらんぼさんが立ち上がってカウンターへ
向かう。
遠くの方でエマさんの鼻歌が聞こえた。
あたたかいコーヒーを注ぎながら、
さくらんぼさんは低い聲で言った。
「雫ちゃんは、えらいなあ」
おもいがけない言葉にはっとする。
さくらんぼさんが続けた。
「雫ちゃんは、頑張ったなあ」
心臓がぎゅっと痛くなった。
こんなこと誰かに話したのは初めてだ。
いじめのことも、泣けない魔法のことも、
けないのはいつだって私で、
周りのせいにしたくないのに、
私が悪いから。
だけどさくらんぼさんは
私を偉いと言った。頑張ったと言った。
彼の落ちついた聲が、話を促して、
私の思いはこぼれていく。
私はコーヒーをひとくち飲んで、
話を続けた。
【書籍化】捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜國の王太子からの溺愛が待っていました
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